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smart2026年8月・9月合併号(通常号)

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連載真説 星野仙一 ~誰も知らない“鉄拳制裁”の裏側~

「ゲッツーばかり打つバカがおるか!」怒鳴った直後、星野仙一が赤星憲広にかけた”意外な一言”【インタビュー前編】

執筆者: ノンフィクションライター/長谷川 晶一

星野仙一が監督として阪神を18年ぶりの優勝に導いた試合でサヨナラヒットを放つなど、星野政権下で圧倒的なインパクトをもたらした赤星憲広

野村時代と星野時代、今岡の変化

1990年代から続く暗黒時代。吉田義男、そして野村克也が率いたタイガースは、4年連続でセ・リーグの最下位に沈んでいた。01年、即戦力として期待されて入団した赤星は、すぐにチームを包む澱んだ空気を肌で感じていた。球場のスタンドからは、「赤星、お前だけはこのチームに染まらないでくれよ」と、ファンからの声援を受けていたが、それは彼自身が痛切に感じていたことでもあった。

「こんなことを言うと、その当時いた先輩方に失礼ですけど、当時は、“そりゃ、勝てねぇよな、こんなチームじゃ……”という雰囲気でした。それは春のキャンプの段階からそうでした。“プロの世界って、この程度の練習量なの?”と感じると同時に、“これなら、普通にやっていれば大丈夫だな”と思えるぐらいでしたから」

全体練習が終われば、他球団ならば若手は順番待ちを余儀なくされるはずなのに、先輩たちは一目散に宿舎に戻っていくため、打撃マシンはすぐに空いた。シーズンが始まってからも、試合中盤で2点を追う展開、まだ反撃のチャンスは十分にあるはずなのに、先輩たちの口から出たのは、「ああ、もう今日はきついな……」という諦めの言葉ばかりだった。

「僕からしたら、“まだまだあと4回も攻撃を残しているじゃないですか、わずか2点じゃないですか”という思いですよ。この頃は、“このチームに染まってしまったら、自分の野球人生は終わってしまうぞ”という思いだったので、ファンの方の言うように、“この雰囲気に染まらないようにしよう”とずっと考えていました」

こうした澱みを一瞬で吹き飛ばしたのが星野だった。指揮官はチームの体質を厳しく見極め、戦う集団へと選手たちの意識を改革していく。その最大の象徴が、天才打者・今岡誠(現・真訪)の「大変化」であった。東都大学リーグ時代には、大学は違えど、2学年先輩である今岡を尊敬していた赤星にとって、「憧れでしかなかったすごい選手」である。しかし、野村体制下の今岡は完全にヤル気を失っており、赤星の目には「いちばんヤル気のない人」と映り、失望すら覚えていた。しかし、本連載においてすでに述べたように、星野はわずか1年で、今岡の眠っていた才能を完全に呼び覚ましたのである。

「あの今岡さんの本来の輝きを、わずか1年でそれ以上に取り戻させたのが星野さんでした。その姿を間近で見ていたので、ますます星野さんを尊敬するようになったし、僕自身も“星野さんの下でなら……”と、ヤル気が出てきました」

この記事を書いた人

1970年生まれ。早稲田大学卒業後に出版社へ入社し、女子高生雑誌『Cawaii!』などのファッション誌の編集に携わる。2003年からフリーに。ノンフィクションライターとして活動しながら、プロ野球12 球団すべてのファンクラブに入会する「12 球団ファンクラブ評論家®」としての顔も持つ。熱狂的な東京ヤクルトスワローズファンとしても知られ、神宮球場でのホームゲームには全試合駆けつける。単行本が7刷となり文庫化もされている『詰むや、詰まざるや 森・西武 vs 野村・ヤクルトの2年間』(単行本:インプレス、文庫:双葉社)をはじめ、ヤクルト関連の著書・連載多数。スポーツ総合雑誌『Sports Graphic Number』(文藝春秋)にも定期的に寄稿中。日本文藝家協会会員。

X:@HasegawSh

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