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連載真説 星野仙一 ~誰も知らない“鉄拳制裁”の裏側~

【日本一失敗を語れる男】GG佐藤の唯一の後悔は落球したことではなかった…星野監督の「不器用な愛」を裏切った決戦前の準備不足

執筆者: ノンフィクションライター/長谷川 晶一

真説 星野仙一 ~誰も知らない“鉄拳制裁”の裏側~

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 現役時代には「燃える男」と称され、監督時代には「闘将」と呼ばれた星野仙一が天に召されてすでに8年が経過した。昭和、平成を代表する野球人である一方、優しさと厳しさ、飴と鞭を巧みに使い分けた人心掌握術は、現在の観点から見れば、行きすぎた「根性野球」「精神野球」といった側面がクローズアップされたり、選手たちへの鉄拳制裁が問題視されたりすることもある。

 一体、星野仙一とはどんな人物だったのか? 彼が球界に遺したものとは何だったのか? 彼の実像を探るべく、生前の彼をよく知る者たちを訪ね歩くことにした。彼らの口から語られる「星野像」は、パブリックイメージ通りである一方で、それとは異なる意外な一面もあった。「星野仙一」のリアルに迫りたい——。連載第9回は、星野が日本代表監督を務めた2008年北京五輪の際に主力として共に戦ったGG佐藤に話を聞いた。【GG佐藤インタビュー全2回の2回目/第1回を読む】

【衝撃の告白】GG佐藤が明かす北京五輪の裏側…“張り切った代償”ゆえ「実は痛み止めで頭がフラフラだった」

星野が監督を務めた2008年北京五輪の際に主力として共に戦ったGG佐藤

まさかの連日のスタメン起用

 2008(平成20)年、北京五輪、野球日本代表——。準決勝では2つのエラーをしてしまった。これにより、日本代表の金メダル獲得は潰(つい)えた。星野仙一が掲げていた、「金メダル以外はいらない」という言葉が空しく響く。エラーの当事者で、「戦犯」と称されたGG佐藤は憔悴(しょうすい)していた。自分のせいで日本代表は敗れてしまった。自分のせいで金メダルを獲得することはできなかった。頭が真っ白になり、何も手につかないまま迎えた翌日の3位決定戦。「自分がスタメンから外されることは確実だ」と、GGは考えていたという。

星野が監督を務めた2008年北京五輪の際に主力として共に戦ったGG佐藤

「常識で考えたら、あんなエラーをした人間を翌日に使うわけがない。そう勝手に決めつけてしまって何の準備もせず、ベンチで応援するつもりでいました。当日、食事会場に貼られたスタメン表を見て驚きました。そこに自分の名前があったんです。“えっ、嘘だろ? 昨日のスタメン表を剝がし忘れているんじゃないのか?”と本気で疑いました」

 銅メダルをかけた3位決定戦、そこには「レフト・GG佐藤」の文字があった。まったくの想定外の出来事だった。しかしこのとき、「星野監督は絶対に翌日もスタメン起用する」と確信していた男がいる。かつて、星野とともに阪神タイガースで戦った藤川球児である。

「僕はまったく覚えていないんですけど、準決勝で敗れた直後に藤川くんが僕のところに来て、“星野監督は明日絶対にGGさんのことを使うよ”って言ってくれたそうです。その後、何年も経ってからそのことを聞いたんだけど、僕にはまったくその記憶がない。でも、あのときは耳を閉じていたから、人の言葉が耳に入らなかったんです。完全スルー。彼の言葉は、まったく耳に届いていなかった」

【日本一失敗を語れる男】GG佐藤の唯一の後悔は落球したことではなかった…星野監督の「不器用な愛」を裏切った決戦前の準備不足

 藤川の言葉を受け入れる余裕もないまま、慌てて気持ちを入れ替えてグラウンドへ向かう。「今日こそ、昨日の借りを返してやる」と、自らを奮い立たせた。前日の「消極的な自分」を反省し、徹底的に前向きに、積極的にプレーすることを心に誓った。それこそが、前日の失態を取り返す、唯一の方法だと考えたからだった。しかし、その強がりは、再び裏目に出た。

「逆スイッチが入っちゃったんです。前日は消極的な気持ちのせいでミスをしてしまった。ならば、“今日は積極的にいこう”と考えました。だから、試合が始まってからも、“ボールよ来い、オレのところに飛んで来い!”という気持ちでした」

 そして迎えた3回、本人の願い通り、ショート後方、レフト前方に、フラフラっと小飛球が飛んできた。ショートの中島裕之(現・宏之)が猛然と追いかけてくる。

星野が監督を務めた2008年北京五輪の際に主力として共に戦ったGG佐藤

「先に中島が声を出していました。彼なら捕れたと思います。でも、後ろから僕が、“オレが捕る!”と声をかけました。両方が“オレが捕る”と言ったときには、後ろの選手が優先ですから、邪魔にならないように中島がどくのは当然のこと。冷静に考えれば、僕が捕りにいかないほうがよかった。中島に任せるべきでした。まさに、“昨日の弱気なままの自分でいろよ!”という後悔……。完全に裏目に出ました」

 こうして、GGは再び致命的なエラーを犯してしまう。彼のエラーによって、アメリカに逆転を許し、星野ジャパンはメダルを逃した。星野は目も合わせてくれなかった。ひと言も会話を交わすことなく、星野ジャパンは解団した。世間だけでなく、本人も自覚していた。日本が敗れたのは間違いなく「GGのせい」だった——。

星野が監督を務めた2008年北京五輪の際に主力として共に戦ったGG佐藤

この記事を書いた人

1970年生まれ。早稲田大学卒業後に出版社へ入社し、女子高生雑誌『Cawaii!』などのファッション誌の編集に携わる。2003年からフリーに。ノンフィクションライターとして活動しながら、プロ野球12 球団すべてのファンクラブに入会する「12 球団ファンクラブ評論家®」としての顔も持つ。熱狂的な東京ヤクルトスワローズファンとしても知られ、神宮球場でのホームゲームには全試合駆けつける。単行本が7刷となり文庫化もされている『詰むや、詰まざるや 森・西武 vs 野村・ヤクルトの2年間』(単行本:インプレス、文庫:双葉社)をはじめ、ヤクルト関連の著書・連載多数。スポーツ総合雑誌『Sports Graphic Number』(文藝春秋)にも定期的に寄稿中。日本文藝家協会会員。

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