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連載真説 星野仙一 ~誰も知らない“鉄拳制裁”の裏側~

【日本一失敗を語れる男】GG佐藤の唯一の後悔は落球したことではなかった…星野監督の「不器用な愛」を裏切った決戦前の準備不足

執筆者: ノンフィクションライター/長谷川 晶一

「準備不足は、人の思いを裏切る」

 帰国後は、「北京でのエラーは実力不足だから後悔していない」と公言してきた。しかし、本音を言えば、彼には「唯一の後悔」があるという。神妙な面持ちでGGは口を開いた。

星野が監督を務めた2008年北京五輪の際に主力として共に戦ったGG佐藤

「準決勝でエラーをした後、心のどこかで“自分はもう使われない”と勝手に決めつけてしまって、満足に準備をしなかった。その翌日、準備不足のままスタメンに起用された結果が、あのアメリカ戦でのエラーです。後になって、星野監督が“あいつの野球人生をダメにしたくない。もう一度輝かせたかったからチャンスを与えた”とおっしゃっていたと聞き、胸が締めつけられる思いでした」

 前述したように、藤川球児は準決勝終了直後に、「明日、絶対GGさんがスタメンだよ」と彼に伝えていたという。しかし、ショックで耳を閉ざしていたGGには、その言葉は届いていなかった。藤川は星野監督の「流儀」を理解していたが、関係性の薄いGGには、星野の温情を理解することはできなかったのだ。

「星野監督にとって、3位決定戦での起用は紛れもない《愛》でした。でも、当時の僕はその愛の深さに気づく余裕さえなかった。準備不足は、人の思いを裏切る。それを痛いほど学んだのが、このときの一件でした。だけど、本音を言えば、ひと言、“GG、明日も頼むぞ”と事前に言ってほしかった。そんな思いは、今でもあります……」

星野が監督を務めた2008年北京五輪の際に主力として共に戦ったGG佐藤

 失意の帰国後、GGは星野の事務所へ一通の手紙を送った。内容は、期待を裏切ったことへの謝罪だった。しかし、何も音沙汰はなかった。今もまだ怒っているのか? それとも、開封すらしていないのか?GGの心は千々に乱れていた。こうした事態に変化が訪れるのは、「北京の夏」の数年後、東京ヤクルトスワローズとのオープン戦でのことだった。試合前、北京五輪で主将を務めたスワローズの宮本慎也に声をかけられた。

「宮本さんがやってきて、“お前、星野監督に手紙を書いたらしいな”と言われました。そして、星野さんからの伝言を聞きました……」

 宮本が託したのは、「手紙は読んだ。お詫びなんかは必要ないから、今後の野球界発展のために、これからもGGらしく頑張りなさい」という星野からのメッセージだった。

この記事を書いた人

1970年生まれ。早稲田大学卒業後に出版社へ入社し、女子高生雑誌『Cawaii!』などのファッション誌の編集に携わる。2003年からフリーに。ノンフィクションライターとして活動しながら、プロ野球12 球団すべてのファンクラブに入会する「12 球団ファンクラブ評論家®」としての顔も持つ。熱狂的な東京ヤクルトスワローズファンとしても知られ、神宮球場でのホームゲームには全試合駆けつける。単行本が7刷となり文庫化もされている『詰むや、詰まざるや 森・西武 vs 野村・ヤクルトの2年間』(単行本:インプレス、文庫:双葉社)をはじめ、ヤクルト関連の著書・連載多数。スポーツ総合雑誌『Sports Graphic Number』(文藝春秋)にも定期的に寄稿中。日本文藝家協会会員。

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