「男はなぜ『刃牙』に憧れるのか?」 紗倉まな×鳥トマトが解き明かす、理解不能な“父性”と厄介な“母性”のトリセツオーバードーズする"整えたい欲"——推し活を駆動させる力
執筆者: 音楽家・記者/小池直也

「イクメン」や「理解のある彼」という言葉が遠くなっている。やはり男性が女性を真に理解するということは、空論に過ぎないのかもしれない。
紗倉まなの新著『あの子のかわり』は、立場の異なる主人公・由良、親友・有里奈、そして愛犬・ハリエットを通じて、「母性」が婚姻や出産、そして生殖能力からも切り離されうることを示唆する。
では「母性」とは何か。そして、それは性別を超えるものなのか――。
本作をめぐって紗倉まなと、東京に生きる男女の心の深層を描く漫画『東京最低最悪最高!』の作者であり小説家でもある鳥トマトが対談。
同年代のふたりが議論の末に浮かび上がらせたのは、推し活を駆動させる“おせっかい欲”の正体だった。
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男性は共感できない?

――『あの子のかわり』、素晴らしい作品でした。ただ登場する妊娠を巡る女性たちの分断からラストシーンに至るまで、物語の大筋においては男性の共感が難しい気もします。安易に「わかる」と言ったらウソになってしまうような。
紗倉まな(以下、紗倉):確かに男性は辛い立場に置かれやすいかもしれません。安易に「わかる」と言っても怒られるかもしれないし、「わからない」と言えば他人事・無責任と捉えられてしまいかねない。ただ主人公・由良の暴走しがちで完璧主義な思考は性別とは関係のないものなので、男性でも共感してくださる人はいるかもしれません
鳥トマト(以下、鳥):「俺ならもっと愛せるのに」って思いながら読む人もいるかもしれません。由良ちゃんの旦那くん、甲斐性が足りないよ(笑)。もちろん「甲斐性が足りない」という発言が許されないことも含め、時代性なんですけど。
――鳥さんは男性目線の漫画も書かれています。どう想像するのでしょう?
鳥:僕は老若男女、あらゆる人の悪口を聞くのが好きなんです。例えば、場末のスナックでおじいちゃんから「俺の若いときは家族全員を養って大変だったよ」みたいな話をされても、あまり共感できないじゃないですか。でも、その人と話自体は面白い。そういう感じで男性も読めるはず。
紗倉:わかります、共感がなければ面白くない、というものではないと私も思っています。ただ読み手としてはその作品の性別をなんとなく勝手に考えてしまうことはありますよね。鳥さんが描かれた『東京最低最悪最高!』では作者の方は男性なのかな、と感じたんですよ。読み進めると途中から、ここまで女性の社会や異性から与えられる抑圧や苦しみを理解しているから、女性の方かもしれないなとまた勝手に考えたり。
でも、いきすぎた女性蔑視の流れで女装を始める男性や、ミソジニーでDVするキャラも出てきたりもする。鳥さんは作者として両性の気持ちを持っているのかもしれないな、と。片方の性の価値観に収まらずに常に揺れ動いて書けるというのは、作品作りにおいて大事なことだなとも思いました。
鳥:そこはコンプレックスでもあります。紗倉さんの本を読むと、女性が書いている感じがすごくする。よくも悪くもかもしれませんが。でも普通にめちゃめちゃ才能だと思います。
この記事を書いた人
音楽家/記者。1987年生まれのゆとり第1世代、山梨出身。明治大学文学部卒で日本近代文学を専攻していた。自らもサックスプレイヤーであることから、音楽を中心としたカルチャー全般の取材に携わる。最も得意とするのはジャズやヒップホップ、R&Bなどのブラックミュージック。00年代のファッション雑誌を愛読していたこともあり、そこに掲載されうる内容の取材はほぼ対応可能です。
Website:https://smartmag.jp/
お問い合わせ:smartofficial@takarajimasha.co.jp
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