現代の村上隆と江戸時代の歌川広重が“出会う”展覧会をニューヨークで開催
執筆者: smart編集部
ニューヨークで開催中の〈Hiroshige’s 100 Famous Views of Edo(feat. Takashi Murakami)〉。江戸時代の絵師・歌川広重の浮世絵と村上隆の現代アートがコラボした、展覧会をレポートする。
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震災からの復興を祈願して生まれるアート作品
ニューヨークのブルックリン美術館で歌川広重の展覧会「名所江戸百景」が開催されている(2024年8月4日まで)。同美術館が所蔵している江戸時代の浮世絵師、歌川広重の作品118点を展示しているのだが、これらの作品は劣化を防ぐため普段は展示されていない。前回の公開が2000年なので、約四半世紀ぶりの公開となる。
「名所江戸百景」は江戸の四季折々の風景を描いた、広重晩年の連作浮世絵名所絵で、浮世絵の集大成といわれている。しかし残念ながら広重の存命中に作品は完成せず、二代広重の代で「一立斎広重 一世一代 江戸百景」として刊行された。
さて、今回話題になっているのはこれだけではない。村上隆が広重の浮世絵をモチーフとして描いた新作を含む121点の作品が一緒に展示されているのだ。このプロジェクトについて村上はこのように語っている。「この作品を通じて、広重が江戸の一刻も早い復活を願って描かれたということがわかって感動しました。社会貢献に対する真摯な気持ちがストレートに自分の中に入ってきて、自分自身でもやって(描いて)みることで自分の中にも何か違った化学変化が起きるのではないかと」。
広重が浮世絵を描いた時代背景には、1885年の安政江戸地震がある。マグニチュード7の大地震で江戸市中の死者数は1万人前後、建物の被害は全体の約80%という大災害、そしてこれ以外にも安政年間は日本各地で多くの大地震が発生した時代でもあった。人は人智を超えた事態に直面するとどうするか。日本では古いにしえからそのようなときには例えば仏像を作るなどしてきた。広重もまた浮世絵で当時の江戸の再建を祈願したのだ。翻って考えてみると現代の日本も同じような災害に襲われていて、東日本大震災から今年の能登半島地震まで、たびたび発生した天災により大きな被害が及んで、能登では今でも水道すら復旧していない地域も残されている。
今回のコラボに村上が参加した理由は、広重の浮世絵に重ね合わせ、同じように村上もまた今の日本の復興を願っているということだろう。そして「江戸百景」をベースとした村上の作品には、細部に村上のクリエイトしたキャラクターが描き込まれている。これについて村上は「芸術のための難しいテーマよりも親しみのあるテーマを自分なりに作ってみたらどうかと思い探すような仕掛けも作ってみた」とコメントしている。過去の名作とのフュージョンにカジュアルさをアレンジして誰でも楽しめる、というスーパーフラットな表現に村上アートの真骨頂を見た。
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Photogaphy_Thomas Barratt
Text_HISANORI NUKADA
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※この記事は2024年smart7月号に掲載した記事を再編集したもので、記載した情報もその時点のものです。
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