【星野仙一からのご祝儀に驚がく】「あの人がいなかったら今の自分はない」元楽天・銀次が語る“人生を変えてくれた男”との秘話
執筆者: ノンフィクションライター/長谷川 晶一

生涯忘れぬ「親父」の魂と愛
グラウンドを離れた場所でも、星野仙一という男の温かさと粋な計らいは、銀次の心に深く刻まれている。12年オフに銀次が結婚した際、星野から手渡された「分厚すぎるご祝儀袋」には、思わず唸るような趣向が凝らされていた。
「包みを開けたら、千円札が300枚と一万円札が3枚入っていたんです。当時の僕の背番号《33》に合わせた33万円でした。“星野さん、さすがだな”と思いましたね。あのときのご祝儀は使わず、今でも手つかずのまま自宅に大切に飾ってあります」
子どもが生まれた際には、星野が実際に着用していたユニフォームに、「大志を抱け」の言葉と子どもたちの名前を直筆でしたためてプレゼントしてくれたこともある。公私でのふれ合いを通じて、いつしか銀次は「あの人のようになりたい」という思いを募らせていく。しかし、その別れはあまりにも突然だった。
18年1月、星野はこの世を去った。その5年後となる23年限りで現役を退いた銀次は、引退会見の場に紫のネクタイを締めて臨んだ。かつて星野がイーグルス監督就任会見の際に着用していた、遺品の形見分けで譲り受けたものである。所有する車のナンバーも星野の背番号にちなんだ《77》を選び、今なおその教えとともに生きている。そして、オフになると毎年欠かさず星野の墓前に足を運び、静かに手を合わせている。
「星野さんがいなかったら今の自分は絶対にありません。プロでここまでやれることも、優勝することも、引退後にこうして働けることもなかった。僕の人生を根底から変えてくれた方です。だからこそ、星野さんから教わった愛情と闘争心を胸に、これからの人生も過ごしていきたいんです」
銀次が考える星野仙一とは?――“親父”

最後に「星野仙一という人物をひと言で表すとしたら?」と尋ねると、銀次は迷うことなく、即座にこう答えた。
「もちろん、『親父』ですね。偉そうだと思われるかもしれないけど、これしか思い浮かばないです。いろんなことを教わって、めちゃくちゃ怒られて、でもその何倍もの愛情で包み込んでくれた。僕にとっての星野さんは、まさに『親父』そのものでした。自分もいつか、星野さんのような男になりたいと思っています」
初優勝の歓喜の瞬間、泣きじゃくりながら指揮官の首にしがみついたあの日のぬくもりは、今も銀次の胸の中で温かく、そして熱く熱を帯び続けている——。
Profile/銀次(ぎんじ)
1988年2月24日生まれ、岩手県出身。盛岡中央高校から2005年高校生ドラフト3巡目で東北楽天ゴールデンイーグルスに入団。内野手へ転向後、星野仙一監督の下、12年にレギュラーへ定着すると、13年には打率.317をマークし、球団初のリーグ優勝と日本一に大きく貢献した。プロ通算1239安打、打率.290を記録し、巧みなバットコントロールで長年イーグルスのヒットメーカーとして活躍。23年限りで現役を引退し、現在はアンバサダーとして球団や東北の発展に尽力している。
Profile/星野仙一(ほしの・せんいち)
1947年1月22日生まれ、岡山県出身。倉敷商業高校、明治大学を経て、68年ドラフト1位で中日ドラゴンズに入団。気迫あふれるピッチングで、現役通算500試合に登板し、146勝121敗34セーブを記録。現役引退後はNHK解説者を経て、87~91年、96~2001年と二期にわたって古巣・ドラゴンズを率いる。02~03年は阪神タイガース、07~08年は日本代表、そして11~14年は東北楽天ゴールデンイーグルスで監督を務める。17年、野球殿堂入り。翌18年1月4日、70歳で天に召される。
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インタビュー&文=長谷川晶一
撮影=大村聡志
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この記事を書いた人
1970年生まれ。早稲田大学卒業後に出版社へ入社し、女子高生雑誌『Cawaii!』などのファッション誌の編集に携わる。2003年からフリーに。ノンフィクションライターとして活動しながら、プロ野球12 球団すべてのファンクラブに入会する「12 球団ファンクラブ評論家®」としての顔も持つ。熱狂的な東京ヤクルトスワローズファンとしても知られ、神宮球場でのホームゲームには全試合駆けつける。単行本が7刷となり文庫化もされている『詰むや、詰まざるや 森・西武 vs 野村・ヤクルトの2年間』(単行本:インプレス、文庫:双葉社)をはじめ、ヤクルト関連の著書・連載多数。スポーツ総合雑誌『Sports Graphic Number』(文藝春秋)にも定期的に寄稿中。日本文藝家協会会員。
お問い合わせ:smartofficial@takarajimasha.co.jp
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