• スマート公式facebook
  • スマート公式X
  • スマート公式Instagram
  • スマート公式Pinterest
  • スマート公式Youtube
  • スマート公式LINE

smart 最新号

smart2026年8月・9月合併号(通常号)

smart2026年8月・9月合併号(通常号)

2026年6月25日(木)発売
特別価格¥1,890(税込)

smart 最新号を見る

閉じる

連載真説 星野仙一 ~誰も知らない“鉄拳制裁”の裏側~

今岡真訪「星野さんは救世主だった」阪神優勝を支えた“闘将”との知られざる関係

執筆者: ノンフィクションライター/長谷川 晶一

星野が阪神監督に就任後にその才能を開花させ、主軸を担った今岡誠(現・真訪)

星野をひと言で言うと「救世主」

取材冒頭、今岡は星野のことを「防波堤」と称した。一歩間違えれば、プロの舞台から永遠に退場させられていたかもしれないという恐怖。そこから這い上がり、球界を代表するバッターへと上り詰めた2年間の狂騒。それらを振り返っているうちに、彼はまた別の言葉で星野を評する。

「星野さんをひと言で言うなら、《救世主》がふさわしいかもしれないですね。ドラフト1位で入団して、“もうそろそろ、ホンマにダメだぞ”という瀬戸際に立たされていた中で、星野さんが救世主として現れてくれた。あのタイミングじゃなかったら、僕はこの世界にいなかった……」

星野を評して、「飴と鞭の使い方が巧みな指揮官」と、しばしば言われる。頑張った選手にはプレゼントを贈り、あるいは監督賞の現金を包み、家族へのケアまで徹底する。そんな闘将の「太っ腹なエピソード」は枚挙にいとまがない。しかし、当の今岡自身は、あの2年間、そんな星野の人心掌握術や心理コントロールに、ただの「一選手」として転がされていたわけでは決してないのだという。

「よくみなさん、《飴と鞭》とか言いますけど、02年、03年のときの僕は、もうそんな次元じゃないんですよ。本当に自分が野球人生をもう一回やり直したい、頑張りたい、そして星野さんを胴上げしたい。ただそれだけ、それだけだったんです。04年以降になれば、僕もレギュラーとしての振る舞いになって、組織のいろんな心理も思惑も見えてくるようになりました。でも、あの2年間は、ただ己の生き残りと、あの人を勝たせることしか頭になかったんです」

そして今岡は、自身の左手首に視線を落とした。袖口から覗くのは、重厚でありながら、しかしどこか温かみを感じさせる腕時計だった。

星野が阪神監督に就任後にその才能を開花させ、主軸を担った今岡誠(現・真訪)

「星野監督からいろんなものをもらいましたよ。時計も2本いただきました。これは、03年にいただいたものです。普段、こういうジャケットを着るときなんかは、ずっとこれです。僕、こういう正装のときの時計って、これ以外持っていないんですよ」

ジャケットの袖から時を刻み続ける時計を見るたびに、今岡の胸には、背番号《77》に守られながら、自分自身で人生を切り拓いた「あの2年間」が鮮やかに蘇る。今岡の左手首の時計は、かつて闘将とともに命がけで駆け抜けた、あの熱き時代をたたえつつ、静かに、力強く時を刻んでいた——。

(今岡真訪編・終わり)

Profile/今岡真訪(いまおか・まこと)
1974年9月11日生まれ、兵庫県出身。PL学園高校から東洋大学を経て、1996年ドラフト1位で阪神タイガースに入団。卓越したバッティングセンスで頭角を現す。2002年に星野仙一監督が就任すると、翌03年には「一番・セカンド」として打率.340をマークし首位打者を獲得、18年ぶりのリーグ優勝に大きく貢献した。05年には打点王に輝くなど、勝負強い打撃で猛虎の一時代を築く。10年に千葉ロッテマリーンズへ移籍し、12年に現役引退。引退後は阪神やロッテで指導者を歴任し、現在は野球評論家として活躍している。

Profile/星野仙一(ほしの・せんいち)
1947年1月22日生まれ、岡山県出身。倉敷商業高校、明治大学を経て、68年ドラフト1位で中日ドラゴンズに入団。気迫あふれるピッチングで、現役通算500試合に登板し、146勝121敗34セーブを記録。現役引退後はNHK解説者を経て、87~91年、96~2001年と二期にわたって古巣・ドラゴンズを率いる。02~03年は阪神タイガース、07~08年は日本代表、そして11~14年は東北楽天ゴールデンイーグルスで監督を務める。17年、野球殿堂入り。翌18年1月4日、70歳で天に召される。

インタビュー&文=長谷川晶一
撮影=松本朋也

この記事の画像一覧

  • 星野が阪神監督に就任後にその才能を開花させ、主軸を担った今岡誠(現・真訪)
  • 星野が阪神監督に就任後にその才能を開花させ、主軸を担った今岡誠(現・真訪)
  • 星野が阪神監督に就任後にその才能を開花させ、主軸を担った今岡誠(現・真訪)
  • 星野が阪神監督に就任後にその才能を開花させ、主軸を担った今岡誠(現・真訪)
  • 星野が阪神監督に就任後にその才能を開花させ、主軸を担った今岡誠(現・真訪)
  • 星野が阪神監督に就任後にその才能を開花させ、主軸を担った今岡誠(現・真訪)

この記事の画像一覧を見る(6枚)

1234

この記事を書いた人

1970年生まれ。早稲田大学卒業後に出版社へ入社し、女子高生雑誌『Cawaii!』などのファッション誌の編集に携わる。2003年からフリーに。ノンフィクションライターとして活動しながら、プロ野球12 球団すべてのファンクラブに入会する「12 球団ファンクラブ評論家®」としての顔も持つ。熱狂的な東京ヤクルトスワローズファンとしても知られ、神宮球場でのホームゲームには全試合駆けつける。単行本が7刷となり文庫化もされている『詰むや、詰まざるや 森・西武 vs 野村・ヤクルトの2年間』(単行本:インプレス、文庫:双葉社)をはじめ、ヤクルト関連の著書・連載多数。スポーツ総合雑誌『Sports Graphic Number』(文藝春秋)にも定期的に寄稿中。日本文藝家協会会員。

X:@HasegawSh

執筆記事一覧

この記事をシェアする

この記事のタグ

27

10:01

smart Web の
記事をシェア!

この記事をシェアする

smart(スマート)スマート公式SNS