【納言・薄幸お悩み相談連載】「職場の同期や上司たちと気が合わない」人間関係に悩んだら、まずは何も考えずに飯に行け!
執筆者: お笑い芸人/薄 幸(納言)
歯に衣着せぬ物言いが魅力のお笑い芸人、納言・薄幸(すすき・みゆき)さんのお悩み相談連載がsmart Webにてスタート!
トム・ブラウンみちおが悩みを告白「仏像が怖い」「布川が厳しい」納言・薄幸にお悩み相談をしてみたら…
幸さんと言えば、お酒とたばこ。というわけで、スナックのママさんに扮した幸さんに、自らの体験を踏まえた上で、読者のリアルなお悩みに答える形でコラムを書いていただきます。連載タイトルは「お悩み相談処 スナックみゆき」。カウンター越しに語りかけてくれる幸さんのアドバイス、読み終わる頃には、きっとあなたの心もラクになるはず。
【今回のお悩み】
新卒で入社して働いている会社で悩みがあります。
それは、同期や上司たちと気が合わないことです。嫌いというわけではないんですが、あまりノリが合わないんです。
私以外の人たちはノリが合っているようで、友達のような雰囲気で和気藹々(わきあいあい)としています。仕事終わりにご飯に行くことも多いようですが、私は一緒にいると疲れてしまうのであまり行きたくなくて断ることが多いです。
人間関係の悩みは離職理由として多く挙げられると思いますが、やりたい仕事ができる会社に就職できたので、辞めたくはありません。
でも、正直自分以外の人たちがどんどん仲良くなっていく様子をずっと見ているのは、辛いです。
ノリが合わない人ともうまく話す方法など、アドバイスをもらえたら嬉しいです。
(20代/女性)
最初は気が合わないと思っていた“大学生バイト”と飲み会に行ってみたら……
23歳の頃。
当時私は定食屋とラーメン屋のバイトを掛け持ちしていた。
定食屋には、違う時間帯にもう一人バイトがいたらしいが、会ったことはなかった。
他の従業員は、“おじいさんに近いおじさん”と“完全なるおじいさん”だけで、私が一番年下。
なぜか二人とも「俺は店長ではない」と言い張っていて、店の形態が最後まで分からなかった。
おじいさんに近いおじさんは、今日の賄いが楽しみだという話をピークの時間帯でも永遠と話してくる、お喋りな明るい人。
その割にはいくらなんでも少食で、3回に2回は賄いを残していた。
そして完全なるおじいさんは無口で厳しい人だった。
でも、
「これで煙草買って来い。俺はラッキーストライク、みゆきはセッターで」
そう言って五千円を渡され、よく煙草のお遣いを頼まれた。
お遣い後にお釣りを渡そうとすると、
「いらねえ」
そう言ってお釣りを小遣いとして渡してくれる、温かい人だった。
毎回五千円を渡すのは、私にお釣りを多く渡すためだったのだろう。
不器用でぶっきらぼうで、とても優しいおじいさん。
「まあ、みゆきがセッターなのは、私がみゆき本人だから言われなくても分かってるけど」と毎回思っていたのはここだけの話。
良い夫婦のような二人に囲まれて、それはそれは働きやすかった。
その一方、ラーメン屋はバイトが8人ほどいて、全員大学生。
しかも、同じ大学の友達同士で埋め尽くされていた。
店長を除いたら、私が一番年上。
そしてバイト歴が一番浅いのも私。
それはそれは働きにくかった。
ラーメン屋のバイト中、ずっと定食屋でのバイトが恋しくて恋しくて。
中卒で17歳から芸人をやっている私からしたら、大学生なんて未知の生き物。
大学生のイメージといったら
“すぐ悪口を言う”
“とにかくチャラい”
“好きな四字熟語は『仲間意識』”
“すぐ悪口を言う”
そんな人種だと決めつけていた。
20歳そこらの子らと一緒に働くのは、歳の差はたかが1〜3歳だとしても、怖かった。
案の定、大学生何人かと一緒のシフトになると、私以外の子たちはキャッキャしていた。
気に触る発言と行動はしないようにしないと。
暗い人間だと思われないようにしないと。
面倒くさい年上だと思われないようにしないと。
いろいろと気を遣って働いていた。
嫌われるくらいなら、無害な存在でいたほうが楽。
なるべく大学生とは接しないように誰よりもギリギリに出勤して、誰よりも早く退勤する。
とにかく、必要最低限の接点しか持たないようにしていた。
そんなある日。
シフトの調整をするために作られていたバイトのグループLINEに、大学生の女の子から
“来週の○曜日飲み会しませんか?”
というメッセージが届いた。
その日時はラーメン屋の営業時間だったが、店長から
“自分が一人で働くからみんなで行っておいで”
という返信があった。
大学生たちだけとの飲み会。
行きたくなかった。
なぜならノリが合わないから。
でもその日はバイトの飲み会のために店長がお店を一人で回すのか……という罪悪感から、嘘をついて断るのも悪いなと思い、飲み会に参加することにした。
本当に嫌だった。
ノリが合わない若い子らと飲むなんて。
なんのメリットもない、気を遣うだけの人たち。
今後関係を断ち切ってもいい関係性の人たち。
ま、でも仕方ないか。
我慢して、ね。
そう自分に言い聞かせて参加した飲み会。
結果……
ちょーーーー楽しかった!!!!
“え!良いやつらじゃん!”
“すぐ悪口を言う”
これは合ってた。
笑えるほどに、態度の悪い客の悪口をいっぱい言ってた。
私も誰かに話したかった。
こんな話をしたかったんだなって、その時に初めて気づいた。
“とにかくチャラい”
これも合ってた。
テキーラをいっぱい飲んでた。
し、コールもしてた。
でも、私がテキーラを苦手なのを察した子が、上手に私に飲ませないようにしていた。
“好きな四字熟語は『仲間意識』”
これも合ってた。
最後に肩を組んで、たぶん私も仲間になったもん。
そして飲み会の最後。
新宿という立地でまあまあ忙しい店なのに時給が900円ということに、私が先陣を切って悪口を言っていた。
今まで、違う人種だと思って毛嫌いして、当たり障りなく接していた子たち。
もしかしたら世間には、そんなに嫌なやつはいないのかもと学んだ日だった。
今でも飲み会に行ったら、「なんとなく嫌いかも」という人が混ざっていたりする。
ノリが合わないと思った人がいる飲み会は、喜怒哀楽を全て殺して無で話すことがたまにある。
でも、無の状態で話していたのに、気づいたら心の底から笑ってたり、熱い話してたり。
ノリが合わないやつとも飯とかに行って話してみたら、知らない一面を知ることができて好きになっちゃうことも結構ある。
この人こういう考え方してるんだ、とか。
私がムカついてたあの人のこと、この人もムカついてたんだ、とか。
え、この人パクチー好きなんだ! 私も好き! 嫌いな人多くて困るよね、とか。
嫌いだと思っても、本当に嫌なやつってそうそういない。
人間って、第一印象や環境、周りの雰囲気、色んな要素で人を見ていて。
その上で“ノリが合わない”と判断しちゃう。
大人になり過ぎてしまったのかも。
何も考えずに飯に行って、しっかり話してみたら、意外と良いやつ!ってなることが結構多い。
他の人たちはみんな仲良くなってる現状が辛いと思っているのなら、ノリが合わないと思っている相手にも、少しだけ歩み寄っても良いかもね。
(第2回に続く)
着物 衣装クレジット
着物 参考商品/三松(三松お客様相談室 0120-033-330 https://www.mimatsu-kimono.jp)、イヤリング 、リング 参考商品/ともにアビステ(03-3401-7124、www.abiste.co.jp)
ドレス 衣装クレジット
スーツ 参考商品/Rew-you(https://www.ryuyu.net/)、イヤリング 、リング 参考商品/ともにアビステ(03-3401-7124、www.abiste.co.jp)
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文=薄幸(納言)
写真=TOWA
ヘアメイク=鷹部麻理
スタイリング=宮本愛子
協力=LUCKY
構成=佐々木 笑
この記事を書いた人
お笑い芸人。1993年生まれ、千葉県出身。安部紀克との男女コンビ【納言】のメンバー。 「三茶の女は返事が小せえな」「渋谷はもうバイオハザードみてえな街だな」など“街ディス”ネタが人気のコンビ。バラエティなどでは薄幸のヘビースモーカーっぷりや大酒飲みのやさぐれキャラクターにも注目が集まっている。芸名「薄幸」は2015年にBSフジ『等々力ベース』にてビートたけし氏が命名。 『有吉の壁』(日本テレビ系)、『ネタパレ』(フジテレビ系)、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)などに出演中。 コンビではネタ制作を担当しており、エッセイやコラムなど文章力にも定評があり、著書に『今宵も、夢追い酒場にて』(幻冬社)がある。また、漫画原作も執筆しており『メイク・ハニー・トラップ』が現在連載中。コンビでは【納言Official YouTube Channel】にて料理など新たな魅力も発信している。
Instagram:@nagon.miyuki
Website:https://www.ohtapro.co.jp/talent/nagon.html
お問い合わせ:smartofficial@takarajimasha.co.jp
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