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【局アナからeスポーツキャスターへ転身】平岩康佑が発する言葉の裏側にある“100時間プレイ”と“人ありき”の理由とは | 連載:eスポーツの輪〜e-sports donuts】

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ゲーム人口はプレイヤー数、視聴者数ともに年々うなぎのぼり。世界のeスポーツ上位10チーム(または組織)にいたっては、その価値評価額が平均で約450億円と、今後ますますの成長が期待されまくっている国際的市場、それがeスポーツの今の立ち位置です。しかしその中にまだ日本チームの名はなく、「これじゃあいかん!!」と(まぁほんとにそう言ったかは知りませんが)とにかく、好きなものに心底夢中になれる負けず嫌いな日本の“ヲタク”たちのなかには、業界の盛り上げ役がちゃんといます。

というわけでsmart webでは、eスポーツ業界のフロントマンや業界の活性化を担う存在にインタビューを行う連載『eスポーツの輪〜e-sports donuts』をスタート。eスポーツの次代の担い手に話を聞き、テレフォンショッキング方式で輪をつないでもらうことでその実態に触れていくことを目的とします。ゲームをやらない人も、読めばきっと興味を持てるはず。第二回目は元朝日放送アナウンサーの経歴を持つeスポーツキャスター、平岩康佑さんの登場です!

eスポーツの熱量を体感し、
即座に局アナ退職を決意

――まず、eスポーツキャスターとしての仕事内容はどういったものか教えていただけますか?

平岩康佑(以下、平岩) 主に幕張メッセや東京ビックサイトなどで行われるような大規模な大会でのゲーム実況があります。ニュースにもなっていましたが、今年さいたまスーパーアリーナで行われた大会に、eスポーツの国内大会史上最高の動員数である約2万6千人が集まったんです。そのことから今のeスポーツの注目度の高さを知ることができると思います。あとは実況者として海外にも赴(おもむ)きます。今年の7月と8月にロンドン、アメリカで世界大会が開催されたので、現地の大会の様子を日本語で実況しました。

――朝日放送(ABC)を退職し、eスポーツキャスターになるきっかけには何があったのでしょうか?

平岩 「これからゲーム業界が盛り上がりそうだ」ということを2017年頃から耳にするようになり、その界隈(かいわい)の方々から話を聞く機会が何度かありました。それからしばらく経ち、2018年の2月に韓国で開催されたeスポーツの大会を現地まで観に行ったんです。そのときに自分の中で「これは絶対にくる!」と確信しました。

会場となっていたスタジアムで声を出してプレイヤーを応援している人たちは、夜にクラブへ行って踊ったり、野球場で騒いだりするようなタイプには見えないゲーマーでした。でもそんな彼らが活き活きとしているのを目の当たりにし、この業界は潜在的にものすごい市場が眠っているんじゃないかと思ったんです。現地の熱量を浴びまくった僕は韓国から帰国した翌日、会社に辞表を提出しました。自分の進むべき道はこれだと思ってしまったんですよね(笑)。僕自身、小さい頃からゲームが好きでずっとプレイしてきて、それこそ時間があるときは1日中やっているようなゲーマーのままなんです。

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今夏アメリカで行われたAPEX世界大会時の写真。現地では有名キャスターのJon Kefaloukos(Falloutt)とも共演。解説はフェンネルのあれるさん。

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平岩さんのご自宅に設置されたゲームスペース。

――行動力がすごい……(笑)。平岩さんがeスポーツキャスターになる以前からゲーム実況者は存在していましたよね?

平岩 はい。ですが、既存の実況者は元々ゲームのプレイヤーだった方々が大半を占めていました。あとはYoutuberとしての実況者たちもいますが、彼らの多くはゲームのプロであって、喋りのプロではないんです。アナウンサーを辞めて実況者になったのは僕が最初で、喋りのプロとしてできることがあると感じましたし、eスポーツの大会を観ていても「このタイミングなら自分はこう伝える」という目線でいました。とにかく、数万人という観客がいる会場に適したゲーム実況を自分でやりたいという気持ちが強くありました。

――2018年の独立時期と現在とで、業界にどのような変化を感じますか?

平岩 僕が独立した2018年というのは“eスポーツ元年”と呼ばれている年でもあります。その理由は2017年と比較してeスポーツの市場規模が13倍近く一気に広がりました。そもそもゲーム業界というのは一般的にマイナーの領域に属する存在だったんです。大会も各ゲーム会社からリリースされるゲームタイトルだけで通じるような狭い世界だったので、あえてeスポーツと名乗る必要もありませんでした。

2018年を境に、ニュースやテレビ番組などで「eスポーツ」というワードが一気に増えたことでゲーム業界の環境は大きく変わったと感じています。ゲームの大会に出場することや、大勢の人と一緒に大会を観ることが一般化されはじめて、プロリーグが誕生し、週末には5、6つほどの大会が開催されるのが当たり前のようになりました。小学生から大人まで本当に多くに人が観てくれているメジャーな存在がeスポーツであり、今なお拡大し続けている市場になります。

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国内最大級のeスポーツ大会「RAGE」で実況中の平岩さん。

――まさに時代に沿うかたちで独立を果たせたわけですね。その流れの中で自らの会社「オデッセイ(ODYSSEY)」を設立。平岩さん以外にも実況を行う人物が所属されていますね。

平岩 会社には現在、僕を含めて5名の男性キャスターが所属しています。それ以外にも、会社のHPには出していませんが業務提携している女性キャスターが数名います。あとはゲーム関連の仕事をやってみたいということで、フリーランスの方や、タレント活動をメインにしている方たちと所属先のマネジメント会社を通して一緒に仕事をするケースもあります。光栄なことに男性キャスターだけで年間およそ600回の出演を請け負っているという状況です。キャスターのマネジメント業務以外に、自社で大会も主催しています。最近だと大会やチームにスポンサーをつけたりなど代理店的な役割も増えてきて、会社の売り上げの比重が大きくなっているところです。ただ、大会の開催に関しては収益よりもプロシーンの維持と業界の活性化を目的に行っています。

――所属キャスター以外で気になるeスポーツキャスターはいますか?

平岩 所属キャスター以外は……すみません、パッと名前が出てこないです。というのは、僕が気になった人はすぐに声をかけてうちに所属してもらっているんです。なので所属している者でもよければ、大和周平 。まだ24歳と若く、アナウンサー出身でもないんですが、東京の現役若手アナウンサーの誰よりも実況が圧倒的にうまいと僕は思います。大和は実況自体が好きという少し変わった子で。ルールを全く知らないゲームでも実況が聞きたいがために大会を観たりするくらい実況オタクですね(笑)。

――「実況のうまさ」とはどういった部分に感じるのしょうか?

平岩 人それぞれあると思いますが、僕の場合はフレーズ選びのセンスが大部分を占めていると思います。シチュエーションに合った一言が言えるかや、準備してきたであろう一言のセンスですね。言葉って、格好つけすぎると良くなくて。観ている側の空気感がわからないとものすごく恥ずかしいセリフになって浮いてしまうんです。個人的にですが、用意した言葉ほど大袈裟(おおげさ)にせず、さらっと伝えたい。実況はけっこう性格が出るのかもしれません(笑)。これらを踏まえて、僕の場合は普通の言葉の羅列なのにめちゃくちゃアツい一言だったりすると「うまい」と感じることが多いですね。

大先輩なので名前を出すのも恐れ多いですが、例えば古舘伊知郎さんの実況。ワードセンスに驚かされるというか、主観のようで実はそうじゃない一言を持ってきているので、シチュエーションにとてもマッチしていて勉強になります。古舘さんはアントニオ猪木さんの引退試合で「闘魂のかけらを携えて、今度は我々が旅に出る番だ」というフレーズを残しています。この闘魂の“かけら”というのがすごく良くて。全く格好つけていないのに、すごく残る言葉だと感じました。

――プロとアマチュアの実況者の違いは感じますか?

平岩 プロのライセンスが存在しているわけでもないので、そこに明確な線引きはありません。ですが、プロフェッショナルの意識として大事にしているのは、自分が入り込みすぎないことです。白熱した試合で観客のボルテージも最高潮の中、実況者も興奮のあまり席から立ち上がってしまうこともあります。僕もゲーム好きのひとりとして思いっきりその場の雰囲気を楽しみたい気持ちは間違いなくありますが、そんなときこそ冷静になって実況者として言葉で伝えることを諦めない、というのがプロとして大事な要素なのではないかと感じます。そこでひねり出される一言がなければ、実況は誰がやっても同じようなものになってしまうので。僕たちはインフルエンサーではなく実況のクオリティーで呼んでもらえているので、そこはしっかりとやっていかなければいけない点と捉えています。

――実況を請け負う際、ゲームや各選手について調べたりと、インプットしなければならない情報が膨大だと感じたのですが、やはり準備は苦労する部分ですか?

平岩 その通りです。実況者の一番大変な仕事は事前準備だと思います。選手に直接話を聞いたり、自分たちで大会を観てリサーチするため時間もかかりますし、そもそも実況するゲームに対する理解度が高くなければいけないんです。これはeスポーツの面白いところでもあり、実況する上で大変なところでもありますが、観ている人たちのリテラシーが非常に高いことが特徴として挙げられます。プロ野球を球場で見ている人のうち、実際に競技している(もしくはしていた)人は6%未満だというデータがあります。94%以上が野球をやったことがない、もしくは今やっていない人という数字を表しているのですが、これに対してeスポーツは、観客の99%が実際にプレイしたことがある、またはプレイしている人なんです。自らプレイする時間を割いてリーグや大会を観るほど熱狂的な人たちに満足してもらうためには、僕たちも高い理解力が必須となります。

そのためうちの会社では、新規タイトルを実況する場合、まずそのゲームを100時間プレイすることからスタートしています。面白さやプロとアマチュアの差が出やすいポイントはどこかなど、実際にプレイしながら覚えていくんです。そこからゲームのキャラクターや技、特性以外に各選手へインタビューした内容などを付け加えた実況の資料を各自で制作して本番に臨みます。とはいえ、一生懸命準備した資料を見ていて目の前で起きていることを見逃すのが一番ダメなパターンです。特に動きが激しくなる最終幕は資料を見ている暇なんてありませんから、資料を確認するタイミングの見極めも必要です。大会中、対戦の組み合わせに見覚えを感じて資料を振り返ると、実は前回の世界大会決勝で当たっていたチーム同士だったりすることもあります。その場合、前回の勝ち負けはもちろんですが、ステージやメンバー、キャラが一緒など、準備した資料を元に実況で伝えていきます。そうすることで、もし前回負けたチームが勝てば「前回悔しい思いをした相手にリベンジを果たしました」とうまく締めくくることもできるので。

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人ありきの実況。
そして、僕だからできる実況。

――eスポーツ実況が担うべき役割についてお聞かせください。

平岩 選手がよりよく見える場所を作りたいといつも考えています。開発側を抜きにすれば、さまざまなことを切り捨ててゲームの一瞬一瞬にかけているのがプロ選手。彼らのプレイが、観ている人にとって価値のあるものになるようにするのが実況の役割だと思います。また、今のeスポーツの環境は、トッププロと呼ばれる一部のみが大金を手にすることができて、そのほかはまだ満足するに至りません。進学や就職を天秤(てんびん)にかけてプロの道を諦める人も多いので、報われてほしいという気持ちもあります。個人的には、高校野球に似た感覚を覚えます。感動させるプレーをたくさんの人の前で見せてくれる。それがたとえファインプレーでもミスであっても、常に全力で。それを言葉で伝えたいんですよね。ですが、実況者である自分たちの名前が前に立ってしまうのはあまり好ましく思いません。eスポーツはまだ創成期でもあることから「平岩さんや大和さんの実況が好きです」とコメントをいただくこともあります。とても嬉しいことですが、あくまでも主役は選手。僕はそう考えています。

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本田圭佑

本田圭佑

インタビュアー/ライター/編集者

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