「バディカ中野優作のクルマ愛は“だれかのため”にある」中古車カスタム、洗車場、自動車メーカー…クルマにまつわる胸躍る未来図を語るスタイリスト服部昌孝のマシン沼。VOL.9「服部昌孝とBUDDICA中野優作とマシン沼。」
クルマ屋が作る、本気の“カスタム”ゲレンデ
服部 ところで、今日乗ってきているゲレンデは石川(※)さんと作ったやつですよね。たしか販売目的で作ったんじゃ?
※石川涼。ファッションブランド「バンキッシュ(VANQUISH)」や「エフアールツー(#FR2)」の創設者。バディカのクリエイティブにも参画している。
中野 そうだったんですが、やっぱり自分で乗ろうかなと……(笑)。というのは、僕は若い頃、バンキッシュの服を着ている時期があったんです。その当時、雑誌に載っていた石川さんを見て、大人だけどどこかやんちゃな男性像に憧れを覚えました。そんな人と何か一緒にできるまで会社が成長できたことが嬉しいし、その背景があるから完成したクルマの存在が愛おしくて。
服部 念願のコラボだったんですね。かなり反響があったんじゃないですか?
中野 この一台を作ったことで、会社に注目してくれる方や問い合わせをくれる方が一気に増えました。作ってみてわかったんですが、ゲレンデって四角くてシンプルなフォルムをしているのでカスタムしやすいんです。今回の経験を生かしつつ、他の中古車でもできることを模索して、何かしらの形でビジネス展開したいと思っています。
服部 そういえばさっき、自分ファーストのクルマ選びをしないと言っていましたけど、俺から見た中野さんはまさに「人のために動く経営者」のお手本で、そこに惹きつけられたんだと思います。自分も会社をはじめるなかで「人のために動く」ことへの意識が強くなりました。
中野 そう言ってもらえて嬉しいですね。服部さんはどんなきっかけで会社を設立したんですか?
服部 ファッション業界に限ったことではないと思うんですけど、中間マージンを抜かれてクリエイターがまっとうな報酬を得られないっていうのに納得がいかなくて。それなら企業やブランドとクリエイターのパイプ役を自分で担えるようになろうと思ったんです。あとはスタイリストで制作会社、ロケバス会社、劇用車の貸し出しをやる人はいないんじゃないかとも考えたし、そろそろ法人化しなきゃいけないっていうタイミングでもあったので、これを機にって感じでした。
中野 素晴らしい考えだと思います。僕も、自分がやらなかったら誰もやらなそうなことにすごく魅力を感じますし、そこにビジネスチャンスがあると思うタイプなので。
服部 中野さんは、自身の経験から知り得た業界の良い面も悪い面も隠さずに外に出していますよね。俺も自分1人の力ではやれることが限られているけど、できるだけ前に出ていろんなことをオープンにしていこうと思っていて。そうしないと業界って良くならないから。あの騒動(当時、世間を騒がせていたビッグモーターについて中野さんがYouTubeで発言したこと)のときだって、中野さんのアクションで流れが変わったじゃないですか。
中野 そうですね。結果的には自分たちにとって追い風になりました。あのとき、僕はYouTubeを通じて長年勤めてきたビッグモーターに対して「こんなことをしていたら会社が潰れてしまうからもっとしっかりしてくれ」と、かつての身内としての気持ちを伝えたつもりでした。それがあまりうまく伝わらず、VS構造の図を描かれてしまうこともありましたが……(笑)。たぶん服部さんもそうだと思いますが、僕には「自分はどうなってもいい」というのが判断の土台にあって。あれだけの騒ぎを起こす以上、引退する覚悟がありましたし、会社の売却先や次の代表についても事前に話していました。
服部 責任を負う立場としての自覚ですね。本当にいろんなことを言われたと思います。今日初めてお会いしましたけど、俺は中野さんのような考えの人間を信頼してきました。
中野 ありがとうございます。僕も自分と同じような考えを持っている人間が好きだし、業界の甘い汁だけ吸おうとしている大人たちとはつるまないようにしています。まぁ実際のところ、僕がとっている行動は業界のブラックボックスを表に出しているだけで特別なことではないと思うんですけどね(笑)。最悪なのは、それを隠してもっと間違っていくことなので。
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