スチャダラパーBoseの“コンパクトカー愛”はハンパじゃない! 1台目の三菱・ミニカの話から、スズキ・ジムニーの話まで。
あいみょん、Awich、RADWIMPS、BiSHなどの人気アーティストや有名俳優のスタイリングを多数手掛け、ファッション業界ではその名を知らぬ者がいない男、服部昌孝。2022年1月某日、スタイリスト服部昌孝は36歳にして人生初の普通自動車運転免許を取得した。「え、今まで車を持ってなかったの?」「ていうか、30代に見えない!」なんて思った人、後者はさておき、はいその通り。スタイリストという職業は、都内を車でぐるぐると回り、洋服をリースしてなんぼみたいなイメージがあるでしょう。しかしこの服部昌孝という男は、苦難も多いアシスタント時代を“自力”(免許ないからチャリンコ)で乗り越え、独立後から押し寄せた仕事という数々の荒波をクレバーに(免許ないからタクシーやロケバス、アシスタントが運転するレンタカーで)ぶん回し……失礼。乗りこなしてきた側の人間なわけです。
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スタイリスト服部昌孝のマシン沼。VOL.3
服部昌孝とBoseとマシン沼。
あ、そうそう、言い忘れました。去年1月に若葉マークの仲間入りを果たした服部昌孝ですが、その後3月には普通自動二輪、5月には大型自動二輪、と続けざまに免許を取得。なんやかんや、諸々あって、現時点で車6台バイク3台のオーナーです。「人生初の趣味ができた」と子どものように車両と触れ合う服部氏(ミニカー集めじゃねぇのよ)、今後は車やバイクの話だけじゃなく別の乗り物にも発展していくかも? なんて、そのあたりの“沼具合”にも乞うご期待ってことで。
【服部昌孝の所有マシンリスト】
自動車
New・ダットサン・240Z(1971年式)
・マツダ・サバンナRX-7(1983年式)
・フォード・エクスプローラー(2011年式)
・スズキ・ジムニー(2022年式)
・ルノー・ルノー4(1973年式)
・トヨタ・マークⅡワゴン(1990年式)
バイク
・スズキ・GSX400インパルス タイプS(1996年式)
・スズキ・GSX750S3カタナ(1984年式)
・ホンダ・スーパーカブ C125(2022年式・タイ製)
服部昌孝(以下、服部) 初めまして。Boseさんに会って聞きたいことがあったんです。今フィアット・ウーノ(※)に乗られていると思うんですけど、普段使い用の車はどうしてますか?
※フィアット・ウーノ……Boseさんの愛車であるコンパクト・ハッチバック「フィアット・ウーノ(FIAT UNO)ターボ」。初代ウーノは1983年から95年にかけてイタリアで製造・生産された。
Bose その悩みわかるなぁ。実は僕も今まさに普段使い用の車に悩んでいる状況で。ウーノの他に、自分が企画から携わってトヨタ・プロボックスをベースにカスタムした「ユーロボックス」を所有してるんだけど、僕的には3台体制がベストなんだよね。
服部 プロボックスなら商用車のライトバンだし、足代わりには良さそうじゃないですか?
Bose うん。普段使いとしてはまったく問題ないよ。どれだけアクセル踏んでも壊れる心配はないし。ただオートマ車で基本は奥さんが乗ってるからさ。そうなると今はメインがウーノ1台だけっていうマジで良くない状態。
服部 そういうことですね。ウーノの調子はどうですか?
Bose 悪くないよ!だけどやっぱり旧車だし、いつ止まってもいいように左側を走るのがくせにはなってる。僕も聞きたいんだけど、この所有マシンの並びならジムニーは普段使いに入るんじゃない?
服部 そのつもりで買ったんですけど、自分のジムニーはマニュアル車なんですよね。だから実用的というよりは嗜好性が強めで。
Bose そっか。それにスタイリストさんだもんね。もっと荷物をたくさん積めるタイプのほうがいいか。あとさ、旧車が好きな人のなかに足代わりの車としてトヨタ・プリウスを選んでる人って意外と多くない?
服部 まさに同じことを思ってました。プリウス……なんか乗りたくねえなって。
Bose だよね。一時期、フィアット・ニューパンダを普段使い用にしようと思ってたんだけど、ちょっとトラブルが多そうだし、そうなるとウーノとたいして扱いが変わらないから意味ないなって思って。自分の中でちょうど良く折り合いがつく普段使い用の車って難しいよね。
服部 そうなんです。今のところ、ベンツのGクラスやランクル(トヨタ・ランドクルーザー)のオールペンとかは手を出さないようにしてます。
Bose ランクルならいいんじゃない?コンパクトカー推奨派の僕にはちょっと大きいけど。自分が鎌倉に住み出してから特に感じるのは、路地も多いしやっぱり小さい車のほうが楽だなって。Gクラスじゃ小回りが効かないし、かえって不便そう。
服部 鎌倉も都内に似たところがあるんですね。
Bose 都内の場合はカイエン隊(ポルシェ・カイエンに乗る人たち)がたくさんいるっていうね。
服部 (笑)。もういっそ左ハンドルのプリウスでも探そうかなって。まぁプリウスには変わりないんですけど。
Bose あ!たしかにそれなら面白いしアリかも(笑)。もはや自分の感性の問題なんじゃないかって思っちゃうんだけど、新しい車を見ても「これに乗りたい」ってなかなか思えなくて。やっぱり出てから2、30年くらい経った車がちょうど良いんだよな。
服部 そのちょうど良さ、わかる気がします。ダサいんすけどイイ感じというか。逆にEV車とかってどうですか?
Bose まったくと言っていいくらい興味ない(笑)。
服部 聞いといてなんですが、自分もです(笑)。
Bose 乗る意味をあまり感じないんだよね。極端な話だけど、僕はEV車やハイブリッド車のことをエコだとは思っていなくて。結局新しいものを作っているわけだから、なんかすごく矛盾している気がする。燃費のいい軽自動車に乗り換えたり、旧車を大事に乗ったほうがよっぽどいいと思うんだけど。
服部 俺はデロリアンがEVになるとか、そういうのだけには一応反応する派です。
Bose たしかにあるよね。でも、まだニュース的な要素が強いんじゃないかな。旧車にフォーカスすることでなんとなく理由つけてさ。だからどうしても乗らなければならない時代がくるまではいいかなって。それこそ服部くんの乗ってるジムニーも、出たときにいくか迷ったんだよ。
服部 ジムニーかなり調子良いですよ!
Bose 僕もジムニーに乗るなら絶対にマニュアル車を選ぶなぁ。
服部 そういえばまた新しいジムニーが出る噂もありますね。
Bose そう!本当かはわからないけど、ひとまず今はそれを楽しみにしてるところ。ジムニーはこれ(服部氏所有ジムニー)のひとつ前の形も好きだし、昔のにしても角ばった感じで可愛かった。普段使いにもう1台選ぶなら軽自動車でいいかなって。現行のモデルならスズキ・アルトワークスとか。マニュアル車もあるし。でも形がちょっと惜しいんだよなぁ……。
服部 厳しいですね(笑)。少し前に新しく出た三菱・デリカミニも気になってました。
Bose 見た見た!でも僕の場合、結局は90年代の少しスポーティーで普通に乗れる軽自動車のほうが気になっちゃうんだよね。100万円くらいを目安にして気軽に遊べる車を選ぶのが好きで。けど今は中古でもそれもなかなか難しくなってきてる。しょうがないことだけど、どれも少し割高に感じるというかさ。
服部 わかります。スバル・レックスやダイハツ・ミラターボとかもすごく良いんですけど、なにせ高いっす……。
Bose そうだよね。たぶん旧車の軽って良い状態をキープするのが難しいんだろうね。すぐに劣化して壊れちゃうからあんまり綺麗な車体も残ってなくて。ダイハツ・ミラジーノに三菱・ミニカダンガン……個人的に好きなデザインで、今見ても可愛いって思える車はたくさんあるんだけどな。
服部 Boseさんが最初に買ったのもたしか三菱・ミニカでしたよね?
Bose そう。一番安い中古車にしようと思って。それでも可愛い車がいいなと思ってたら、当時15万円でミニカがあったからそれに決めたんだよね。
服部 なんか、軽自動車だけでもこんなに話せることが多いのって楽しいですね。
Bose 軽自動車も決して安いものではないし、実際にたくさんの人が乗ってるわけだからね。実は軽って世界中の人が惹かれる要素を備えているなと思う。すごく小さいのにパワフルで使いやすいし、維持費の面でも負担が少ない。それに、ある時期はスピードを重視してみたり、ある時期はヨーロッパライクのデザインで仕上げてみたり。軽だからこそめちゃくちゃ尖ったことにも挑戦できたのかなって。
服部 軽への愛が超深いっす。ミニカのあとはどんな感じでしたか?
Bose 基本はコンパクトカーが中心だよ。ホンダ・シティ カブリオレ、フォルクスワーゲン・ゴルフ カブリオレ クラシックライン、アルファロメオ・アルファ147、いすゞ・117クーペ、フィアット・パンダ(初代)、ルノー・カングー、フィアット・パンダ(2代目)、ゴルフⅡ CLi、で今って感じ。
服部 全体的に選ぶ車のフォルム、ほぼ同じじゃないですか?(笑)
Bose はははっ(笑)。そうだね。昔っから角ばってるのが好きでしょうがないの。元々ジウジアーロ(※)がデザインした車が大好きだからさ。
※ジウジアーロ・・・ジョルジェット・ジウジアーロ。イタリアを代表する工業デザイナーの1人。直線的かつエッジの利いたデザインを特徴にしている。
服部 ジウジアーロがデザインした、いすゞ・ピアッツァもかっこいいですよね。
Bose 良いよねピアッツァ!イスズスポーツには行った?
服部 行って試乗もさせてもらいました!Boseさんは車選びで譲れないことやこだわりってありますか?
Bose ん~デザイン以外だとクーラーはギリギリ壊れてないのがいいな。古い車にいろいろと乗ってきたけど、日本の夏はクーラーがないとホント無理。
服部 俺の車、クーラーついてないの多いっす……。
Bose 僕だったら耐えられない(笑)。車が欲しくなるのってだいたい春先が多くてさ。その時期にクーラーなしの車を試乗して「アリかも」って思うんだけど、6月あたりから無理が出てくる。夏だけ我慢すればいいって話なんだけど、それでも6月から9月くらいまでは暑いじゃん。だからクーラーの有無は車選びのときのボーダーになってるかな。
服部 ウーノにはクーラーついてるんですか?
Bose あるよ。全然効かないけどね(笑)。しかもクーラーつけると車の速度が落ちるから「頑張って!」って応援しながら乗ってる。
服部 やっぱクーラーなしはキツイかぁ……。ただ、発売当時のノーマル仕様の車が好きなので、なるべく純正に近い状態で乗りたいなって思ってるんですよね。
Bose 僕もいっしょ。カタログに載ってるまんまみたいな車が好きだから、イジってもノーマルからちょい替えくらいかな。
服部 じゃあ、昔の車って後ろについてる企業エンブレムとか車体名もなんか良くないですか?
Bose わかるわかる。当時ってどの会社も今よりエンブレム小さかったりするよね。デカくなる傾向ってどうにも好きになれなくて。ファッションでもそうなんだけど、デカすぎるとすごく気になっちゃう。
服部 そうなんです!でもって、エンブレムがない車もまたなんか違うっていうか。
Bose そう!あの大きさだからいいんだよね。たぶん当時のデザインってこれがベストな大きさって判断がちゃんとあったんだと思う。だってさ、「ラルフ ローレン(Polo Ralph Lauren)」のロゴにしたってデカくなり過ぎちゃったら絶対バランスおかしいじゃん。
服部 ふはははっ!間違いないっす。
Bose ギャグだったらいいんだけどさ(笑)。現行車だと適正じゃない大きさがついてるときってあるからなんかダサいって感じちゃうんだよね。それもあって昔の車のほうが好きなのかも。
服部 いやーめっちゃ嬉しい!YouTubeとかいろいろ観てて、もしかしたらちょっと感覚近いかもなって勝手に思ってたので。
Bose なんでだろうね、世代?
服部 あ。こう見えて自分まだ30代で……(笑)。なんなら毎日『ポンキッキーズ』観てました。
Bose そうなんだ!?ごめんごめん(笑)。ありがとね。
服部 話を聞けば聞くほど、Boseさんって嗜好に一貫性がありますよね。昔の角ばったデザインのコンパクトカー好きっていう。
Bose 機能美というか、余計なものをつけていない感じが好きなんだと思う。あとは子供の頃に観ていたレースの影響もあるのかな。ランチア・デルタとかルノー・5ターボⅡとか、とにかくラリーカーが好きだった。なにも気にしなくていいなら今でも欲しいしね。
服部 当然のように、全部四角いですね(笑)。
Bose そうなっちゃうんだよ(笑)。一番欲しい車ってなるとやっぱりフォルクスワーゲン・ゴルフⅠ GTiかな。
服部 まさにジウジアーロによる代表的デザインですね。自分はまだBoseさんほどの明確な嗜好性ってないんですけど、そのうち定まってくるものですか?
Bose どうなんだろうね。でも今はそれで良いと思う。いけるうちにいろんな車に乗っといたほうが絶対良いし。そういえばジャルジャルの後藤(淳平)くんと仲良くさせてもらってるんだけど、彼はシトロエン・AMI8を買ったあと、さらにシトロエン・エグザンティアを買ってて。なかなか危ういチョイスしてるなって思った(笑)。僕は乗ったことがないんだけどmそれ見てたらちょっとシトロエンに興味が出てきて。AX、BXあたりには順番に乗ってみたい気もする。
服部 ブレない“カクカク”チョイスありがとうございます(笑)。
Bose これでもいろんな車に乗りたいと思って言ってるから(笑)。あと、実はバイクにも乗りたくて。(スチャダラパーの)アニと「夏に休みをとってバイクの免許取りに行かない?」って学生のときから延々と話してる。
服部 めっちゃ仲良いすね(笑)。バイクの免許は通い出せば意外とすぐなのでぜひ!たしかジウジアーロってバイクもデザインしてますよ。スズキ・RE-5っていうのとか。車ほど有名ではないし、ダサさスレスレなデザインなんですけど、個人的にはけっこう好きで。
Bose そうなんだ!ジウジアーロのテイストって当時の日本によっぽどウケが良かったのかも。あと服部くんが乗ってるカタナとか、カワサキ・ニンジャとかのデザインも本当にそそられるよね。ニューヨークのHIPHOPグループ「ラフ・ライダーズ(Ruff Ryders)」が日本のバイクに乗ってるのとかも見ててさ。裸でウィリーしたり、ジャックナイフしたり、やってることはとんでもなかったんだけど、国産車が逆輸入的にかっこよく見えてた。
服部 海外だと国産車の捉え方が違っていたりして面白いですよね。
Bose アメリカだとジムニーが「サムライ」で、スズキ・エスクードが「サイドキック」だっけ。呼び方も違うし、感覚的にも「小さいのに性能良くてかっこいい!」なんだと思う。それを向こうのB-BOYたちが乗るっていうのもまた良かったり。
服部 最後もやっぱりコンパクトカーの話でしたね(笑)。じゃあ、これからも国内に向けてコンパクトカーをどんどん布教活動していきましょう!今日はありがとうございました!
Profile/Bose
ぼーず●1969年生まれ。岡山県出身。Bose、ANI、SHINCOの3人による日本のHIPHOPグループ「スチャダラパー」のMC。1990年にアルバム『スチャダラ大作戦』でデビュー。94年にリリースした『今夜はブギーバック』が大きな話題となる。2020年にデビュー30周年を迎え、アルバム『シン・スチャダラ大作戦』を発売。イベントやフェスなどでライブパフォーマンスを行う一方、個人ではテレビやラジオ番組への出演も多く、幅広いジャンルで活動中。
Boseインスタグラム:@bose_sdp
スチャダラパー公式HP
Profile/服部昌孝
はっとり・まさたか●1985年、静岡県浜松市生まれ。2012年に独立。あいみょん、Awich、RADWIMPS、BiSHなどの人気アーティストや、有名俳優のスタイリングを多数手掛ける。2020年に制作プロダクション「株式会社服部プロ」を発足。雑誌ディレクションやテレビCM、ミュージックビデオ制作など、多岐に渡り活動を展開している。
服部昌孝インスタグラム:@masataka_hattori
服部のマシン愛インスタグラム:@hattori__motor_machine
企画・インタビュアー=服部昌孝
写真=宇佐美直人
構成・文=本田圭佑
編集=熊谷洋平
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