酒井若菜、芸歴30年の本音と25歳休業後に掴んだ“助演哲学”とはー13年ぶり写真集は「10~20年後に愛おしくなる作品」
執筆者: 音楽家・記者/小池直也
「100%の満足ではない」。酒井若菜はあまりに正直すぎる。デビュー30周年を記念した写真集『ぴこぴこ。』は、女優としての今を切り取った13年ぶりの一冊。しかし、グラビア時代を知るファンからは物足りないという声もある。実は同じ戸惑いを本人も抱えていた。
それを問うと、制作時の葛藤から、転換期となった25歳での休業と挫折までが一筋に語られていく。長いキャリアのどん底で見つけた「助演」の哲学。本音を貫く酒井若菜の原点はそこにあった。
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写真集の制作中に起きた「予期せぬこと」
――過去にはsmart本誌に出演されたことがあるそうですね。実は昨年「smart」は創刊30周年イヤーでした。
酒井若菜(以下、酒井):約25年ほど前に「smart」本誌で連載をしていた気がします。写真撮影とテーマについてのトークみたいな形式だったようですね。
――完成した写真集『ぴこぴこ。』を手に取ってみて、いかがですか?
酒井:これまでの写真集はサイズが大きくハードカバーのものが多かったんですけど、今回はサイズが小さいソフトカバーで、紙の素材もラフなものにしました。ほんの少しだけカルチャーの匂いがしそうな質感にできたなと思います。
――13年ぶりに写真集を制作しようと思った理由は?
酒井:シンプルに「撮影で海外に行きたかった」という理由です。13年前の写真集『 I LOVE YOU 』もそうでしたね。
深く考えるとやらない理由が増えるので、そうなる前に決めるのは大事なことでした。45歳になると不安要素も多いですし、だからこそノリと勢いが大事だったのかなと思います。
――不思議なタイトル『ぴこぴこ。』には、どんな意味があるのでしょう?
酒井:あと付けで、意味はまったくないです。メッセージ性を持たせたくなかったんですよ。だから擬音語みたいな名前がいいなと思いつきで付けました。
――本作は被写体としてだけじゃなく、制作にも関わることになったんですね。
酒井:当初は撮影が終わったら、タイトルも写真セレクトも全部お任せするつもりでした。でも、想定外の問題が立て続けに起こってしまって。
このままだと発売も危ぶまれるし、私の目線を入れないと成立しないぞと。そこで関わり始めた、というのが正直なところです。
――それがYouTube動画でお話されていた「予期せぬこと」ですか?
酒井:そうです。その問題たちをどうやって自分のなかで消化して、リリースするかがテーマでしたね。
やっぱり自分が愛せないものを売るわけにはいきませんから、できる限りの努力はしました。
――なかなか複雑な心境で制作された写真集だったのですね。
酒井:苦しかったです、とても。100%満足できる作品になったかと聞かれたら、「いいえ」と答えることになります。
私のファンの方々は感性が鋭いので、「大満足です」と言ったところで見抜かれます(笑)。ファンは私の正直なところに付いてきてくれている面もあるので。だから嘘をついても仕方がない。
――今はどんな心境で作品を捉えているのでしょう。
酒井:色々ありましたが、、発売を決断したことには当然理由があります。『ぴこぴこ。』は他の作品とちがって、経年変化で美しくなっていく、という逆向きの成長があるんじゃないかなと考えたんです。悔しさとか苛立ちとか恥とか、少し苦みの強い記憶が10~20年後に見返したときに甘味のある思い出になる。そんな風に愛おしくなる気がしました。
ソフトカバーにシワができたり、日焼けして白い背が黄色くなるのもまた味わいがあるじゃないですか。読者の本棚で10年、20年育つ作品になってほしいです。
この記事を書いた人
音楽家/記者。1987年生まれのゆとり第1世代、山梨出身。明治大学文学部卒で日本近代文学を専攻していた。自らもサックスプレイヤーであることから、音楽を中心としたカルチャー全般の取材に携わる。最も得意とするのはジャズやヒップホップ、R&Bなどのブラックミュージック。00年代のファッション雑誌を愛読していたこともあり、そこに掲載されうる内容の取材はほぼ対応可能です。
Website:https://smartmag.jp/
お問い合わせ:smartofficial@takarajimasha.co.jp
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