「ワックス離れ」は本当か? 2億個売れたギャツビー「ムービングラバー」20年目の大リニューアル!“自然な細束感”を作る新作4種を徹底解剖
執筆者: 音楽家・記者/小池直也
なぜ男は髪型を言語化するのか?

ところで、「ムービングラバー」人気の裏に言語化のマジックが隠れていることも紹介したい。
SHIBUYA109 lab.所長の長田麻衣氏によれば、女性はコスメや美容に関する情報交換の量自体が圧倒的に多いのだという。そういう流れで「うさぎ舌リップ」「ワンホンメイク」といった新語が次々と生まれてくる。
一方の男性は女性と比較してシャイな傾向にあるそうだ。身だしなみについて誰かと語り合う機会自体が少ない。結果、言葉が育たず「メンズファッション」のような大きな主語で検索するしかなくなる、というのが長田氏の見立てだ。
ただし、不思議なことにヘアスタイルだけは事情が違う。「フェード」や「クロップ」、「フェザーパーマ」「シャドーパーマ」、「スペインカール」、古くは「リーゼント」、「ウルフ」、「ソフトモヒカン」など男性ヘアスタイルの語彙はかなり細かく名前が付いている。
その理由を「ムービングラバー」開発者は美容師によるSNS発信の影響力に求めた。男性は美容院で「こうしてください」と画像を見せる文化があり、美容師が投稿する具体的な用語がそのまま一般の語彙として定着していくのだという。
さらに2000年代のヘア専門誌『チョキチョキ』のようなメディアの存在も大きかった。つまり、美容師とライターの発信が男性のヘアスタイル用語を特別に具体化させてきた、というわけだ。
つまり男性同士のコミュニケーションは、服やファッション全般についてはクローズドだが、髪型に限っては美容師発信という外部チャンネルを介して、昔も今も語彙が多彩なのである。
実はそれが「ムービングラバー」の象徴であり、人気の理由でもあるラベルの存在にも直結している。シリーズを通して一番人気の「スパイキーエッジ」や「ワイルドシェイク」などのキャッチーな名前と説明。これらが揃ったラベルこそが、人気を不動にした重要なポイントだったのだ。
この記事を書いた人
音楽家/記者。1987年生まれのゆとり第1世代、山梨出身。明治大学文学部卒で日本近代文学を専攻していた。自らもサックスプレイヤーであることから、音楽を中心としたカルチャー全般の取材に携わる。最も得意とするのはジャズやヒップホップ、R&Bなどのブラックミュージック。00年代のファッション雑誌を愛読していたこともあり、そこに掲載されうる内容の取材はほぼ対応可能です。
Website:https://smartmag.jp/
お問い合わせ:smartofficial@takarajimasha.co.jp
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