モモコグミカンパニーがBiSHを通して得た哲学「自分をまっすぐに見てくれている人が多い環境が、その人にとっての“居場所”」
――先程、タイピングしながら出てきたフレーズというお話がありました。僕も仕事柄、文章を書く機会が多いですけど、タイピングしながら意図せず奇跡的に出てくるフレーズとか言葉ってありますよね。
モモコグミカンパニー:そうですね、小説を書いてるときはそれが一番楽しかったかもしれない。本当に行き当たりばったりで書いたっていうのもありますけど、「あ、こんな子が出てきたとか、こんなキャラクターが出てきた」っていうのも面白かったし。あまりがちがちに決め込まなかったからこそ、書く楽しさみたいなのはあったんですよね。
――そういった意味では、書きながら“奇跡の瞬間”は多かったですか?
モモコグミカンパニー:小説の書き方としたら悪いかもしれないんですけど、登場人物も全員を最初から決めていなくて、だからこそ「出てきた瞬間に出会えた」っていう感じがして、それが楽しかったです。
――すごいですね。“書きながら出会う”。そういう意味では、エッセイがいわゆる顕在化されている意識を文字にしたものだとすると、小説を書くっていう行為は、潜在意識が表れてくるものですかね?
モモコグミカンパニー:出てきた登場人物のセリフとかも、そういうことだと思うんですよね。元々自分の中にあったものだけど、ふとそれが言葉になって表れて出会えるもの。やっぱり小説は自分のものだとはあまり思っていなくて、もがいている女の子たちにも読んでもらいたいし、誰かを推している人とかにも、ぜひ読んでもらいたいなと思います。
――小説となって完成した時点で、自分のものではなくなっている、もう自分の手から離れたっていう感覚があるんですね。
モモコグミカンパニー:もう離れていますね。だから今は、読んだ人の感想を何でも聞きたいなっていうモードで。
――普段から、SNS上にあるファンの声は自分から集めに行くほうですか?
モモコグミカンパニー:エッセイを書いたときなんかは、いろんなレビューを見に行きましたね(笑)。
――それが小説となると、これまでの人生で一番エゴサーチをする日がもうすぐ来るかもしれませんね(笑)。
モモコグミカンパニー:それは怖いですけどね。この小説の初回特典で、本に付いている往復はがきに感想を書いて送ってもらって、それに私が返事を返すっていう取り組みをするんですよ。いただいたはがき全部に!(笑)
――モモコさんとの往復書簡。それはすごいですね。
モモコグミカンパニー:ファンレターもたくさんいただくんですけど、これまではそれにお返事を書くということはなかったので。だからこそ今回、私がやりたいって言ったんです。でも、どういう声が届くか少し怖さもあります。
この小説が誰かにとっての
お守りになればいいな
――今日の取材の衣装についても聞きたいです。普段のモモコさんの衣装からすると珍しいですよね。
モモコグミカンパニー:そうなんです。スタイリストさんが表紙の世界観に合わせて選んでくれて。
――小説って、装丁も大事じゃないですか。
モモコグミカンパニー:大事ですね。
――小説の装丁も、写真もあれば、イラストもあるし。こういう風にしたいっていう希望は伝えたんですか。
モモコグミカンパニー:そうですね。『御伽の国のみくる』っていう題名が決まってから、すごく可愛い小説だって思われそうだなって。
――甘々なお話、みたいな。
モモコグミカンパニー:そうそう。だから、ちょっと毒のある感じでという希望を伝えたら、真っ黒にしてくださって。
――なるほど。あと聞きたかったのが、この物語ってサクセスストーリーではないじゃないですか。どちらかというと報われない物語で。サクセスストーリーを書こうとは思わなかったですか?
モモコグミカンパニー:それは思わなかったですね(笑)。思わなかったし、書いているうちに、流れ的にもそうなっちゃったんですよね。友美は目指すところに行けなかったかもしれないけど、彼女のように闇を見た人間こそ、光が見えるということもあると思うので。結果的に、友美も幸せになれたんじゃないかなと私は思うんですけど……。
――読後感として、確かにそう思えたかもしれません。友美もいろいろあった末に、ある境地まで辿り着いた感じがありました。
モモコグミカンパニー:そうですね。最後、物語は穏やかに終われてよかったなぁとは思います。
――最後に、読者にメッセージをお願いします。
モモコグミカンパニー:自分にとってお守りになる小説ができたって、さっきも言ったんですけど、本当に「誰かにとってのお守りになればいいな」と思っているので、ぜひともお手に取ってください!
(了)
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