モモコグミカンパニーがBiSHを通して得た哲学「自分をまっすぐに見てくれている人が多い環境が、その人にとっての“居場所”」
昨年末には悲願であった紅白歌合戦に出場するなど、人気絶頂にありながら2023年をもって解散することが決まっているBiSH。その中にあって、エッセイ集を2冊上梓し、グループの作詞も担当するなど、“書くこと”においても才能を発揮してきたのが「あまのじゃく担当」のモモコグミカンパニーだ。今年3月、彼女が待望の長編小説「御伽(おとぎ)の国のみくる」を発表。そんな彼女が、小説を通して伝えたかった思いとは――。15000字を超える“小説家”モモコグミカンパニーのインタビュー後編をお届けする。
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BiSHモモコグミカンバニーインタビュー前編を読む>>>BiSHモモコグミカンパニーが今、“小説家”になって思うこと「書いているときのほうが本当に生きている実感があるし、自分らしいなぁって思う」
アイドルを目指すことは
自分を大切にする行為の
延長みたいなところにある
――ちなみに、モモコさんの大学時代の卒論テーマは『アイドルと演じること、ひとりの人間に見る虚像と実像』だったとか。ここにも、今回の小説と通じる部分がありますね。
モモコグミカンパニー:自分が演者側に行ったときに、モモコグミカンパニーと自分の関係性って何なんだろうって思って、そのテーマにしました。メンバーにインタビューをしたりとかして。フィールドワークをしなくても、アイドルは自分がいる環境だから(笑)、書きやすいなと思いながら書いていました。元々、大学の学科を選ぶ際も、アイドルとかそういうものにすごく興味があったからというのもあって。
――卒論は母校の教材にもなったそうですね。
モモコグミカンパニー:なんかしてくれたみたいですね。
――その卒論、読んでみたいなと思いました。普段の自分と、モモコグミカンパニーとして見られている自分、どっちが本当の自分なんだろうってことを、卒論を通して深く考えたんですね。
モモコグミカンパニー:そうですね。普段から「美しさと醜さ」とか、「光と闇」とか、「虚像と実像」とか、「本当と嘘」とか、そういう“一対”のものにすごく興味があって。そこは今回の小説にも反映されていると思うし、やっぱり虚像と実像というのは自分の中ですごくテーマとして大きいというか。
――なるほど。でもこのぐらい BiSHとしてのキャリアを重ねてきて、BiSH 中心の生活を日々されていると思うんですけど。毎日24時間のうち、 “BiSHのモモコグミカンパニー”として過ごす時間のほうが長かったりするわけじゃないですか、きっと。だからもう、BiSHのモモコグミカンパニーのときの自分のほうが、本当の自分みたいになってしまわないですか?
モモコグミカンパニー:うーん、私は本当にその2つを分けていなくて。その“分けてなさ”がモモコグミカンパニーらしさだなと思っている部分があります。
――大変だともそんなに思わないという感じですか?
モモコグミカンパニー:そうですね。本当に、そのまま出ちゃってるんで。だからそうですね……この小説に出てくるリリアとかみくるみたいに、そんなに使い分けてはいないのかなと。
――先程話に出た、モモコさんはちょっとドジなところとかも含めて、ファンの方に受け入れられているみたいな話がありましたけど、そういう風にファンの方々が認めてくれるから、そんなに肩に力を入れずにモモコでいられるという部分はありますか?
モモコグミカンパニー:そうですね。周りのメンバーがいるっていうのもあると思うんですけど、そういうドジな部分って、私には元々ある部分だと思うんですけど(笑)。やっぱり社会人になって、普通の仕事だったらそういうのって誰からも喜ばれないし、むしろ隠したほうがいい点だと思うんですけど。こういう仕事をしてるからこそ、出せる部分だし、むしろプラスに働くのかなとは思いますね。背が低いのも昔から嫌だったんですけど、この仕事をしているからこそ、個性になったりもするので。うん、自分のあまり好きじゃない部分を好きって言ってくれる人がいるのは、すごくありがたい仕事だなと思っています。
――作中に「アイドルは存在するだけで愛される」という表現がありましたけど、まさにアイドルにはそういう部分がありますよね。
モモコグミカンパニー:私が元々 BiSHのオーディションを受けたのも、アイドルになりたかったというか、いろんなオーディションが毎年あって、何千人もの女の子が受けるわけじゃないですか? 「なんでみんなそんなに受けるの?」ってすごく疑問だったし、アイドルに憧れるっていう気持ちは私もわかるけど、それにしても、こんなにたくさん受ける子がいるのはすごいなと思って。そのオーディション現場に一回行ってみたいなっていう気持ちから、 BiSHのオーディションを受けたっていうのが一番最初にあったので。この問いというか、「何でこんなに女の子はキラキラしたものに憧れるのか?」っていう、そういう女の子の儚いものへの憧れを自分の中で追求したいなと思っていたので、小説を書く中で、まぁまぁその答えが出たんじゃないかな……と思っています。
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