BiSHモモコグミカンパニーが今、“小説家”になって思うこと「書いているときのほうが本当に生きている実感があるし、自分らしいなぁって思います」
昨年末には悲願であった紅白歌合戦に出場するなど、人気絶頂にありながら2023年をもって解散することが決まっているBiSH。その中にあって、エッセイ集を2冊上梓し、グループの作詞も担当するなど、“書くこと”においても才能を発揮してきたのが「あまのじゃく担当」のモモコグミカンパニーだ。今年3月、彼女が待望の長編小説「御伽(おとぎ)の国のみくる」を発表。そんな彼女が、小説について、書くことについて、今BiSHのメンバーについて、今思うこととは――。15000字を超える“小説家”モモコグミカンパニーのインタビューを、前編、後編の2回に分けてお届けする。
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芽生えはじめた
「書くことに向き合いたい」
という強い思い。
そのために長編小説を
書くことを決意
――まずは、小説家デビューおめでとうございます。今回『御伽の国のみくる』を読ませていただいて、これは悪い意味に受け取ってほしくないんですけど、正直読んでいて結構“食らう”小説でした。主人公の友美を不憫(ふびん)に思ってしまうシーンが多くて、でも一方でいつも自分の好きな恰好(かっこう)をしていたりとか、ひろやんの反応を必死に受け止めようとする姿とか、友美のいいところをたくさん見つけながら読ませていただきました。
モモコグミカンパニー:ありがとうございます。嬉しいです。
――モモコさんはBiSHのメンバーとして活動されていて、アーティスト、エッセイストなどいろいろな肩書きがある方で、そこに小説家という肩書きも加わったわけですが、今の率直な感想を聞かせてください。
モモコグミカンパニー:いや、小説家とかまだ名乗れるとは全然思っていないんですけど、元々BiSHに入る前からずっと書くことは好きで。BiSHに入ってから、作詞に挑戦したり、エッセイを書くことになったりして、より書くことが好きになったんです。私たちは世間に発表するよりも結構前に、「BiSH解散」ということを渡辺(淳之介)さんから言われて、BiSHとしての活動の終わりを決められたときに「自分はこれから何を頑張ろう?」と思って。BiSHに入ってから7年間、いろんな仕事をさせてもらった中で、書くことにも向き合いたいと思うようになって、それにもっと向き合うために「長編小説を書いてみよう」と。小説を書きたいっていう思いは小学生のときからずっとあって、適当に小説を創作したりはしていたんですけど、やっぱり中途半端なものしかできなかったから、小説を書くことに対してまったく自信がなくて。書く前から諦めていたんです。
――なるほど。
モモコグミカンパニー:でも渡辺さんから宣告された「BiSH 解散」というのが、私の背中をすごく押してくれて。「今、頑張らなくて、いつ頑張るの?」って自分を鼓舞しながら書き進めることができたので、自分的に書き上げたということ、一つの作品という形になったこと自体がすごく自信になったし。それをBiSH解散後じゃなくて、解散前にできたということが、すごく私は嬉しかったです。
――タイミング的にも解散を発表してからそんなに間を置かずに、そして解散前に小説を発表できたことはより意味があることだなと僕も思います。
モモコグミカンパニー:やっぱり 、BiSH解散後より解散前の今、 “BiSHのモモコグミカンパニー”であるときに読んでもらいたい、現役で活動しているからこそ読んでもらいたい、っていう思いがすごくあったので。
――これまでも、小説を書くことに挑戦したことがあるというお話でしたけど、それは友達とかには読んでもらったりしていたんですか?
モモコグミカンパニー:いや~小説とか詩とかを書いてはいたんですけど、それは結構恥ずかしいことだと思っていて。
――確かに、その感覚は少しわかります。
モモコグミカンパニー:そうそうそう(笑)。なんか、“自分の世界に浸ってる”みたいで。だから人に見せることはなかったですし、書いているというのも恥ずかしくて周りに言えなかったし。この『御伽の国のみくる』を書いていた期間は1年くらいだったんですよね。その期間も、メンバーに対して小説を書いていることは一言も言えなかったですね。
――そうなんですね……。
モモコグミカンパニー:なんでかというと、私は書き方をちゃんとわかっていなくて。プロット(物語の筋、しくみ)や構想をはじめから終わりまで全部決めてから書き始めるというのが、多分オーソドックスな小説の書き方なんですけど。でも私の場合は、物語の展開を決めずに最初からバーって書くことしかできなくて、だからこの小説はどこに向かうのかとか、自分が最後まで書き上げられるかとかも、わからなかったし。
――ゴールを決めた上で書いていたわけじゃないんですね。
モモコグミカンパニー:そうですね、本当に。なので、「書いている」と周りに言って、書けなかったらすごくダサいなと思っていて(笑)。書いている間もずっとプレッシャーはありましたね。本当に最後まで書き上げられるのか?っていう。
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