【ブレイキンの“レジェンド”AMI&Shigekixインタビュー】Red Bull BC One、パリオリンピックを経験した彼らが語るブレイキンの未来とは?
執筆者: ライター/黒川すい
B-Boy・Shigekixに聞くブレイキンの魅力とは?
──Shigekixさんにとって『Red Bull BC One』を一言で表すと何ですか?
Shigekix 自分にとって“常に自分のターニングポイントになる舞台”です。2017年……僕が15歳のとき、アムステルダムで行われたRed Bull BC Oneワールドファイナルに初めて出場させていただきました(※現在は16歳以上が出場可能な対象となっている)。そのときは、チャレンジャーとしてかなり意気込んでいたものの、自分の名前が書かれたプレートが1枚でも上がれば、という気持ちで挑んだことを憶えています。結果的に準決勝まで進むことができて、自分の中でも世界が広がったり、周りの方たちからも認知してもらうきっかけになったりしたなと思います。
また、そのあとは2020年の開催では、優勝という結果を残すことができ、人生を変えるステージになりました。こうやって今までの経験を振り返ると、やっぱりRed Bull BC Oneは、自分の中でターニングポイントになっているなと感じることが多いですね。
──今回の開催地・ブラジルの雰囲気はいかがですか?
Shigekix お客さんもダンサーも本当にこの週末(Red Bull BC Oneワールドファイナル)を楽しみにしているんだなという気持ちがすごく伝わってきます。数週間どころか今年1年、このイベントを楽しみに過ごしてきたんだ!というくらい熱量が高いですね。
──キャンプ内のワークショップなど、印象に残っていることがあれば教えてください。
Shigekix やっぱり周りの熱量がすごいので、ステージ上で踊っているダンサーもすごくモチベーション高く挑める空気感だったなと思います。僕自身、オリンピックという舞台も経験した上で、歴史的なこの大会に足を運ぶことができ、歴史的新たな1ページに立ち合えることがすごく幸せです。
──ラストチャンスサイファーに対する感想を教えてください。
Shigekix ラストチャンスサイファーもかなり長く存在していますよね。“Red Bull BC Oneと言えば”みたいなイメージがあります。本戦はもちろん、このラストチャンスサイファーもかなり見どころ満載です。多くのダンサーやファンの方が、山場の一つとして楽しみにしていたんじゃないかなと思います。その期待を遥かに超える盛り上がり。素晴らしいパフォーマンスでかなり会場も沸いていましたし、配信ごしでも胸を熱くした人が多かったはず。日本のダンサーもすごく活躍されていて、Red Bull BC Oneワールドファイナルへの切符も獲得していたので、いいラストチャンスサイファーが今年も行われたなぁと実感しています。
──Red Bull BC Oneワールドファイナルで注目しているポイントは?
Shigekix ワールドファイナルに出場する本人たちが対戦表を埋めていくという試みが面白いなと思いました。誰かが決めたり、機械が決めたりするわけではないので、この時点で既にドラマが生まれているなって思います。あえて自分の因縁の相手にぶつたり、今まであまりかかわったことない人にぶつけたり……様々なメッセージ性がある中で、初戦からの盛り上がりが楽しみです。
それに皆さん素晴らしいダンサーなので、“ムーブ”も間違いない。我々観ている側のテンションが上がると思うので、チェックしたいところです。
──オリンピックのような競技性の高いブレイキン、Red Bull BC Oneをはじめとしたカルチャーの側面が強いブレイキン、改めてそれぞれの違いや魅力について教えてください。
Shigekix どちらもルールや技術などの本質的な部分はもちろんあるんですけど、両者を比較するとカルチャーとしてのバトルは、かなり制限が少ないなと思います。それってつまり“なんでもアリ”だいうことですよね。そもそもブレイキン自体が、なんでもアリ&フリーダムなものなんですが、それがRed Bull BC Oneには色濃く反映されていると感じます。とにかく自由度が高い!カルチャーとしてのブレイキンは、観客含め、より空間と一体となって作り上げられている印象です。ドラマが生まれる現場が、カルチャー向けのイベントにはより詰まっているのかなとも思います。
──今後のブレイキンの未来、ご自身のダンサーとしての今後の目標などについて伺いたいです。
Shigekix これまでカルチャーで培ってきた歴史の中に、今年新たにオリンピックというステージも飛び込んできたこの流れ、きっと世界の皆さんに衝撃を与えられたんじゃないかなと思います。ロスオリンピックではブレイキンの採用が見送られてしまいましたが、パリオリンピックを通して、確実にブレイキンの可能性が広がったんじゃないでしょうか。もちろんロスに続けば一層新たな可能性を秘めていたかもしれませんが、続かないからと言ってパリオリンピック自体に意味がなかったとは思いません。今年のパリオリンピックを経験したブレイキンだからこそ成し得る可能性もあると考えています。
せっかく広がったブレイキンのムーブメントを、この先どれだけもっと広げていけるか・もっと盛り上げていけるかは、僕たちの力の見せ所。人を引き込んで楽しませる魅力や実力がブレイキンにはあると思うので、これまでの歴史や本質をただ守るだけじゃなくて、常に新たな可能性や挑戦を広げることに前向きに進んでいきたいです。
(了)
この記事を書いた人
アパレル業界に勤めた後、フリーライターに。ファッションはもちろん、グルメ、エンタメ、お出かけ情報など幅広いジャンルの執筆経験あり。ウェブを中心に活動中。趣味はアートトイの収集や喫茶店巡り、読書。
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