45歳地下芸人の帝王、マヂカルラブリーの師匠…名だたる人気芸人が崇めるおじさん芸人、モダンタイムスとしみつ2万字独占インタビュー
執筆者: 編集者・ライター/佐々木 笑
モダンタイムスの売れ行き、あと一個の壁
──そもそも、売れてると売れてないの境界線ってなんだと思いますか?
今の僕らだと“決まらない仕事”って結構あるんです。これってやっぱり名前が売れてないからだろうなって思う節がすごくあって。この仕事、ランジャタイだったらぜひお願いします!ってなってたんだろうなっていうような。やっぱり俺らだと、「一回ネタ見せてもらっていいですか?」ってなるんで。
──実際、コラムの掲載先もなかなか決まらず申し訳ないです。
それは僕らの名前が売れてないからです。他にも、結構いろんなお話をいただくことは多いんですよ。「映像コント撮りませんか」ってお話もいただいて、実際スタッフと打ち合わせして、昨年12月に台本渡して、今年1月にロケハンしましょう!てなってたけど、5月になっても一向に話が進まない。これってたぶん、俺の名前が弱いから誰かが途中でNOを出してるんだろうなって。あと一個の壁があるんです(取材は5月におこなった)。
──あと一歩のところって、悔しさのレベルが違いますよね。
年末1週間空けて台本書いたあの時間はなんだったんだ?とかも思うことはあるけど、でも、僕らにはそれすらない時期があったんで。やりたいことはあるから勝手に作って勝手にやって、ライブで「なんだこれ」って馬鹿にされて終わるとかのレベルだったんで、多少お仕事として成立しつつある今はありがたいなと。
たぶん、いろんな人が同じことを思ってるような気がしてて。例えば乃木坂の女の子でも、トップの子だったらすぐ写真集出してくれるけど、アンダーの子は「一回センターとってからね」とか。みんな同じ悩みがある中で、腐る子と腐らない子の差なのかなって。
──としさんは腐りそうな瞬間はありますか?
ないです。今やっと、あともうちょっとでひっくり返るところなんで。本当にあともうちょいなんです。手っ取り早く賞レースのファイナリストになるとか、何かに猛烈にハマるとか、そういうことなんだよなって。ひっくり返れば、いろんなことやりやすくなるのになって。
──としさんの周りにいる「ひっくり返った人」に共通することってありますか?
“頭が柔らかい”じゃないですかね。野田も国崎もそうだけど、素直。先輩の(バイきんぐ)小峠(英二)さんとかも、売れた人はみんな頭柔らかいなっていうイメージはあります。
──なるほど。ちなみにおもしろくても売れてない人っていますか?
それがたぶん、代表で今僕らの名前とか出るんじゃないですか? じゃあなんでなの?ってなると、「としさんはやっぱまだ頭硬いんだよな」ってなってるんだと思います。
──ちなみに、かわさんは頭が柔らかい?
かわさんは、何にも考えてないところがいいんじゃないですかね(笑)。
──(笑)。
まあ、波風立てないようにとしさんの言うことを奴隷のように聞いてる、みたいなイメージがあるんでしょうね。で、俺が出す“作ってる感”が、スタッフとか作り手側は余計嫌なんでしょうね。駒として動きゃいいのに、考えてる感を出してくるから邪魔でしょうがねえんだろうなとか、そういうのはなんとなくわかってきました。
──売れている人は、そこをうまい具合に?
消せますね。ちゃんとその人の手柄になるように動けるけど、俺は「お前ちょっとなんか仕切ってる感出すよな」みたいな。
──そこまで自分のことを分析できてるんですね。
勝手に思ってる分析ですけど、なんでこんなおもしろいぐらいテレビに呼ばれねえんだろうって考えたときに、「お前なんかちょっとめんどくせえんだよな」に行き着きまして。それともう一つ、テレビマンに好かれる人って、女子に認められてる人なんですよね。
女性子ども人気皆無は、逆に武器なのか
──モダンタイムスのファンってどういう方が多いんですか?
ちょうど最近、僕らのYouTubeの視聴者層を調べたんですけど、男性8割、女性2割で、10代の視聴者は0人でした。
──0人ですか?
0%。言葉は悪いですけど、こういうエンターテインメントの世界って結局女性と子どもの層が一番お金を使ってくれると思うんです。けど、俺らはそこが皆無なんですよ。でも、10代0割、女性2割しか見てないモダンタイムスって、ここまでくると逆に武器になるのか?とも思って、シフトチェンジするべきなのか今悩んでます。
『かわさんの部屋』をやってるときは女性が7割だったんですよ。だから企画が話題になったんです。やっぱ女性ってすごい。かわさんってやっぱモテるし、なんかそういうコンテンツがほかにもあるだろうなとか今考えてて。
──ちなみに、かわさんが結婚してから女性ファンは減りました?
減りましたね。『かわさんの部屋』でついた女性ファンがいなくなって、男性ファンがより濃くなった感じですね。
──としさん的には、どちらのほうが居心地いいですか?
居心地いいのは、男性人気があるほうです。ラクなんですよ。でも、僕はどっちかっていうと「大金掴むぞ!」の精神なんで、ビジネス的なことを考えれば、やっぱり女性に人気がないとどうにもなんねえな……と。だから、見間違わないようにしないとなって。なんかうまいこと今の俺らのやり方でいいコンテンツを作って、女性人気が出ればいいなって。
──キャラ変とかではなくて、大事なのはコンテンツなんですね?
もう、川崎誠がクズであったりとか、俺がこんなひねくれた頑固者だったりとか、根底にあるこれって変わりようがないんで。 そこを好かれる嫌われるはしょうがないんですけど、コンテンツによってはひっくり返ることもあると思うんで。
『100日後に死ぬワニ』とか、あんなものを作りたいなと思ってて。あれ、終わり方も好きだったんですよ。実は電通が絡んでて世間が冷めたっていうのも、俺の中ではすごいいい終わり方だなと思ったんです。
──ライバルで挙げられていた虹の黄昏さんは、女性ファンも多い印象です。
二人とも、なんかちょっと色気があるんですよね。これがモダンタイムスにはないんです。
──ちなみにモダンタイムスのTO(トップオタク)って?
男性ファンですね。このあいだも男性ファンがGERAラジオに13万円のスパチャを送ってくれたんですよ。俺、ずっとその人のこと学生だと思ってたからビックリしたんですけど、最近就職したらしくて。だから、このままの感じで100%男性人気っていうのを武器にするか、しないかですよね。振り切っちゃったら、なんかカタチになりそうじゃないですか。
一番嫌なのは、芸人じゃなくなること
──モダンタイムスの目指す姿ってなんですか? 憧れの芸人さんとかいるんでしょうか?
「こうなりたい」はありました。自分たちの冠番組を持って、自分で企画出してそれがカタチになるとか。働き方が今の時代に合っていて憧れるのは、バカリズムさんとか。たぶん、あの人もコント番組とかやりたかった方だと思うんですけど、 自分で(ドラマ)『ブラッシュアップライフ』作ったみたいな、なんかそういうことなんだと思います。
──としさんの憧れはそういうタイプだったんですね。
作り手として企画を考えて、それをみんなでやりたいんですよね。それで金を稼げたら一番いい。劇団ひとりさん、ロバートの秋山(竜次)さん、ジャルジャルさんもそうですし、ジェラードンのYouTubeとかも羨ましい。ああいうのをやりたいです。
小学生の頃『とんねるずのみなさんのおかげです』でめちゃめちゃ笑ったあと、エンドロールの企画の欄に、石橋貴明・木梨憲武って出てたんですよ。それが衝撃だったんです。この人たち裏方もやってんの!?って。萩本欽一さん、たけしさん、さんまさん、ドリフで言ったらいかりや長介さんとかから始まってるんだと思うんですけど、ダウンタウンの番組も絶対に松本人志って出てるし、ウッチャンナンチャンの番組も内村光良って出てる。あ、芸人ってネタ作んなきゃダメなんだなって思いました。
──ブランディングの方向でも迷いつつある今、一番力を注いでることってなんですか?
一番嫌なのは“芸人じゃなくなること”なんです。やりたいことはいっぱいあるんですけど、売れるためというよりも、 芸人じゃなくならない努力をしている感じです。
──芸人じゃなくなる瞬間ってなんですか?
例えば今、GERAっていうランキング制度があるラジオをやらせてもらってるんですけど、おもしろくて人気がある人たちが新しく入ってくると、 自ずと僕らの順位が下がっていくじゃないですか。そうすると打ち切りの話があがって、最悪ラジオという喋れるコンテンツがなくなる。それは芸人として手駒が一個減るってことだから、なんとか残す方法を考える……って感じですね。
YouTubeの登録者数1万人っていうのも直近の目標として掲げてるんですけど、それはなぜかっていうと、1万人いれば最低保証の収入があるんですよ。そしたらその資金でYouTubeのコンテンツが作れるので、活動していけるんですよね。そういう、芸人でいるための努力。
コロナ禍、不要不急だから家出るな、お笑いやるなっていう時期があったじゃないですか。だけど、芸人がネタ作るのとかお笑いやるのって、別に不要不急じゃないって僕は思ってた派なんで、その発信する場を作るための努力って感じです。
YouTubeがちゃんとあれば、そこでネタが発信できるし、企画ライブとかも無観客でも出せるし、それである程度の収入があれば、お笑い芸人としては生きていられるので。
──では、一番見てもらいたい活動ってなんですか?
YouTubeで配信してるネタと企画、あとはGERAのトーク、これが全部な気はしますね。ネタ、企画、トークって芸人としての必要最低限な気がしていて、あとはそれを底上げをすればいい。まずそこだけしっかりしてればたぶん芸人としては成立するはずっていう希望ですね。そこから先に、いろんな仕事があればいいなって。
──ちなみに、解散や芸人を辞めようと思ったことはありますか?
どっちもないです。かわさんはどうかわかんないですけど。
──確信が持てない?
単純に確認したことがないからですね。まあ、この人が辞めるって言うときは、たぶん女絡みだろうなとは思ってますけど。女性が「辞めて」って言ったらとか。でも結果、俺といるから……要はお笑いやってるからモテてるっていうのもあるんで。
──かわさんは解散してもピンで芸人やっていくと思いますか?
あ、それはやらないって言ってました。まあかわさんも、芸人として女遊びしたいみたいなことなんだとは思います。
この記事を書いた人
主な仕事は芸人さんの取材や、書籍・コラムの編集など。本名通りお笑いが大好き。ライブは年間約200本、365日芸人さんの活躍を追っています。
Website:https://smartmag.jp/
お問い合わせ:smartofficial@takarajimasha.co.jp
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