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45歳地下芸人の帝王、マヂカルラブリーの師匠…名だたる人気芸人が崇めるおじさん芸人、モダンタイムスとしみつ2万字独占インタビュー

執筆者: 編集者・ライター/佐々木 笑

事務所を辞めてまで続けたかった『かわさんの部屋』

──2021年に、16年所属したSMAを辞めてフリーに。

そうです、そうです。芸人を始めた当初も、事務所を全部落ちてフリーでやってたんですよ。そんなとき、あくまで噂ですけど、当時売れっ子だった“響”のためにソニーがお笑い部門を作るって聞いて。他にも芸人募集してるみたいだよっていうのが広まって、みんなで駆け込んだらすぐ入れました。

──長らくいた事務所を辞めるって、一大決心ですよね。

本当にそうですね。『かわさんの部屋』が理由で辞めました。

──『かわさんの部屋』のご説明をお願いします。

もともとかわさんって、ずっとホームレスをやってたんですよ。 それはなんでかっていうと、あの人は女性が大好きで、彼女の家に転がり込んで追い出されて……を何年も繰り返してたからです。で、どうせ家がないなら一つの企画として「売れた野田クリスタルに部屋を借りてもらって、その部屋を365日24時間ずっと監視するのはどう?」となりまして。

初動がすごいよかったんですよ。お笑い好きの間ではちょっとバズったぐらいの評判になって、かわさんもちょっと人気者になって。欲しいものリストに載せたものがめちゃくちゃ送られてきたり、スパチャもいっぱい入ったり。

──すごい。でもそれがなぜ辞める理由に?

始めるにあたって、事務所と揉めないようにちゃんと企画書を書いてOKをもらったんですよ。でも、のちに上層部が「何やってんだこいつらは」となりまして。まあ、思いっきり「スパチャくださ〜い」とかやってたんで(笑)。言っちゃえば物乞いですからね。

今すぐその企画をやめろって言われたんですけど、俺ら的には企画書書いてOKもらってるし、せっかくバズってるし、野田の名前も借りてるし、お客さんから物ももらってる状況で中途半端にやめたらそれこそ大クレームになるだろうし、『かわさんの部屋』をやめたくない理由がたくさんあったんですよ。

で、1カ月ぐらい話し合った結果「24時間配信してたらマネジメントできない」という理由で、『かわさんの部屋』を続ける代わりに事務所を辞めることになりました。どこも拾ってくれなかった僕らにイチから教えてくれたSMAには感謝してますし、かわさんは最後まで辞めたくなかったみたいですけど。

──そのあと、他の事務所に入ろうとは思わなかったんですか?

思わなかったですね。『かわさんの部屋』をちゃんと続けて、どんなかたちでもゴールしようと思ってたので。そしたら、事務所辞めたタイミングくらいでちょうどかわさんが彼女作って部屋にいなくなっちゃって、何コイツって思いました。まあ、だから一応かわさんの結婚をゴールにして終わった感じですね。

──なるほど。 正直、芸人仲間も多いお二人ですから、入ろうと思えばどこかに入れたんじゃないかとも思ってたんです。

無理だと思います。事務所の人の目には問題児として映ってるんですよね。そんで、俺らもまた問題起こすだろうし。新しい事務所を作った方とかが声掛けしてくださったこともあるんですけど、どうせ迷惑かけちゃうから。

──ちなみにコンビ名の由来って?

かわさんが付けたんですよね。モンティパイソンっていうイギリスのコント集団が好きで、そこから取ったんだと思います。もともとフリーの頃は“としみつ川崎”で“としかわ”という名前でやってたんですけど、事務所に入るときに、「これからは二人だけじゃなくていろんな人の力を借りることになるだろうな」ってことで変えました。

──なるほど。いい理由ですね。

いろんな力が交わったことによって、結果揉めたんですけどね。ちなみに僕は陰獣(いんじゅう)を推してたんですけど、そんな奴ら売れねえよって反対されました。『HUNTER×HUNTER』のキャラクターなんです。陰の獣って、俺らなんてまさにそうじゃんって思ったんですけどね。

smart Webの2万字独占インタビューに応じた「地下芸人の帝王」「マヂカルラブリーの師匠」という肩書きを持つモダンタイムスのとしみつ

芸歴24年目、ネタ案は年々“増えている”

──フリーだと、ブランディングなども含め全部自分ですから難しいですよね。

そうですね。仕事でお世話になってるスタッフさんとか、いろんな方に結構相談してます。正直、金額面とかでも「これ結構吹っかけられてるな」みたいなお話もあったりして、自分判断が難しいこともあるんですよね。

──基本的に、モダンタイムスの決定権はとしさんに?

それはさすがに僕ですね。

──ネタもとしさんが書かれている?

ネタも100:0で僕です。毎月40個ぐらいネタ案を出して、そこからかわさんに3つ選んでもらって、その3つを芸人同士でやっているネタ会で直して……みたいな作り方ですね。

──すごい。毎月40案ですか?

雑な案ですけど、一応毎月です。このままだとまずいって思って年々増えた感じです。

──芸歴24年目、年々減っていくんじゃないんですね。ネタ作りは結成当初から100:0なんですか?

最初からですね。僕がもともと書きたがりなんで、そこに不満は一切ないです。

コロナ禍での好転。周りが助けてくれる“巻き込み型”のコンビ

──上り調子で今が一番楽しいとのことですが、モダンタイムスの転機はいつでしたか?

完全に“コロナ禍”です。コロナで配信の時代になってから俺らは変わりました。『かわさんの部屋』とかGERAラジオが始まったのが偶然その時期だったのと、それに加えて『マヂカルラブリーno寄席』があって。本当に配信の時代になってよかったなと思います。

──配信のおかげで、どこにいてもライブを見られる環境になりましたもんね。

はい。僕の中で、お笑い好きな人ってたぶん日本人の2割なんですけど、その中でモダンタイムスが好きな人ってさらに少数で、その中で東京ってなると、30人もいないぐらいだったんです。でも、分母が大きくなったことによってようやく活動できるようになった感じです。

──2023年10月には、『マルコポロリ』で特集回が組まれたりも。(2023年10月1日放送「野田クリ・アルピー・ランジャタイが崇拝! 地下芸人の帝王・モダンタイムスは果たして日の目を浴びるのか!?」)

『マルコポロリ』イカれてますよね。本当にありがたいです。その流れで東野幸治さんのYouTubeにも呼んでいただいて。俺らが何かしたわけじゃなくて、周りが助けてくれてるんです。

──前出した「意地っ張り」「プライドが高い」という話にも通ずるんですけど、周りが売れていくことへの嫉妬とかはありますか?

昔から、誰かが売れて悔しいとかの嫉妬って一切ないんですよ。なんでねえんだろうなって考えた時に、野田、アルコ、ランジャとかって、俺らから声かけたんですよ。ライブ呼んで出てもらってた人たちが売れると、「あ、俺やっぱ間違ってないじゃん」っていう感覚になるんです。

──師匠という名で世に出ることを、実際はどう思っているのか気になってたんです。

師匠なのに全く売れてねえのって、向こうもイジり甲斐あるじゃないですか。実際、あの辺りと一緒に仕事した日は「いい夜だな」と思いますね。あのメンバーで集まってテレビ出てるときは一番楽しいです。

──そのあたりのメンバーがモダンさんのことをメディアで話すときって本当に楽しそうに見えるので、愛されてるんだなと感じます。

近いところを例に出すと、虹の黄昏って1匹狼的なところがあって彼らで完結してるけど、モダンタイムスってなんもないというか、絶対何かを巻き込んでやってるから。野田とか国崎とかって、もう巻き込まれてる被害者だと思うんですよ。

──モダンさんの持ってる力ですよね。

愛されてるのかどうかは、わかんないです(笑)。

smart Webの2万字独占インタビューに応じた「地下芸人の帝王」「マヂカルラブリーの師匠」という肩書きを持つモダンタイムスのとしみつ

この記事を書いた人

主な仕事は芸人さんの取材や、書籍・コラムの編集など。本名通りお笑いが大好き。ライブは年間約200本、365日芸人さんの活躍を追っています。

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