「佐藤輝明はまだまだ伸びる」92歳広岡達朗が佐藤に見る王貞治との共通点広岡達朗『勝てる監督は何が違うのか』
執筆者: smart編集部
打撃、守備、メンタルと非凡な才を持つ佐藤輝明
前項で佐藤輝明のスローイングについて述べた。
あれはルーキーイヤーの2021年のことだったと思うが、レギュラー選手の大山悠輔が欠場した際に、佐藤がサードを守ることになった。「はたして、どの程度の守備力なのだろう?」と注目していて驚いた。
回転のいいボールを矢のような送球で一塁に投じていたのである。あれは印象的な場面だった。私たちが現役時代のレギュラー選手であれば当たり前の送球ではあったが、現在ではほとんど見ることがなかっただけに、「なかなかいいボールを放るではないか」とうなってしまった。
このとき私は「佐藤はサードで使うべきだ」と確信した。少なくとも外野を守らせたり、サードで起用したり、「決してユーティリティプレイヤーとして便利屋のように扱ってはならない」と感じたものだ。大山にしても、佐藤にしても、チームの主軸となるバッターにはそれなりの敬意を持って接しなければならない。
そして岡田は、言葉こそ厳しいものの、両者に対しては中心選手としての敬意を忘れていない。その点だけでも、岡田監督を評価できる。
なおも、佐藤輝明の話を続けたい。
サードからの送球にも非凡さをのぞかせたが、やはり彼の最大の魅力はバッティングだ。彼の場合は空振りが多く、読みが外れると腰が引けた不格好なスイングを喫してしまい、そのために三振が多いことが難点ではあるが、「当たったらホームラン」という長打力は何物にも代えがたい魅力だ。
こすったような当たりでも、レフトスタンドに運ぶことができるバッターは数少ない。多くの指導者が誤解しているが、それは腕力があるから可能となるのではない。佐藤がそれを可能としているのは臍せい下か (下腹)の一点に氣を鎮めることができるからだ。つまり、腰を中心とした軸を作って、クルリと回転してスイングしているのだ。
それはまさに、私が師事している藤平光一先生の教えであり、王貞治をはじめとする歴代の一流打者に共通する打ち方である。
だから、少々体勢を崩されたとしても打球はグングン飛んでいく。投手からすれば「打ち取った」と思った打球がスタンドインするのだからたまったものではない。
さらに佐藤の場合は、勝気な面構えもなかなかいい。
ある日の試合、チャンスの場面で凡打に終わったとき、佐藤はベンチ内でバットを叩きつけて悔しさをあらわにしたことがある。
私が感心したのは、決してファンの前でそのような情けない姿を見せたのではなく、ベンチに戻ってから感情を爆発させたことだ。ファンの目を意識した「見せるための悔しさ」ではなく、心からの悔しさだったからだ。
プロの世界で生き抜いていくことのできる実力がある。守備も打撃も非凡な能力があり、強気な性格もいい。「タイガースの浮沈は、佐藤を一人前に育てることができるかどうか」だと、私は見ていた。
彼の本来の能力からすればまだまだ物足りなさは感じるが、プロ入りから4年が経過し、チームを背負って立つ選手となるべく、ここまで順調に推移していると言えよう。佐藤はまだまだ伸びる。
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※本記事は発売中の書籍『勝てる監督は何が違うのか』(宝島社)の一部を抜粋したものです。
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