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【M-1グランプリ2022】真空ジェシカは勝手に着いていきたくなる内輪教祖

執筆者: 編集者・ライター/佐々木 笑

年々増え続ける参加組数、毎年変わりゆく大会のカラー。今年も『M-1グランプリ』に夢中になる季節がやってきた。『M-1グランプリ2022』ファイナリスト9組の中から、筆者が飛びきり注目している真空ジェシカについて、僭越(せんえつ)ながら紹介させていただきたい。史上最多となる7,261組もの漫才師がエントリーした激戦を勝ち抜き、2年連続決勝進出を果たした彼らの魅力に迫る。

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左がツッコミのガク、右がボケの川北茂澄

探究心を掻き立てる、
ぶっきらぼうな内輪ノリ

『M-1グランプリ2021』で「媚びない2人、ブレない漫才」と紹介されて早一年。この文言通り、2022年も真空ジェシカは“真空ジェシカ”を貫いた。ファンは、真空ジェシカに着いていくのに必死だ。

川北が日常的に使用する「まーごめ」「なにっ!」「さすがにラビー」「山口コンボイ」「アルティメットありがとう」などは、いわゆるお笑い偏差値……いや、真空ジェシカ偏差値が高くないと到底理解できない。何がなんやらの内輪ノリを、取り憑かれたかのように躊躇(ためら)いなく発信し続ける川北。呆れながらも説明役を担ったり(時にはサボったり)するガク。

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我々が理解しようがしまいが、そんなことは本人たちには全くもってどうでもいい。自分たちが面白いと思うものを一心に楽しむぶっきらぼうな雰囲気が、ファンの探究心をより一層掻き立たせているのだ。楽しそうなところに人は集まる。

休み時間、隅っこで楽しそうに談笑しているグループから漏れる声を、こっそりと盗み聞きしているかのような感覚。どうしても気になっていざ近づいてみると、意外と優しく丁寧に教えてくれる……。そのギャップも堪らない。

内輪の面白さを、ファンは勝手にお裾分けさせてもらっている。変なワードで勝手にふるいにかけられて、勝手に詳しくなって、勝手に楽しんでいる。わからない単語を一つ調べ始めたその瞬間、確実に沼にハマり始めているから要注意。「まーごめ」に何の違和感もなくなってきたら、もう手遅れだ。

(『真空ジェシカのラジオ父ちゃん』は聴くだけで真空ジェシカに関する様々な知識を得ることができるスピードラーニングのようなものなので、ぜひ聴いてほしい)

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誰も置き去りにしない
インテリジェンス漫才

どこに行っても変わらぬ立ち振る舞いのため、平場では何かと物議を醸すこともあるが、そんな彼らもM-1となれば一変する。万人が理解可能なインテリジェンス漫才は逸品。昨年のM-1では、ネタ中に登場した「ハンドサイン」がトレンド入り。M-1公式YouTubeに上がっている今年の3回戦のネタも、アホみたいな設定にもかかわらず、ところどころで知性が見え隠れする。たとえ知らない単語が出てきたとしても、ガクが最短ルートで説明ツッコミをしてくれるから、視聴者は「わからなかった」の感覚が残らない。ネット民と大衆の橋渡し役のようにも感じる。

普段は本当にむちゃくちゃなのに、漫才では誰も置き去りにしないのが彼らの魅力だ。もしかしたら、M-1の舞台こそが、彼らを安心して見れる唯一の場所なのかもしれない。

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川北はママタルト・大鶴肥満がプリントされたTシャツを着用

一昨年は、絶対に地上波では流せない吉住を題材にしたネタを、今年は、絶対に地上波では流せないヨネダ2000のオマージュネタを劇場で披露していた。アブノーマルなネタで自分たちが楽しみながらも、しっかりとM-1用のネタも仕上げ、あれよあれよと2年連続決勝進出。その姿は、「全然勉強してないよ」と言っていたのに、ちゃっかりテストで高得点を取るエリートのようだ。

M-1ファイナリストの肩書きを手に入れてからも、ライブの規模など一切関係なく舞台に立ち続ける彼らに、どこか実家のような安心感も覚える。今年3月に行われた真空ジェシカライブ『言うとしたら僕。死ぬのはキミ。』は、勢いを増す人気とは裏腹に、キャパ約100席の新宿バティオスで開催され、チケット発売日にサイトそのものがサーバー落ちした。いつまでも劇場で楽しんでいてほしいし、欲を言えば、『真空ジェシカのギガラジオ』(※真空ジェシカと肉体戦士ギガのラジオ。5年前から現在まで週1ペースで配信)も永久に続けてほしい。

いつも川北の胸元でにっこりと笑っている大鶴肥満が属するママタルト(※川北は幼少期の大鶴肥満がプリントされたTシャツを愛用している)、ガクが長年ルームシェアをしている高木貫太属するストレッチーズ、どちらも敗者復活戦に挑むかたちとなった。

【M-1グランプリ2022】真空ジェシカは勝手に着いていきたくなる内輪教祖

ママタルト。右が大鶴肥満。

【M-1グランプリ2022】真空ジェシカは勝手に着いていきたくなる内輪教祖

ストレッチーズ。右が高木貫太。

真空ジェシカが待っているM-1の舞台に彼らが進み、キモいほどの内輪ノリを見せてほしい。私たちは、それに勝手に着いていきたいのだから。

強い野心を見せず、ひょうひょうと腕を磨き2年連続で決勝に駒を進めた彼らは、シンプルに、最高に、かっこいい。

準決勝のMCを務めた、はりけ〜んず前田が「芸人は人生賭けて漫才するけど、お客さんは人生かけて漫才見なくていい」と言っていた。時には応援に力が入りすぎてしまうこともあるが、そんなときはこの言葉を思い出して、応援する気持ちを全て笑顔に変換したい。

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準決勝直後に行われた『M-1グランプリ2022』決勝進出者発表会見

Profile/真空ジェシカ
ガク(本名:川俣岳/1990年生まれ、神奈川県出身)と川北茂澄(かわきた・しげと/1989年生まれ、埼玉県出身)のコンビ。プロダクション人力舎所属。『M-1グランプリ2021』から2年連続M-1決勝進出。

【M-1グランプリ2022】真空ジェシカは勝手に着いていきたくなる内輪教祖

©M-1グランプリ事務局

Information/番組情報
「M-1グランプリ2022」
12月18日(日)放送 午後6時34分 ~10時10分
ABCテレビ・テレビ朝日系列全国ネット生放送

「M-1グランプリ2022 敗者復活戦」
12月18日(日)午後3時~(予定) ※一部地域除く

「来週はM-1グランプリ 超お宝映像で振り返る!M-1衝撃の瞬間SP」
12月11日(日)ひる0時55分~午後1時55分
ABCテレビ・テレビ朝日系列全国ネット生放送

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写真=小山美里

この記事を書いた人

主な仕事は芸人さんの取材や、書籍・コラムの編集など。本名通りお笑いが大好き。ライブは年間約200本、365日芸人さんの活躍を追っています。

X:@sasaemi17

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