三宅香帆が語る“推し活”の今後――「他人ではなく自分を推せ」という言説の裏側と、“自分の言葉”を持つ本当の意味推し活の未来は『ラヴ上等』?
執筆者: 音楽家・記者/小池直也
Y2K=平成リバイバルがしっくりくる

――ところでファッションと言語についてもお聞きしたいのですが、三宅さんは普段ファッション誌を読みますか?
三宅:「BAILA」や「ELLE」で連載させていただいていて、読者としても読みますし、「BRUTUS」のようなカルチャー雑誌も好きですね。
——実はsmart本誌が昨年、創刊30周年を迎えました。誕生当時に密接だったのが「裏原系」のファッション。当時はまさに“裏”だった裏原系のカルチャーが、今ではNIGO®さんがファミリーマートのクリエイティブディレクターに就任するなど、完全に“表”の文化になりました。
三宅:たしかに。平成は経済的に「失われた30年」と言われますが、成長と引き換えに文化を拡大できた時代でもあった。ただ、それはそれでよかった面もあると思います。なんだかんだビジネス側ではなく、カルチャーのほうにいい人材が入ってきたということもあったはずなので。
――平成といえば、日本における「Y2K」は90年代への回帰で実質「Y1.99K」だったと思うんです。最近はレトロなものなら、何でも「Y2K」みたいな感覚で使われているような。
三宅:アメリカから輸入されてきた言葉なので、そうなるのかなと思います。私は「平成リバイバル」とするのが一番しっくりきますね。2000年代以降のアメリカってインターネットの進化と紐付いてると思うんですけど、日本だと当時はまだ一部のオタクのものでした。
だから「Y2K」は平成の雰囲気を指す言葉なのかなと。「ITブームで景気がいい」ではなくて、バブルが弾けつつも、まだ景気がよかった頃みたいな。

——なるほど。三宅さんは『推したちとどう生きるか』の第4章でも、アメリカ文化について独立して語っていましたね。
三宅:インターネットのなかでVTuber文化と、旧ジャニーズ事務所や渡辺プロダクションのような芸能事務所は違う文脈だと思ったんですよ。連載時は気にしていなかったのですが、第3章までのインターネット以降におけるメディア環境や労働環境の変化と、アメリカからやってきた芸能は別の話だと感じたんです。
だから書籍化するときに、別の章として整理しました。正直、アメリカと日本の文化を分けて考える感覚が30代以下の日本人にどれくらいあるのか、ちょっとわからない部分もあります。

――話を戻しますが、女性は「地雷系」や「量産型」「うさぎ舌リップ」「ワンホンメイク」などの言葉があるのに、男性のファッションは「20代男性 ファッション」のように検索しがちと言われます。逆に髪型に関しては、逆に男性のほうが言葉が多い。
三宅:もしかしたら、ファッション的なロールモデルが、女性のほうが多様なのかもしれないですね。男性側の憧れる人物像も多様になっていい気がします。そうすれば服やメイクにも言葉が広がっていくんじゃないかなと思います。
女の子のファッションって、アイコンが登場してから初めてジャンルができる感じなんです。男性だと菅田将暉さんとかなのかな。ファッションアイコンとしてのスターが出てくると、より言語化されていくのではないでしょうか。
――「顔面国宝」や「メロい」、「ビジュがいい」といったカッコよさを表す言葉も増えているという意見もあります。
三宅:昔よりは語彙力が上がってると思いますね。上の世代よりも下の世代の、特に男性は褒める言葉に照れがない人が増えたんじゃないかなと思いますね。今の40〜60代は他人に「可愛い」とか「カッコいい」と言うことに、ハードルを感じる人も多いはずです。
この記事を書いた人
音楽家/記者。1987年生まれのゆとり第1世代、山梨出身。明治大学文学部卒で日本近代文学を専攻していた。自らもサックスプレイヤーであることから、音楽を中心としたカルチャー全般の取材に携わる。最も得意とするのはジャズやヒップホップ、R&Bなどのブラックミュージック。00年代のファッション雑誌を愛読していたこともあり、そこに掲載されうる内容の取材はほぼ対応可能です。
Website:https://smartmag.jp/
お問い合わせ:smartofficial@takarajimasha.co.jp
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