【村上隆】カイカイキキ所属タカノ綾の個展をレポート。自然と人間の未来を描く
執筆者: smart編集部
今回は、カイカイキキ所属のアーティスト・タカノ綾さんの個展をレポート。日本では10年8カ月ぶりとなる展覧会に込めた想いとは。
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現在から未来へ、自然回帰への願いが紡ぐ神話の世界
東京・元麻布のカイカイキキギャラリーでAYA TAKANOの展覧会「銀河の神話よりも長く alternative future」が開催中(2024年11月30日まで)だ。カイカイキキ所属アーティストのAYA TAKANOは、絵描きだがそのイマジネーションのベースにあるのは、SFであり、自然や動物であり、アニメや漫画でもある。ファンタジーテイストあふれる作品は、愛するもので埋め尽くされており、キャンバスの世界はAYA TAKANOのインナーワールドとなっている。
日本では10年8カ月ぶりとなるAYA TAKANOの個展だが、もちろんその間も、ヨーロッパやアジアなど日本以外の国を中心に精力的に創作活動をしていた。今回のタイトル「銀河の神話よりも長く」は、小説家、歌人である雪舟えまの作中から取られている。サブタイトルの「alternative future」は意訳すれば「もうひとつの未来」という意味だろうか。その意味は展覧会の会場に入った瞬間に理解することになる。
展示スペースに入り作品を見ると、左半分が現在、そして右半分が未来を表していることに気づく。今回の展示は全てが新作であるが、現在は、ハイブランドと思われる紙袋を持った少女や、量販店に見えるアイコン、ファストフードチェーン店の看板のような、いわゆる現代を象徴するようなどこかジャンクなカラーがちりばめられている。しかし右側の展示スペースを見ると、そのようなものに代わり、たくさんの動物たちや鳥、また稲穂などが登場するようになっている。そして少女たちの体には古代人を思わせるようなタトゥーが施されている。
この展覧会のテーマは「自然回帰」だろう。もともとそういった思想を持っていたAYA TAKANOをより強くその方向に舵を切らせたのは、3.11東日本大震災だった。自然災害ではあったが、原発のメルトダウンは驕おごり高ぶった文明社会への自然の怒りだったのかもしれない。100年かけて構築してきた、つるつるした機械や高層ビルや高速道路やアスファルトやAIに、未来はない、それはぜんぜんいいものではなかった、とAYA TAKANOは語っている。
そして彼女は、縄文時代のような、争いがなくて体をタトゥーなどで飾って、踊りや音楽や芸術がもっと呪術的で力を持っていて、きのこやサボテンを食べたりお祭りをしたりして、他の生き物をリスペクトして共生している感じのイメージの未来がいい、とも語っている。展示スペース左側はAYA TAKANOの理想とするオルタナティブな世界だ。自らの理想を少しでも具現化していく彼女は、実生活でもヴィーガンであり、環境への配慮から、画材もアクリル絵具から油絵具に変更するなど、その考えは口だけではない。そして今日も夢見るイノセントワールドを想いながら神話を描いている。
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Photography_KEI OKANO(upper sections), KOZO TAKAYAMA(bottom sections/left & rignt), REIKO MITAKE(bottom sections/middle)
Text_HISANORI NUKADA
©2024 AYA TAKANO/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.
※この記事は2025年smart1月号に掲載した記事を再編集したもので、記載した情報もその時点のものです。
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