「“変なものが面白い”時代になる」モノンクルが明かす、育児と音楽的チャレンジ
執筆者: 音楽家・記者/小池直也
感動はバーを越えたときに生じる
――今はリアルタイムでループを作って、その上で歌を乗せるようなパフォーマンスですが、デビュー当時はループ感の薄い音楽性でした。それを振り返ってみていかがですか。
角田:2013年の1stアルバム『飛ぶものたち、這うものたち、歌うものたち』のときは、管楽器のアンサンブルによるチェンバーミュージックに日本語の歌が乗ったら面白いと思ってました。2017年の『世界はここにしかないって上手に言って』はトランぺッター・黒田卓也さんなどを呼んで、バンドサウンドな現代ジャズに日本語の歌が乗った音楽をやりたかった。今はその最新型を7、8年ぶりに生み出そうしているのかも。
やっぱり自分が聴いたことのない音楽をやろうとするときが一番楽しいんですよ。インターネットやSNSのおかげで、何事も「これが正解」というパターンに素早くアクセスできるようになって、良くも悪くも音楽が家具化してると感じます。生成AIの普及で、耳障りがいいだけの音楽の価値は薄くなり「変なものが面白い」という時代になる気がします。
――自分をユニークに保つために必要なことは?
吉田:超シンプルな話ですけど、自分の心の声をもっと聞いたほうがいいと思います。母親に迷ったときとかに「どうしたらいいかな?」と聞くと、絶対に返ってくる言葉が「『キラキラしてるな』と思うほうを選びな」でした。
だから周りがどうかではなく、自分の声を聞く。自分に与えられている選択肢があったらキラキラしたほうを選ぶ。それの連続かなと思います。今はSNSがあるから、私たちの小さい頃よりも迷うと思うんですよ。でも情報が多い分だけ可能性も大きいはず。自分の声を見つけて選べたら私たちよりも、強い個性が生まれるんじゃないかな。
角田:最近、一周回ってまたジャズを聴いてるんですよ。誰も聴いたことがない音を出そうと挑戦してきた先人の演奏に感動するんです。それを聴いてると、自分も挑戦しなきゃいけないなと思う。仮に偉大なプレイヤーと比べて演奏のクオリティが低かったとしても、自分のバーを超えようとして、それを少しでも超えた瞬間に人は感動するんだなと。
――10月14日に丸の内・COTTON CLUBで予定されている「”GINGUA” RELEASE LIVE」は、どんな内容になります?
吉田:最近やっている2人編成のアレンジなども取り入れつつ、バンドセットで演奏する予定です。
角田:自分たちにとっても未知なライブになるはず。
吉田:前のような「オラオラ盛り上がれー!」ではなくて、もっとレコーディングのような自分の100%を出し切れる場にしたいですね。
――アルバム制作の予定は?
角田:まとまった作品にしていきたいと思っていますね。前作『RELOADING CITY』を出したのが、もう2018年ですし。
吉田:期待してもらっても大丈夫なはずです(笑)。聴いてほしい新曲もたくさんあります。
――ちなみにファッション雑誌は読んでましたか。
角田:雑誌は読んでましたね。特に「smart」は読むというよりも美容院やコンビニとかに「ある」って感じでした。
吉田:私も雑誌は美容院にあるもの、というイメージ。プライベートでは全然読んでいませんでした。だからファッションは独学。音楽と同じように変であればあるほどカッコいいなって思います。
以前はステージでモードな服を着て歌うことが多かったのですが、今はカッコつけない方向性になってきて、ジャージなどのシンプルで普段着に近い感じが多いですね。あと最近だと髪を切ったのは大きかった。要らない自分の半分を切って気が楽になった感覚。
角田:僕の場合、ファッションは人生の表現そのものだと思うので、時期によって変わります。最近は自分の身体や人生は借り物だと思っているので、もらいものの服や、リースした服を着て過ごすのが自然に感じてます。
吉田:着るものにストーリーがある感じ。「この服はこう、あの服はこう」と物語が増えていくのは素敵なことです。
Profile/モノンクル
吉田沙良と角田隆太によるメロウでアーバンでフューチャー・ソウルな音楽ユニット。
2011年に結成しこれまでに4枚のアルバムをリリース。詩情豊かな日本語詞の世界観と、ジャズのエッセンスを核に据えつつもジャンルレスでポップな楽曲は、音楽ファンからの高い支持を得ている。
2020年シチズン クロスシーのCMソングとして書き下ろした「Every One Minute」を皮切りに、2022年TVアニメ『ヴァニタスの手記』EDテーマ「salvation」、ソニー“Xperia 1 IV”CMソング「Higher」、シチズン クロスシーとの2度目のタイアップソングとなる「READY」などのCM楽曲制作を行い、「FUJI ROCK FESTIVAL ’15」「SUMMER SONIC 2022」をはじめとする様々な国内フェスへ出演する他、多様なジャンルのアーティストとのコラボレーションや楽曲提供、モデル、舞台など多岐に渡る活動を展開している。
2023年産休のためインターバルを挟み2024年活動再開。以前にも増して精力的に活動を広げてゆくこれからの“モノンクル”を予感させる復帰第一弾シングル「GINGUA」と共に新たなスタートを切った。
Instagram:@mononkul_official
X:@mononkul
■公演情報
「モノンクル”GINGUA” RELEASE LIVE」
2024年10月14日(月)
1st show:オープン15:30 / スタート16:30
2nd show: オープン18:30 / スタート19:30
場所:丸の内・COTTONCLUB
サポートミュージシャン:
竹之内一彌 (g)
伊吹文裕 (ds)
詳細:https://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/sp/artists/mononkvl/
取材協力/Jazz bar琥珀
ネクストジェネレーションへと走り続ける東京のシンボル“渋谷”の地に浮かぶスモーキーな秘密基地。プロフェッショナルなミュージシャンのLIVEを堪能しながらカクテル、ウイスキー、自家製の珈琲焼酎や日本酒サングリア、フードメニューなど厳選のラインナップを楽しめる。
Instagram:@kohaku.jazz
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撮影=西村満
インタビュー&文=小池直也
撮影場所協力=渋谷・Jazz bar琥珀-amber-
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この記事を書いた人
音楽家/記者。1987年生まれのゆとり第1世代、山梨出身。明治大学文学部卒で日本近代文学を専攻していた。自らもサックスプレイヤーであることから、音楽を中心としたカルチャー全般の取材に携わる。最も得意とするのはジャズやヒップホップ、R&Bなどのブラックミュージック。00年代のファッション雑誌を愛読していたこともあり、そこに掲載されうる内容の取材はほぼ対応可能です。
Website:https://smartmag.jp/
お問い合わせ:smartofficial@takarajimasha.co.jp
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