古川琴音が「本当の意味でゾッとした」ホラー映画『みなに幸あれ』。演技で体感した絶望と狂気 、そして切り開いた新境地
執筆者: ライター/石野志帆
ホラー映画撮影の舞台裏は意外と〇〇?!
体力消耗戦の側面も
――撮影は主に福岡県田川郡で行われたそうですが、ロケーション環境はいかがでしたか?
古川 作品自体が異世界の話なんですが、自分が都会生まれ都会育ちなので、地方を“異世界”としてうまくその世界感に入り込めたと思います。
――地元で活動されている俳優さんたちと共演された感想をお聞かせください。
古川 特に印象深かったのがおばあちゃん役の方でした。ほぼ演技経験がない方だったので、例えば監督に合図を出されてからセリフを言ったり、監督から「台本にない『遠かったでしょう』という言葉などを自由に付け足していいよ」とその場で言われていたりして、新鮮でした。だからおばあちゃんが本当に孫を迎えいれるような感じが、その場でできていくというのがあって。それは今まで自分が経験してきたものとは全く違うことだったので、そういう新鮮さがたくさんありました。
――新しい発見があったのですね。
古川 お芝居経験ない方と一緒にお芝居する機会は今までほぼなかったことなので、盗めることがたくさんありました。自分も“作った表現”だと浮いてしまうから、そこをあえてやらないようにニュートラルにしようと。そうしたナチュラルな状態でその環境の中に入ったときに、自分自身がどうなるかという“実験”もできたような気がします。
――初のホラー作品出演で、他の現場と違うと感じるところはありましたか?
古川 ホラーだから現場の空気がこうだというのは特になかったのですが、一番違うと思ったのは体力の消耗がすごく激しかったことです。というのも自分の役が“驚く側”の方なので、泣いて、叫んで、逃げて、怒って、びっくりして……っていう、どの感情も全部体力を使う感情で。「ホラーってこんなに体力使うんだ!」という驚きはありました。
――どのように体力を回復するように努めたのでしょうか?
古川 回復はしなかったです(笑)。順撮りで、体力が消耗していく様っていうのも自然にお芝居に生かせることだったので、ありがたく体力を使わせていただきました。でも美味しいものはたくさん用意していただいて、例えば地元の方が用意してくださった猪鍋(ししなべ)をスタッフで食べていました。
――現場の空気感はどうでしたか。
古川 現場全体の雰囲気としては、結構明るかったんですよ。「どうやって怖がらせようか」とか、「どうやって自分たちが変に見えるのか」とかを話していて。でも狙いすぎるとそれが“変なものを表現した形”になっちゃうから、そうじゃなくて「“普通に落とし込む”にはどうしたらいいか」みたいなことを、共演者の方々はすごく楽しそうに話していました。
――最後に見どころをお願いします。
古川 今までのホラーとは違って“見たくないものを見せられる”ような感覚がある映画です。自分自身もこの映画を観て初めて味わった感覚もたくさんあったので、冒険するような気持ちで観ていただければと思います。
(了)
Profile/古川琴音(ふるかわ・ことね )
1996年 10月 25日生まれ、神奈川県出身。2018年にデビュー。NHK特集ドラマ「アイドル」(22年/NHK)、連続テレビ小説「エール」(20年/NHK)、「コントが始まる」(21年/日本テレビ)や、映画『十二人の死にたい子どもたち』(19年/堤幸彦監督)、『花束みたいな恋をした』(21年/土井裕泰監督)、『偶然と想像』(21年/濱口竜介監督)、『今夜、世界からこの恋が消えても』(22年/三木孝浩監督)、『スクロール』(23年/清水康彦監督)、『雨降って、ジ・エンド。』(24年公開予定/髙橋泉監督)、『言えない秘密』(24年公開予定/河合勇人監督)など、注目作品に続々登場している。
この記事を書いた人
TV局ディレクターや心理カウンセラーを経て、心を動かす発見を伝えるライター。趣味はリアリティーショー鑑賞や食べ歩き。海外在住経験から、はじめて食べる異国料理を口にすることが喜び。ソロ活好きが高じて、居合わせた人たちの雑談から社会のトレンドをキャッチしている。
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