【ボカロMVの制作を主導する「#596ab8」インタビュー】3人の映像クリエイターチームがボカロの世界を広げる
執筆者: 編集者・ライター/志田英邦
映像から音楽を生み出す。3人の映像クリエイターが結成したユニット「#596ab8」は、そんな新しい映像スタイルに挑んでいます。はたして彼らが目指しているものは? ボカロに生まれた新潮流に迫ります。
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#596ab8とは?
3人の映像クリエイターによるユニット。ユニット名の由来は3人のSNSのアイコンのカラーコードから。仲間内では愛称的に「ごくろう、えびぱち」と呼んでいるとか。これまでにMV集2作をリリース。
藍瀬 まなみ
映像クリエイター、イラストレーター。Ado「踊」、cosMo@暴走P「初音天地開闢神話」などの映像を手がける。
いがきち
映像クリエイター、デザイナー。レゾンデートル「オチは同じ」の映像、VOCALOID6「符色」のロゴデザインを担当。
柚璃遥
映像クリエイター、デザイナー。椎乃味醂「死んでしまったんだ/可不・結月ゆかり」の映像、sekai のアルバムなどのアートワークを手がける。
――#596ab8のみなさんが映像制作を始めた経緯を教えてください。
藍瀬まなみ(以下、藍瀬) インターネット環境を手に入れた中学2、3年生の頃からボカロの動画を見ていて、クリエイターの△○□×(みわ しいば)さんが作った映像にすごく感銘を受けたんです。△○□×さんのホームページを見ると、動画の作り方が上がっていたので、自分でもやってみたいなと思って、自分でイラストを描いて、動画を作り始めました。
いがきち 高校2年生の頃に友人からゲーム実況が面白いよと教えてもらって、ニコニコ動画を見始めました。そこでボカロとも出会ったのですが、学生時代にバラエティ系のYouTuber活動を始めていく中で長く残るものを作りたいと思うようになったこともあって、2020年頃から自分で動画を作るようになりました。最初はイラストを描いて動画を作っていたんです。実写の写真を加工したり、段々といろいろな表現を追求していくうちに、現在のスタイルになりました。
柚璃遥(以下、柚璃) 僕は中学3年生頃に姉の影響でボカロを聴き始めて、KEMU VOXXの作品をきっかけに映像をやりたいなと思ったんです。当時からパソコンを使っていたので、すぐに調べて、動画を作るようになりました。それで数年やっていたんですが、ボカロPから依頼を受けて動画を作るのではなくて、自分でも作品を作りたいなと思い始めたんです。そして心機一転、柚璃遥名義で動画を作るようになりました。
――#596ab8の活動を始めたきっかけは?
いがきち ボカロの音楽活動の中には、即売会というイベントがあって、お祭りみたいな感じがあるんです。そこで知り合う方もいるし、一年に一度そこでしか会えない人もいる。そこにボカロPや作曲家が出店するんですね。僕らはどちらかというと買う側として参加していたんですが、そこに自分たちも出店してみたいよなと話をするようになったんです。そこで映像クリエイターとして活動している3人で何かを作ってみようと。それが始まりでしたね。
藍瀬 MVの主役は音楽なので、MVクリエイターはやはり音楽ありきでの活動になります。もちろんそれが楽しくて続けているのですが、このユニットでは初めて、好きな人に作曲をお願いして、好きな人にイラストをお願いして、自分の作品を作ることができた。自分発信の作品作りはめちゃくちゃ楽しかったですね。
柚璃 僕は映像クリエイターの友人が少なかったので、2人と一緒に動画を作れることがすごく新鮮でした。しかも「好きなことをやってみよう」と誘ってもらえたのも嬉しくて。2人の作風からも刺激を受けました。
――これまでにみなさんはボーカロイドMV集を発表されています。どのように作っているのでしょうか。
いがきち MV集はこれまでに2作発表したんですが、どちらも4曲収録されていて、それぞれの個人作品が3曲分、3人の合作が1曲収録されています。「dissolve」をテーマにした第1弾のMV集では、ボカロPの香椎モイミさんが楽曲の1番、2番、3番で構成を変えてくださったので、3人それぞれが担当のパートを持って、動画でバチバチに作り込みました。「Trust」をテーマにしたMV集第2弾の合作では分業をしています。藍瀬は絵コンテが得意なので、物語を考えてシーンやカットの指示書を描いて。柚璃は抽象的な表現や光の使い方が上手なので、そういう表現を担当して。僕は実写素材や激しいエフェクトを付けて、細かい最後の調整を行って。3人のそれぞれ得意なところを生かしたひとつの映像を作っています。
――今後、#596ab8の活動でやってみたいことは?
いがきち 3人で話し合ったことでいうと、MV集の第3弾では3人のラジオ番組を収録したり、動画のメイキングのブレイクダウン(制作工程がわかる動画)を入れたいなと考えています。個人的には他のクリエイターさんと密にコミュニケーションを取って、映像作家発信の作品の純度を高めていきたいです。
藍瀬 私も映像クリエイターのメイキングを見て、動画を作り始めたので、自分の作品を見た人が「自分も作ってみたいな」と創作を始めてくれたらいいなと思うんです。動画制作の面白さを伝えていきたいですね。個人的には、作品作りに参加してくれたクリエイターさんがみんな喜んでくれる映像を作っていきたいです。
柚璃 僕はもっと#596ab8として一緒に作品を作っていきたいですね。3人でもっといい作品を作っていきたいと思っています。個人としてはいま取り入れている3DCG、実写以外にももっと色々な新しい要素を導入した映像を作っていきたいです。
3人の個性が際立つ楽曲
「メルティトリオクイズ」
MV集vol.1に収録されている楽曲。作詞・作曲は香椎モイミ、イラストレーターを檀上大空が担当。鏡音リン、鏡音レン、初音ミクが歌唱。
藍瀬まなみパート
いがきちパート
柚璃遥パート
\INFORMATION/
イラストレーターの魅力
「ボカコレ2023夏」が
2023年8月に開催決定!
引き立てる「藍瀬 まなみパート」、様々な素材を組み合わせて、インパクトのある動画を作り上げる「いがきちパート」、繊細で美しい画面と歌詞のイメージを抽象的に表現する「柚璃遥パート」。
「ボカコレ2023夏」
2023年8月4日(金)~7日(月)
公式サイト:https://vocaloid-collection.jp/
Interview&Text_HIDEKUNI SHIDA
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この記事を書いた人
ゲームを作ったり、小説を書いたり、本を作るお手伝いなどいろいろ。日々さまざまな制作現場にお邪魔して面白いことを探しております。美味しいカレーと極上のうどんを探し求めつつ。
Instagram:@hidekunishida
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お問い合わせ:smartofficial@takarajimasha.co.jp
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