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【ボカロP伊根インタビュー】予測不能なメロディに夢中!「SF小説のような音楽の作り方をしたい」

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ボカロPとして活動を始めて、すぐにメジャーシーンで活躍。予測不能のメロディで多くのリスナーが夢中になっているボカロP伊根さんが、1stアルバムについて語ってくれた!

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この記事は2022年smart11月号に掲載した記事を再編集したもので、記載した情報もその時点のものです。

自分のために作っていたものが世界に届く

――伊根さんがボカロやボカロ曲と出会ったのはいつごろですか。
伊根 最初に出会ったのは、小学生のころだったと思います。当時遊んでいたニンテンドーDSに「うごくメモ帳」というソフトが入っていて、ボカロ曲を使ったアニメ作品が二次創作として上がっていたんです。人の声じゃない歌声が気になって、その源流となるニコニコ動画でボカロ曲を聴きはじめたのがきっかけですね。最初に聴いたのはトラボルタさんが手がけた、鏡音リンの「ココロ」という曲でした。

――ボカロPとして活動をはじめた経緯をお聞かせください。
伊根 中学生のころに最初にギターを買ったんです。でもバンド活動をするわけでもなく、ギターで好きな曲を模倣してアレンジするという、実験のような感じで弾いていたんですね。高校生ぐらいになったときに親が「これで音楽が作れるらしいよ」とDAW(音楽作成ツール)を買ってくれて。それを使って、音楽を作るようになりました。そのうちに「UTAU」っていう音声合成ツールを使って歌を入れるようになりました。そうやって作った曲は自分で聴いて満足するためのものだったんですけど、コロナ禍になって外の世界とつながりが欲しくなって。たまたま個人的に満足できる曲ができたので、ニコニコ動画に投稿したんです。

――楽曲を発表してみて反響や手ごたえはいかがでしたか。
伊根 特定の方がめちゃくちゃほめてくださって、みんなすごく優しいんだなと(笑)。自分がやったことがきっかけで、何かが大きく変わる経験があまりなかったのですごく新鮮でした。

――楽曲はどのようなスタイルでお作りになっていますか。
伊根 基本的には独学なんですが、作り方にセオリーは定まっていなくて。口ずさんだり、手癖があるギターで弾いたり、弾き慣れていないピアノで自分の予想を裏切るようなフレーズを探したりして。毎回、実験をしているような気持ちで楽曲を作っています。僕の楽曲は、最初の視聴者が僕なので、まず僕を裏切らないと感動できなくて進まないんですよね。それでいろいろな方法を試しているのかもしれません。

――毎回、自分の予測を裏切るような曲を作ろうとしているんですね。
伊根 僕は小さいころに科学者になりたくて、科学やSF小説が好きだったんです。特にSF小説は論理的なものを無機質に積み上げていくことで、最後に大きな感情を湧き起こしてくれる。音楽もそういう作り方ができたらいいなと思っていて。夢をモチーフにしたり、既存曲をすごく小さなボリュームで聴いて新しい曲を発想したり、いろいろな実験をして曲を作っているところがあります。鉱脈を掘る作業員のひとり、みたいな感じがありますね。

――アーティストというよりサイエンティストみたいな考え方ですね。
伊根 そうですね。科学者って自然の構造を解明して、法則や仕組みを見つけ出す存在じゃないですか。みんなに向けていろいろな「不可解」を説明する役割というか。「こんなのあったよ」という報告として曲を発表している気分です。

――まもなく1stアルバム「Direct-View AR」がリリースされます。こちらはどんなアルバムなんでしょうか。
伊根 タイトルの「AR」って日本語では「拡張現実」という意味で。フィクションである夢物語や幻覚を、現実にあるものとして「体感」できるものにしたい。フィクションに物質と同じ尊厳を与えたいなと思って、このタイトルにしたんです。今回は、まず小説のアイデアがあって、その内容に合わせて作った曲もあるんです。

――小説がお好きなんですね。
伊根 音楽と同様、文章を書くことが好きで。小中学校のころから妄想癖がすごくて、最終回を迎えたアニメやマンガの別の終わり方を描いたり、自分の考える理想の終わり方を考えたりしていたんですね。小説家ではカート・ヴォガネットさんや中国SF『三体』を書かれた劉慈欣さんが好きです。

――今後の伊根さんの目標や野望はありますか。
伊根 今後はボカロじゃなく、誰か歌を歌える人といっしょに活動してみたいなという気持ちはあるかもしれません。自分とは違う人と活動に挑戦してみたいなという気持ちがあります。個人的な夢としては、アニメやゲームの脚本を作って、主題歌まで作ってみたいなと思っています。

Information
伊根さんってどういう曲を作っているの?

伊根さんの特徴は多彩な作風。伊根さんの1stアルバム『Direct-View AR』には、ニコニコ動画で初の殿堂入りとなった「ルーセ」や人気曲「イデアル」を収録しており、そのメロディの豊かさを感じられるだろう。また、Adoの1stアルバム『狂言』収録の「過学習」やKing & Princeの10thシングル「TraceTrace」も彼が作詞、作曲を担当している楽曲。その活動の幅広さも注目!

伊根1st Album『Direct-View AR』発売中

【ボカロP伊根インタビュー】予測不能なメロディに夢中!「SF小説のような音楽の作り方をしたい」

伊根『Direct-View AR』/U&R recordsより発売中/¥3,850

<同梱内容>
・CD1枚組(全15曲収録、紙ジャケット仕様)
・歌詞ブックレット
・挿絵入り小説『HiPARは誰』(脚本:伊根、イラスト:薬屋)
・特製BOX仕様
※仕様・内容は変更となる可能性がございます

伊根さんの小説も読める!

【ボカロP伊根インタビュー】予測不能なメロディに夢中!「SF小説のような音楽の作り方をしたい」

Ado『 狂言』収録曲に伊根が詞曲/編曲の「過学習」が収録

【ボカロP伊根インタビュー】予測不能なメロディに夢中!「SF小説のような音楽の作り方をしたい」

© 2022 UNIVERSAL MUSIC LLC.

【ボカロP伊根インタビュー】予測不能なメロディに夢中!「SF小説のような音楽の作り方をしたい」

Ado『 狂言』/ユニバーサルミュージックより発売中/[CDのみ]¥2,750

Profile/伊根
2020年「回避性パーソナリティ」でボカロP デビュー。13作目の「ルーセ」でニコニコ動画での殿堂入りを果たす。Adoや栗林みな実、King & Princeなどのアーティストに楽曲提供するなど、多彩な活動を展開している。
伊根公式Twitter

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  • ボカロP伊根
  • Ado『 狂言』収録曲「過学習」(伊根 詞曲/編曲)
  • Ado『 狂言』
  • 伊根1st Album 『Direct-View AR』
  • 伊根1st Album 『Direct-View AR』に同梱されている挿絵入り小説『HiPARは誰』

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