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柄本佑が体現する“ノンストレス”な生き方。「ひらがなで一番好きなのが『ゆ』という文字」【Amazon Originalドラマ『モダンラブ・東京』インタビュー後編】

柄本佑が体現する“ノンストレス”な生き方。「ひらがなで一番好きなのが『ゆ』という文字」【Amazon Originalドラマ『モダンラブ・東京』インタビュー後編】


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柄本佑が体現する“ノンストレス”な生き方。「ひらがなで一番好きなのが『ゆ』という文字」【Amazon Originalドラマ『モダンラブ・東京』インタビュー後編】

ニューヨーク・タイムズ紙に掲載されたコラムをもとに、愛にまつわる物語を描いたAmazon Originalドラマ『モダンラブ』。その東京版となる『モダンラブ・東京』が今日10月21日から配信が開始された。一話完結型のオムニバス形式の作品の第2話に登場するのが、今をときめく俳優・柄本佑さん。様々な話題作に立て続けに出演し、その存在感を際立たせている存在でもある柄本さんが、東京の美しい景色を背景に紡がれていく『モダンラブ・東京』の作品の魅力を語り尽くします。柄本佑という類まれなる個性に焦点を当てたロングインタビューだからこそ語られる言葉は必読。柄本さんのインタビューは前編、後編の2回に分けてお届けします。今回はインタビュー後編をお届け。

前編を読む>>“生粋の江戸っ子”柄本佑が考える東京の象徴は「神田まつや」【Amazon Originalドラマ『モダンラブ・東京』インタビュー前編】

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セックスレスという夫婦間の
問題に一筋の希望を灯す物語

――この物語はニューヨーク・タイムズ紙に掲載されたコラムをもとに描かれていますが、もとになったコラムでは、夫婦の関係性が続いていくような描写は一切なくて、東京版のドラマのためにアレンジされたストーリーだと伺いしました。本作品は元記事と違う、前向きなエンディングですが、柄本さんと榮倉さんの存在感と関係性があるからこそ、リアルに感じられたのではないかと思いました。

「コラムでは違うラストだったことを今、知りました(笑)。そういったところでいうと、僕らは10代の頃から共演をしているっていうのが非常に大きいのかもしれません。ここ最近思うんですけど、あの頃に出会っている人っていうのは、20歳を過ぎてから出会う人よりも仲間意識が強いんですよね。榮倉さんもその一人で共演してから時間が空こうと、最初に出会った感覚のままで変化しないんです。だから、そういった部分も今お話されていたことに作用しているんだと思います」

――納得です。

「ただ、その一番大きな要因は、なんといっても廣木さんの演出だから。廣木さんの演出って男と女、男と男、女と女、どんな関係性であっても表面的な部分ではなく、人と人との間に何かが生まれるまでを徹底して練習するし、段取りをしているんですね。それで何かが生まれてこないと基本的にカメラを回さない。セッティングが終わっていても、その空気感が生まれるまでは撮影は始まらないんです。だから、今おっしゃったことの一番の要因はあの廣木隆一という監督の演出が大きい気がします。そしてそこには、廣木さんが見ているという緊張感もあるけど、安心感を感じながら演じられている僕らもいて。僕らが演じているのは廣木さんの世界で、『廣木さんがOKと言えば、OKなんだな』っていう監督と役者の信頼関係もあるんですよね」

――作品を拝見してセックスレスがどう改善されるかということはどうでもよくて、セックスレスという今、話題を集めている問題に対しての一つの答えとなった作品ではないかと思ったんです。こういう形の関係性があってもいいのではないかという希望を指し示しているというか。

柄本 佑(以下、柄本)「そう聞くと、僕は気にも留めていなかったのですが、衣装合わせのときに廣木さんが『(柄本さんが演じる)この役、難しいな』っておっしゃっていたんです(笑)。そのときに榮倉さんと本読み(実際に出演者が台本に書かれているセリフを声に出して読む稽古)をしたんです。このドラマ全体に関しても、廣木さんが難しいっておっしゃっていたことをさらに思い出しました(笑)」

――難しい役を自覚なく演じていらっしゃったんですね(笑)。

柄本「僕ね、いつもそうなんですよ。この作品ではないですが、作品ができあがってみたら『あれ?僕が演じていたの悪役だった?』みたいなこともあって。気がついたら主人公にめちゃくちゃ恨まれていたこともありました(笑)。だから、僕は(物語の)先読みみたいなことはできないんです。やってみながら、こんなことなのかなっていうそのときの感覚と、監督の演出で仕上がっていくわけで。極端な話、台本に書かれたセリフをなんの解釈もなく棒読みでペラペラ言える状態で現場に行って、監督の演出で感情を動かしていくんですね。だから、廣木さんが言っていたことを、今やっと思い出したんだと思います(笑)」

――衣装合わせで本読みをした際も、ストーリーは頭に入っているんですよね?

柄本「はい。でも理解するのは撮影が始まってからなんですよね。うちの母ちゃん(故・角替和枝さん)が『セリフを喋るということは解釈の始まりだ』って言っていたんですね。つまり、『セリフを喋ることが解釈だから、それ以上の解釈は必要ない』ということを言っていて。だからこそ『セリフを喋るのはとても難しくて、解釈せずに喋ることは不可能で、解釈することでその作品の持つ魅力がすべて削ぎ落とされていく』って言っていて。母ちゃんは小説が好きだったのですが、『(セリフもないのに読者が読み解くことができる)小説というものはすごい』ということをよく言っていました。その母ちゃんの言葉が僕の根底にあるんだと思います。だから始まるまで解釈をしない。始まってみたらこうなっちゃった、ということをいかに許容していくかという作業なんだと思います」

――奥深いです。

柄本「その上で、どこを抜き取るのかは監督の作業であって。だからドラマの役柄を解釈するとかどう咀嚼(そしゃく)するかとかは、僕の中では自分の仕事に当てはまらない気がしているんです。自分の仕事は、とにかくセリフをべらぼうに覚えて、現場に行ってそのセリフを言うということ。極論、それしかないって思っていたので、監督の『難しいな』って言葉を新鮮に感じたという次第です」

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柄本 佑という人物が
今、時代に愛される理由とは?

――この作品でも、別れた妻を付かず離れずな距離感で見守っていた柄本さんですが、柄本さんの演じる役柄だけでなくその人柄が、世の女性を虜(とりこ)にしています。柄本さんの思う女性にモテる秘訣を教えて下さい。

柄本「モテるということについてあまり考えたことはないし、僕自身、結婚して11年目で子供もいるので、モテる必要もないのでわからないのですが……」

――モテなくてもいいという姿勢が逆に女性がハマるポイントなのかもしれませんね。

柄本「ガツガツしないという部分なんですかね。それはあるかもしれないですね」

――廣木監督が、柄本さんはノンストレスな方だとお話していたと関係者の方からお伺いしました。

柄本「人にストレスを与えないということは大切にしていますかね。(人にストレスを与えると)自分のストレスになりますし。自分がストレスなくいるためには、人にもストレスを与えないことにつながるから、ひいては自分のためなんですけどね。それでいうと、榮倉さんもノンストレスな方です。のんびり気ままっていうのがいいんです。僕ね、ひらがなで一番好きなのが『ゆ』という文字なんです。なんか丸くて柔らかくていいでしょ? そんなふうにいられたらいいですよね。温泉の暖簾(のれん)を見ると心が和らぎますよね。だから『ゆ』みたいにいるのがいいんじゃないですかね」

――夫婦円満の秘訣を教えて下さい。

柄本「うちは割と夫婦円満だと思います。ただ、秘訣を考え始めると結局、窮屈(きゅうくつ)になっていく気がするんですよね。だから、円満でいようってあまり意識しすぎず、お互い無理をしないってことが大切なのかな。夫婦円満みたいなことを意識し始めた途端、円満じゃなくなる気がするので。うまくやろうっていうのは勝手に自分が思ってしまうことでもあるので、必要以上にその方向に持っていこうとしないほうがいい。いろんな出来事があるので、その流れに逆らわず身を任すのがいいと思うんです。とは言え、流れに逆行しなければならないこともあるわけで。お互いが無理しないって言っていても、無理しなければいけないことはあるわけだから、必要以上に考えすぎないほうがいいと思います」

――柄本さんのバスルームにも温泉みたいな『ゆ』の暖簾がかかっていそうです。

柄本「うちの場合はね、洗面所に夫婦のハーフ判(1枚の写真の大きさで2枚プリントしたもの)で撮った写真を飾っています。まだ付き合いたての頃に、『小便するな』っていう張り紙を見つけて、上は妻と下は僕がその張り紙と一緒に写っているんです」

――毎日、おトイレに行くたびに当時を思い出したり?

柄本「当時を思い出すというより、ハーフ判で撮っていたからたまたまその2枚が組になっているっていうのがね、思い入れがあるというか(笑)。2人して何をやっているんだっていうね(笑)」

――10代20代の柄本さんは演劇や写真に出会っていろいろな刺激を受けていたわけですが、その年齢を生きているsmart読者へアドバイスをお願いします。

柄本「僕は小学生の頃から映画が好きでずっと映画監督になるのが夢でした。中高生の10代は映画館に通い詰めていたり、この仕事を始めたり、自分の周りを映画で固めてきたんですね。結果、自分が好きなことや好きな共通項がある人とばかり接してきたのですが、今、振り返ると、もっと多角的な人と出会っても良かったんじゃないかって思うんです。共通項がある人とばかり一緒にいるのではなく、自分が好きじゃないことを好きな人と話をしてみたりとか、そういうことで人間としての引き出しみたいなものが増えていくような気がする。僕も、あの時期、そういう人たちと出会ってたら、今よりもっと多分いろんな引き出しがあっただろうなっていう思いも含め、いろんな人と会って話をすることが大切かなって思います。僕の反省と後悔を、今の10代、20代のsmart読者に担ってもらいたい。よろしくお願いします!」

『モダンラブ・東京~さまざまな愛の形~
10月21日より、Prime Videoにて世界同時独占配信
ニューヨーク・タイムズ紙に掲載されたコラムを基に、愛にまつわる物語を描いたAmazon Original『モダンラブ』。2019年にアメリカで制作され世界中で大きな話題を呼んだ同作が、舞台を東京に移し『モダンラブ・東京~さまざまな愛の形~』として新たな物語を紡ぐ。映画界の第一線で活躍する監督たちと豪華俳優陣が集結したオムニバス形式の7つの物語では、忘れかけていた大人の恋心、息子や母親への愛、国境を越えて芽生える愛など、さまざまな“愛”のカタチが描かれるオムニバスドラマ。

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Profile/柄本 佑
えもと・たすく●俳優。東京都出身。2001年、映画『美しい夏キリシマ』で主演デビュー。2019年、映画『きみの鳥はうたえる』(三宅唱監督)、『素敵なダイナマイトスキャンダル』(冨永昌敬監督)、『ポルトの恋人たち-時の記憶-』(舩橋淳)他でキネマ旬報ベスト・テン主演男優賞、毎日映画コンクール男優主演賞などを受賞。2020年に『アルキメデスの大戦』(山崎貴監督)で日本アカデミー賞助演男優賞を受賞。近年の出演作にドラマ「心の傷を癒やすと言うこと」(‘20/NHK)、「知らなくていいこと」(‘20/NTV)、「天国と地獄」(‘21/TBS)、「ドクターホワイト」(‘22/CX)、「空白を満たしなさい」(‘22/NHK)、「初恋の悪魔」(‘22/NTV)、映画『火口のふたり』(‘19/荒井晴彦監督)、『痛くない死に方』(‘21/高橋伴明監督)、『先生、私の隣に座って頂けませんか?』(‘21/堀江貴大監督)、『真夜中乙女目戦争』(‘22/二宮健監督)、『殺すな』(‘22/井上昭監督)、『ハケンアニメ!』(‘22/吉野耕平監督)、『カラダ探し』(‘22/羽住英一郎監督)など。公開待機作に『シン・仮面ライダー』(‘23/庵野秀明監督)がある。また自身の監督作品『ippo』(短編集)が1月7日より東京・ユーロスペース他で公開予定。
柄本 佑公式Twitter
柄本 佑公式HP

衣装=サスクワァッチファブリックス
問い合わせ先 https://sasquatchfabrix.com

写真=細見裕美[go relax E more]
スタイリスト= 道雄
ヘアメイク=星野加奈子
インタビュー・文=佐藤玲美

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