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『普通が好き』なAKB48村山彩希の普通じゃない世界観が楽しめる写真集の中身とは?【インタビュー】

AKB48に入って今年で10年。25歳になった村山彩希(ゆいり)さんが初となる写真集を発売。そのタイトルは『普通が好き』。写真集のタイトルとしては普通ではない。「写真を撮られることが苦手」と話す彼女がこだわった写真集に対する思いから、25歳になって改めて感じたアイドルという生き方との向き合い方まで、今の気持ちをギュッと凝縮してお届けします!

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アイドルの王道みたいな
写真集は作りたくない!

――最初に出版社から写真集のお誘いが来たときの率直な気持ちを教えて下さい。

村山彩希(以下、村山) 私のアイドル人生の中では写真集を出すキャラではないって思っていたので、すごく想定外の出来事でした。それに、今まで写真集を出してきた先輩たちは卒業のような大きな節目で作ることが多かったので、「今、私が作っていいのか」という気持ちもありました。でも、王道のアイドルの写真集ではなくて、自分なりの表現ができる場所としてなら出したいなって思ってはいたんです。なので、色々と話し合いを重ねる中で、これなら自分が表現したいことができるのではないかなと思いました。

――写真集のコンセプトなどはどのように決まっていったのでしょうか?

村山 最初の打ち合わせのときに、自分が譲れないものはまず先に伝えておこうと思い、そのときにお伝えしたのが「(アイドルの)王道ではない写真集が作りたい」ということでした。

――写真集に収録されているインタビューの中では「変なアイドル写真集」という言葉を使っていたのが印象的でした。

村山 参考資料として過去の先輩や、他のアイドルの方々の写真集を見させていただいて、どれも可愛いけど、“彼女感”みたいな雰囲気には、違和感があって(笑)。私がそれをやっても面白くないなって。だったら、逆に作り手側のほうでがっつり作り込んだ世界観を見せたいなって思ったんです。王道の青い海、白い砂浜的なものもありつつ、アイドルの写真集にはなかなかない世界観が表現できたらいいなって。なので、メイクや衣装にもこだわりたいなって思って作りました。

村山彩希

――今までの雰囲気とは違う衣装を着こなしている姿にも魅了されました。かなり、ご自身の意見もあったのですか?

村山 スタイリストの佐野夏水さんは、今回初めましての方だったのですが、顔合わせのときに「変わったデザインの服が好きです」っていう話をしたら意気投合しちゃいまして(笑)。自分の好みの服の写真を参考にお送りしたら、衣装合わせのときに「まさにそれです!!」っていう好みの服を持ってきてくださったので、そのあとは「全ておまかせします」と言っちゃったくらい、信頼していました。

――フォトグラファーの桑島(智輝)さんも今回が初めてですよね? 写真集のインタビューの中では、『隠し撮りみたいに写真を撮って欲しい』というオーダーをされたと書かれていましたが、すごく自然体の写真がいっぱいあったのが印象的でした。

村山 元々、今回のスタッフさんの中で、私からお声がけしたのが前からお付き合いのあるヘアメイクの双木(昭夫)さんだけだったんです。その双木さんが、推薦(すいせん)してくださったのが今回のメンバーで。桑島さんもその中のお一人だったのですが、事前にインスタグラムや安達祐実さんの写真集などを見て、この方に今の私を撮っていただきたいと思いました。

実際の撮影では、元々写真を撮られることに苦手意識を持っていた私がカメラを意識せずに楽しめるように、スタッフさん同士で事前にお話して取り計らってくださったみたいで。撮影中は皆さんが常に気を遣(つか)ってくださって私が好きなアーティストの曲をかけてくれたり、私がYouTubeをやっているので、動画を回している最中は、YouTubeでも使えるような著作権フリーの(夏ならではの)怖い音楽をかけてくれたり(笑)。そんなみなさんの気遣いもあって、気がついたら自然な笑顔をカメラに向けていた気がします。

村山彩希

――自然に距離が近づいていったんですね。

村山 撮影の1日目の夜、私は早めに部屋に戻ったのですが、スタッフさん同士で飲み会があったらしくて。2日目の朝にヘアメイクをしている最中に双木さんから(桑島さんが)すごく褒(ほ)めていたよ、っていう話をお伺いしたのも嬉しかったですね。2日目の夕食はみんなでご飯屋さんに行ったのですが、そこで、みんなで踊り出すっていう不思議な現象が起きて(笑)。

そのときに、皆さんプロの方々だけど、私のような変な感性に共感してくださる部分を持っている方々なんじゃないかと(笑)。仕事をするときはすごい集中力だけど、力を抜くときにはこんなに楽しめちゃうんだってところにさらに共感して、完全に「このメンバーならいいものが作れる」という確信に変わっていた気がします。先に写真集を出した先輩や友達からは「一緒に作るメンバーが大切だよ」って聞いていたので、私は恵まれた環境で最初の写真集が作れてよかったなと改めて思いました。あんまりポーズや表情を決め込まれて求められると、萎縮(いしゅく)してしまったかもって思うので。

――10年間アイドルとして活動されてきて、写真を撮られることは多々あったと思うのですが、なぜそもそも苦手意識を持ってしまったのでしょうか?

村山 昔はすごく好きだったんです。私はアイドルになる前から子役として活動していたり、学校でも人と違うことをして目立ちたいタイプだったんです。でも、AKBに入ったところから、一周回って自分に自信をなくしてしまったのかも。カメラを気にせずやっていたほうが自分らしくいられるというか、人の目を気にするようになってしまいました。カメラを向けられると萎縮してしまう自分もあまり好きではないですし。

――元々は、一人で自由奔放(ほんぽう)に動けていたのが、グループに入ると、周りの人の動きも気にしてしまったり……というのがあったのでしょうか?

村山 人と比べられて評価されることが多い環境になったので、それを考えすぎた結果、カメラを向けられないほうが自分らしくいられるのではないかなって。

普通が好き

村山彩希1st写真集『普通が好き』より

普通が好き

村山彩希1st写真集『普通が好き』より

『普通じゃない』タイトルは
秋元康さんならではの表現

――そして、『普通が好き』というタイトルも、引っかかりました! 秋元康さんも帯に『普通にこそしあわせが存在することを(村山さんは)知っている』とコメントを寄せていらっしゃいます。

村山 タイトルは秋元先生に決めていただきました。最初に10個候補を送っていただき、その中から決めたのは私なのですが、10通りの言葉の中から、まずは2つに絞って、さらに一番当たり障りのないものをタイトルに置いたほうが、逆に皆さんに引っかかっていただけるのではないかと。

――まんまと引っかかりました。

村山 あとは『普通が好き』っていう、短くて不思議な言葉がいいな、って。中身を見ていただいて、全然普通じゃないじゃん、っていうギャップも狙いつつの意味深なタイトルになるのではないかって。

――それでいて、村山さんの普通はこうなのか、という発見もあるような……。

村山 私の中に、自分の(アイドルとしての)活動や仕事に対しては“変”って言われたいのですが、人としては、秋元先生が帯に書いてくれたように、日常にあるものをしあわせだと感じられる人でいたいって思いがあるので、この言葉が今の自分に合っているのかなって。

――10通りもあったとなると、秋元先生の他のタイトル案も気になります。

村山 それこそ、『僕の女神』など。ほかに『カメラに映らない自分』というのがあって、本当はそのタイトルが一番自分の中ではしっくりきたのですが、でも、今回は私の写真集だし、私が写真集に出してもいいような自分を提供しているものだったので……。そのバランスも考えて『普通』という言葉がいいのではないかと思って選びました。

――深い……。そして、今回は沖縄本島の中心にある、恩納村(おんなそん)や今帰仁(なきじん)でロケをされたそうですが、訪れたのは初めてだったそうですね?

村山 元々は高知県の古い町並みで撮影したいと思っていました。スタッフさんからロケ地候補を提案したいただいたときも、沖縄は王道の場所だなと思って最初に候補から外したんです。でもスタッフさんから、沖縄って日本の中でも独特な場所で王道ではない場所でもあるんだよって言われて。私の中では、廃墟みたいな場所で撮りたいというイメージが元々あったのですが、そういう場所もあるよって言われて、(王道ではない)沖縄に行きたいっていう気持ちになりました。本当に私のイメージに合った場所がたくさんあって。その中でもホテルライカムでの撮影は、すごく印象に残っています。

――ホテルライカムは、1960年代に建てられた昭和の薫りがするホテルですよね。

村山 私は「ギャップがあるね」っていう言葉を言っていただくことがすごく嬉しくて。だから、令和の時代に昭和の薫りがする場所で撮影できたのがすごく嬉しかったです。

普通が好き

村山彩希1st写真集『普通が好き』より

普通が好き

村山彩希1st写真集『普通が好き』より

グループの中では出せない私を
この写真集に詰め込みました

――普段は『可愛い』担当の村山さんのかっこいい表情がステキでした。

村山 10代の頃になりたかったのは、米倉涼子さんのようなかっこいい人。でも、童顔(どうがん)のせいか、グループの中では可愛い担当になることが多くて、今までその理想を叶えられるチャンスがなくて。だからこそ、今までの自分との振り幅というか、ギャップがこの写真集で表現できたらいいなって思いました。

――その一方で、10代のような制服の写真も素敵でした。25歳とは思えない、ピュアな雰囲気が印象的です。

村山 制服は最初、着る予定はなかったんです。だけど「似合うと思う」ってスタイリストさんが用意してくれて。AKBのメンバーからも一番評判が良くて「まだまだ(25歳でも)制服、いけますね」ってお褒めの言葉をいただきました(笑)。

――アイドル写真集の王道である水着やランジェリーも素敵でした。制服とは対象的に大人っぽい雰囲気でしたね。

村山 ラヴィジュールさんで今、アンバサダーを務めさせていただいているので、ラヴィジュールさんのランジェリーを着ました。何を選んでも大人っぽくなるデザインがステキなのですが、やはり下着撮影は恥ずかしかったです。でも、その気持ちが出すぎてしまうと変な生々しさが出ちゃうのではないかというのも不安で。そのせいか下着の撮影のときは男性のスタッフさんが、部屋の隅っこに固まってあまり見ないようにしてくれて(笑)。みなさんが撮影しやすいようにといろいろ気を遣ってくださっているのを見て、不安も取り払われた気がしました。

――大人っぽさとピュアな少女性という、その両面を拝見して、ご本人の『ほんとの性格』はどっちなの?って知りたくなります。

村山 (笑)。本当の性格はAKBに入ってから二転三転しておりまして(笑)。昔を知っている同級生には、今の自分に対して驚かれることが多いです。昔の私はすごく活発で男勝(まさ)りで男の子の同級生とサッカーをして遊んでいるような元気っ子だったんですけど、年々すごくおとなしくなってしまいまして(笑)。

――10年間アイドルグループで活動していたら、最初は一番年下でも、今では先輩になるので、立場も変わってしまうこともありますもんね。

村山 元々末っ子で、末っ子気質なので、全力で先輩に甘えたい自分もいるんですけど、10年もいると空気も読めるようになってしまったというか(笑)。

――悟ってしまった部分もあったんですね。でも、今回の写真集は村山さんが主役です。今の自分、求められている自分、なりたい自分を表現したことで、気がついたことはどんなことでしょうか?

村山 25年間生きていても、まだまだ未経験なことが多くて、写真集も含め私は色んな経験をさせてもらえているなって思いました。あとは、写真集を通して、メイクと衣装だけでこんなに自分自身が変わることができるんだって思えたことが大きな発見でした。写真集は新しい自分に出会うきっかけを作ってくれるものだったんだなと改めて感じました。そう考えると、これからも今まで知らなかった自分に会うために、苦手意識があった写真集にチャレンジしたように、自分に少し負荷をかけることも大切なんだなって思っています。

――沖縄のロケでは郷土料理も堪能されたそうですが、他に印象に残っている食べ物は?

村山 泊まっているホテルの近くに有名なパンケーキ屋さんがあると聞いて、3日目の朝、撮影前にみんなで食べに行きました。一応撮影前なので、少し量は減らしたりと気を遣いつつ……。睡眠時間を削ってでも、パンケーキを食べたい気持ちを優先しようって思ったんです。ちなみに表紙になった写真も3日目に撮影したのですが、今見ると、ちょっとお腹いっぱいっていう表情をしているなって思ったりします(笑)。

――いえいえ、教えていただかなかったら全然わからないです(笑)。カバーの写真はご自身でお決めになったのですか?

村山 何枚か私たちでカバー候補の写真を選んで、その中から秋元先生に選んでいただきました。でも、この写真になったときは私もちょっと驚いたんです。普段の私とも全然違うので、この写真を選んでいただいたことによってAKBのメンバーという固定概念から離れて、村山彩希個人としての写真集なんだっていうことを改めて実感しました。また、普通じゃないタイトルや帯の言葉も含めて、秋元先生も私のそういった思いをわかっていただけていると感じましたし、いつも見守ってくださっているんだなと感謝の気持ちでいっぱいになりました。

普通が好き

村山彩希1st写真集『普通が好き』より

コロナ禍を経験することで
アイドルとしての自分と
改めて向き合うきっかけになった

――今回AKBに入って10年、25歳での写真集初挑戦となりましたが、今後新たにチャレンジしたいことはありましたか?

村山 実は今、私の中で歌に対する考え方が変わってきている最中で。AKB48グループの中で歌が上手い子を決める歌唱力No.1決定戦に今年初めて出場しました。元々、歌は大好きなのですが、出場が決まってから歌と今まで以上に真剣に向かい合ったことで、人を感動させることができる歌ってすごいなと改めて感じました。歌の素晴らしさを伝えられるのはステージに立つ側ならではだと思うので、聴いていただく人の心にもっと届くように改めて歌詞の意味を考えたり、演奏してくれるバンドの楽器の大切さに気がついたり。今、自分自身でもなにか楽器を始めたいなと思っています。

――元々、順位をつけられるのがあまり好きではなく総選挙なども辞退されている村山さんですが、歌に関してはNo.1になりたいという気持ちがあったのでしょうか?

村山 今まではずっと劇場での活動にこだわってきたのですが、この1年で劇場だけじゃなくもっと広い世界を見てみようと思ったことがきっかけです。歌唱力決定戦もそうですが、今年は初めて舞台をやらせていただいたり、テレビ番組の『SASUKE』で体を張ってみたり。AKB48というグループとしてだけでなく一人で新しいことにチャレンジする機会が増えた流れで参加を決めたんです。順位は特に気にしていなかったのですが、結果的に審査員特別賞をいただきました。今後は、今まで以上に歌と真剣に向き合っていきたいです。

――今年は新たな自分に出会えるきっかけがたくさんあるということなんですね。

村山 そうですね。自分でもびっくりしてます。デビュー10年過ぎてからも、こんなにまだまだやってないことがあるんだって思いました。

――10年間のアイドル活動を振り返ってみてどう感じていますか?

村山 コロナ禍で全く活動ができなくなったときに、アイドルってステージのような環境がないとアイドルとして何も発信ができないんだって感じました。だからこそ、普通にステージに立てている日常こそが幸せなんだなと思って、アイドルとしての自分をもっと大切にしたいし、もっと沢山の人に自分のことを知ってもらいたいという気持ちも生まれたんです。コロナ禍という非日常がいろんなことに気づくきっかけになりました。

――そういう前向きな連鎖の中で挑戦した写真集ですが、どんなふうに楽しんでほしいですか?

村山 ギャップを楽しんでもらいたいです。私が褒め言葉の中で一番嬉しいのが『変わっているね』と『ギャップがすごいね』という言葉。この写真集はまさにその言葉を言ってもらうための要素が詰まった作品です(笑)。それにAKB48として、私はAKB48劇場でステージに立つことをとても大切に思っているので、今まで劇場に来たことがない方も、この写真集を見て足を運んでいただくきっかけになったらいいなと思います。

普通が好き

村山彩希1st写真集『普通が好き』より

――劇場の様子も写真集に収められていますよね。

村山 そうなんです。実は私が一番入れたかった場面でもあって。写真集では今まで見せたことのないプライベート感のある私も見ていただきたいと思いつつ、劇場は私が一番なりたい自分になれる場所でもあるので。今回、写真集を一緒に作っていただくスタッフさんにも劇場での私を見てもらいたいなと思って、沖縄ロケが終わってから劇場でも撮影していただきました。

――人生初の写真集が発売されています。さて、2冊目の写真集はどうしましょう?

村山 最初で最後という気持ちで作った写真集で、25年間生きてきた自分を全部詰め込んだので、今はまだ考えていないです。この先、新しい自分にどんどん出会って、今以上の振り幅ができたらまた挑戦したいと思うかもしれないですが、現段階ではこの写真集をたくさんの方に届けたいという思いでいっぱいです。

――そして、最後にsmart読者にメッセージをお願いいたします。

村山 smartはファッション誌なのでお洒落な人がきっと多いですよね。私はこの写真集でいろんな自分を表現したのですが、smart読者のみなさんが大好きなお洒落もたくさん振り幅があると思うんです。なので、自分の好きなファッションはもちろん、それ以外にも冒険してみたりして、ご自身の中にあるギャップを楽しめたらさらにお洒落を楽しめるのではないかと思います。私の写真集にも色々な私が入っているのでぜひ、チェックしていただきたいです。

『AKB48 村山彩希1st写真集 普通が好き』(宝島社)¥2,420

普通が好き

Profile/村山彩希
むらやま・ゆいり●1997年6月15日生まれ。ニックネームは「ゆいりー」。AKB48の13期生で、チーム4所属。劇場でのパフォーマンス力が高く、劇場での公演出演回数、人気ともにNo.1を誇る。
村山彩希公式Twitter
村山彩希公式YouTubeチャンネル「ゆうなぁもぎおんチャンネル」

インタビュー&文=佐藤玲美
構成=熊谷洋平

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