yamaが感じたVaundy、ACIDMAN大木伸夫との化学反応とは――『Versus the night』インタビュー前編
コロナ禍に彗星のごとく現れたシンガー・yama。2020年に自身の名義で発表した初のオリジナル楽曲「春を告げる」はYouTube再生回数1億回を超え、その存在と歌声はもはや令和を代表する歌い手といっても言い過ぎではないだろう。そんなyamaがこの度、2枚目のアルバムとなる『Versus the night』を発表。日本を代表するミュージシャンとの共作、自身初となる作詞・作曲への挑戦を果たしたアルバムを完成させた今、yamaは何を思うのか。その充実の口ぶりからは、アルバムへの確かな自信がうかがえた。
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今までみんなが抱いていた“yama像”を崩したかった
――2ndアルバム『Versus the night』はいい意味で、これまでとの違いを明確に感じられました。例えば「春を告げる」もそうですけど、割とこれまでは「yamaさんの曲は一人で聴きたい曲が多いな」って個人的に思っていたんです。
yama そうかもしれませんね。
――先行配信されていた「くびったけ」なんてカラオケでみんなで歌いたいなみたいな。これまでは割と内向きな楽曲が多かった印象でしたが、割と“外に開かれた”曲も多いような印象を受けました。この2ndアルバムは、端的に言ってyamaさん的にはどういう仕上がりになったと感じていますか?
yama タイトル通り『夜と戦う(Versus the night)』っていうのとイコールで、“自分自身と戦う”っていう意味があるんですけど、そういったタイトルに向けて、やっぱり今までのyamaっていう像を、みんなが抱いている像を崩したいなっていうのはあって。だから「くびったけ」もこれまでにないほどの明るさとエネルギッシュさがあるような、そういう楽曲にチャレンジして、聴いてくださる方に「はっ!意外だな」って感じてほしかったんです。このアルバムで新しい自分を表現できているのかなと思っています。
――そういう意味では聴いた人にとって発見があるというか、これまでのイメージをいい意味で覆(くつがえ)せるような一枚ですね。
yama そんなイメージで、とにかく新鮮に感じてもらえるようにと思って制作しました。
――その『 Versus the night 』というアルバムタイトルには、自分自身との戦いという意味があるように、ストイックなタイトルだなという印象を受けました。それはご自身で作詞・作曲された楽曲も収録されていることに象徴されているように、タイトル通りの姿勢で制作に臨んだという感じでしょうか?
yama そうですね。やっぱり作詞・作曲はこれまでやっていなくて。なんでやっていなかったかって、自分で作る音楽ってありきたりだなと感じていたので、なかなか形にできなくて。でも、このタイトルをつけた以上、形にもしてないのに逃げるのってよくないよなって思って、拙(つたな)いながらも作った楽曲で。結構苦戦はしましたけど、そういった意味では制作過程でちゃんと自分自身と向き合えたのかなと思っています。
――2ndアルバムはこのタイトルでいこう、このコンセプトでいこうっていうのは、自身が作詞・作曲の楽曲を作る前からすでにあったんですか?
yama はい。このタイトルが決まってから、自分で作詞・作曲しようと決めました。
――なるほど。そもそもyamaさんの基本的な制作過程として、タイトルを先につけたり、パッケージからこういうモノを作ろうと制作に取りかかることが多いんですか?
yama 実は去年リリースしたアルバム(『the meaning of life』)はそうじゃなくて、あとから付けたタイトルだったんです。前作はその時々で出してきた楽曲をまとめるっていう意味でアルバムを構築していて、総合した上での『 the meaning of life 』というタイトルだったんですけど。でも今回は、タイトルを先に付けました。
――これまでになかった流れというか、順番だったんですね。
yama なかったですね。今回はタイトルを先に付けた上でアルバムを制作して、タイトルに寄り添いすぎるというよりは、ホントに「自分は妥協なく作る!」っていうテーマで臨んだので、色んな曲調を入れたりとか、ライブも意識して作った楽曲も作ったりとか。
――全体を通して聴くと、最後の13番目の曲が「それでも僕は」ということで、それもライブとかをイメージしたときに、この曲で締めるというライブが想像できたんですけど。
yama そうですね。そんなイメージで作っています。
――そのような決意や意図を非常に感じたという曲の並びでもありました。
yama ありがとうございます。
完全プロデュースのVaundyに身を任せた「くびったけ」
――ちなみに、今回は楽曲を提供されている方もそうそうたる面々で、川谷絵音さんであったりとか大木伸夫さん(ACIDMAN)であったりとか、Vaundy(バウンディ)さんであったりとか。レコーディングにこだわるという姿勢がそもそもyamaさんにはありますけども、そういった方々との共作の過程でのレコーディングエピソードや制作過程でのエピソード的なものはありますか?
yama これまでは書き下ろしてもらった場合でも、自分はこだわりが強かったので「好きなようにやらせてください」っていう風にはお願いしていて。レコーディングに立ち会ってもらうことはあっても、最終的な判断は自分がするっていう形でやって来たんです。Vaundyさんに書き下ろしてもらった「くびったけ」は、初めて完全プロデュースということでVaundyさんが「ディレクションもすべて僕がやります」という形だったんですね。
なので、ボーカルディレクションも初めてしてもらったんです。歌い方にはこだわりもあるし、自信もちょっとだけあったので。その状態でレコーディングに臨んだんですが、今までの固定概念とかがすべて打ち砕かれるくらいの経験でした。彼なりの理論に基づいた上での発声方法だったり、リズムのグルーヴの出し方だったりとかが勉強になったし、しかもちゃんと自分の声を分析した上で作ってくださった楽曲だったので、それが衝撃的で……。そのときは彼に身を任せよう!と思って、「こうしましょう」と言われるディレクションに対して、とにかく応えようっていう感じで頑張ってやってみたりして。
――どうでした?実際にそうしてみて。
yama いやもう、めちゃくちゃ新しい表現を引き出してもらえたなって。「くびったけ」以降にレコーディングした曲は、そのときに教えてもらったことで取り入れられそうだなって思ったことを試してみたりとか。
――刺激になっていい影響を受けたんですね。
yama めちゃくちゃいい刺激を受けましたね。
――そういった共作についてもう少し伺いたいです。前作の『the meaning of life 』のときに、「一人でレコーディングすることがトライしたかったことだった」という話をインタビューで読んだんですけれども、この2ndアルバムでやりたかったことっていうのは、そういう部分だったんですか?
yama 何だろ?とにかく新鮮さを出したかったっていうのと、これまでやっぱり一人でレコーディングしてきたのもあって、「これ以上殻を破れないなぁ」と自分の限界を感じていた部分もあって。そこが結構悩みでもあったんです。「くびったけ」はもちろんそれを突破してくれた曲でもあるんですけど、エンジニアさんとの関係性がどんどん変わってきていて。これまでずっと同じエンジニアさんにお願いしていたんですけど、だんだんと信頼関係ができてきて、「たぶんyamaはこのテイクのほうが好きだと思うけど、俺は結構こっちのほうが心に響くな」とか、そういう討論ができるようになってきて。
――エンジニアさんと固い信頼関係ができてきて。
yama その上で、最終的な判断は自分でするんですけど、割とエンジニアさんの意見を通したりするようになってきました。自分自身、変化を怖がらないようになってきたというか。
――yamaさんはご自身の変化をいい意味で自らのガソリンにされてるというか、原動力にされてるっていう印象があるんですけど。
yama それはありますね。
――そういう変化っていうのは、特にこのアルバムの制作期間では強く感じましたか?
yama 強く感じましたね。アルバムの曲順に制作したわけではないんですけど、レコーディングを最初にした楽曲から最後にした楽曲の間でもかなり変化しているので、このアルバム内でも変化を見られると思います。
MCの大事さを教えてくれたACIDMAN大木伸夫
――エンジニアさんとの関係性っていうのは、別のインタビューでも拝見したことがあるんですけど、2ndアルバムの制作期間を振り返ってみたときに、他にも何か決定的な変化はありましたか?
yama 最近でいうと、大木(伸夫)さん(ACIDMAN)との対バンは大きかったと思います。言葉の大事さを学んだというか。
――うんうん。
yama これまで私はライブ中にMCをしていなくて。というのも、「ライブには音楽だけあればいいじゃないか!」と思っていたんですよね。
――それはライブを観る側の立場に立ったとして?
yama そうです。聴く側は音楽だけを楽しんでくれたら、それでいいんじゃないかと自分は思ってたんですけど。でも今年に入って、「何か変わりたい!」と思って、手探りでMCを始めた中で、大木さん(ACIDMAN)と対バンツアーをさせてもらって。それで、東名阪(東京、名古屋、大阪)を周る中で、ちゃんと最初から最後まで ACIDMAN のライブを客席で観ていたんですけど、MCで自分のことに触れてくれたんです。
「yamaは僕らと共感するような考え方があって、ちゃんと色々と伝えたいことがあるアーティストなんだ」って。そこでなんか感情が崩れて、本当に観客席で泣きながら……自分の出番もすぐ後にあったんですけど、ずっと号泣しながら聴き入ってしまったんです。それで、そのMCの後に流れた「夜のために」っていう楽曲を聴いて、「あっ!ちゃんとMCで言葉を伝えた上で音楽に入るのってすごく素敵だな」って。「あっ、やっぱりMCを続けよう!」と思って、それは大きな変化でしたね。今日のようなインタビューなんかもそうですし、伝えていかなきゃいけないところもあるよなぁって、再認識したというか。
――MCで言葉を伝えることによって、曲が相手により浸透する、深くまで届く、みたいなことですよね。
yama より深みが増すと思いましたね。
――言葉の大きさですね。そういった意味では、かねがねyamaさんは聴き手に対して、先入観を余り持たずに、楽曲の素晴らしさや作品を感じてほしいと思っていらっしゃるんだろうなと思っていて。アイマスクを付けたり、フードを被っているビジュアルもそうだと思うんですけど、ここ最近で言葉を発することでより楽曲が届くっていう実感を得られて、今後のyamaさんの活動に注目するのであれば、MCもそうですけど、こういったインタビューとかにもより注目してほしいという思いは強くなっていますか?
yama ありますね。やっぱり自分自身の考えを皆さんに伝えることで、より応援してくれるんじゃないかなとも思っていて。これまでは、そもそも私の人間性が見えないので。あえてそうしてきたんですけど、でもそうするとどんどん共感性がなくなるというか、共感しにくくなるんじゃないかと思ったんです。ファンの人との距離も離れてしまっているような感覚があったので、よりカッコつけずに赤裸々な自分の言葉だったりとか、考え方だったりとかを伝えたほうが応援してもらえるのかなと思って、最近は気をつけていますね。
――今はファンクラブもあって、そこでのコミュニケーションっていうのは、やはりホントに好きな方が入るじゃないですか、ファンクラブって。より密なファンとのやり取りがそこで発生しているものなんですか?
yama そうですね。ファンクラブ限定のラジオをやっていて、結構相談だったりとか、フランクな質問だったりとかが来るので、割と素に近い状態で、長尺のラジオを録ったりしていますね。
――そういうコミュニケーションを取り始めたときって、それぞれファンの皆さんが抱いている“yama像”が、いい意味でも悪い意味でも崩れていく瞬間ってあると思うんですけど、ファンの方からすると、意外なyamaさんの発見の連続みたいな感じなんでしょうね。
yama そうだったらいいなと思っています。イメージと違ったって失望されることもあるのかなって思っていたんですけど、案外みんな喜んで受け入れてくれている印象はありますね。すごく共感してくれているというか、同じ人間なんだなぁって(笑)、思ってくれている感じはします。
――それはいいことですね。2020年は、コロナ禍が始まった年ということで、結構エポックメイキングな年だったと思うんです。2022年という年はコロナ禍になって3年目を迎えた年ですけど、今は時代的にも結構潮目(しおめ)だと思っていて。言ってしまえば、ここ数年は孤独を意識する数年だったと思うんです。そしてやがてコロナが明けて次の時代に入ると思うんですけど、そうした時代の移ろいの中で、yamaさんが今後どういう風になっていくのかな?っていうのは個人的にも興味があるところで。
yama 私は根本的に根暗な部分があるので、孤独だったりとか暗い世界観は元々持ち合わせていたと思うんですけど、結構今は前向きに歩んでいる最中ではあるので、一人で聴くのにふさわしい曲もありつつも、ライブを意識した、バンドサウンドとかにも積極的に挑戦したいなとは思っていますね。
――オフラインの場、ライブの場も増えてくるでしょうからね。
yama そうだと思います。私はコロナ禍からライブを始めたので、まだお客さんの声を聞いたことがなくて。それをいつか聞けたらいいなと思っています。
――お客さんの歓声ですね。
yama はい。このアルバムの中にも、コール&レスポンスをできるように作った楽曲とかもありますし、いつかは歓声を聞けたらいいなと思っています。
(後編に続く)
Information①
2ndアルバム『Versus the night』
好評発売中!
■CD収録曲
1. 桃源郷
2. Moon Walker
3. くびったけ
4. スモーキーヒロイン
5. Lost
6. ライカ
7. ないの。
8. Oz.
9. マスカレイド
10. 存在証明
11. 光の夜
12. 世界は美しいはずなんだ
13. それでも僕は
Information②
yamaが新アー写を発表!
Profile/yama
ヤマ●SNSを中心にネット上で注目を集める新世代シンガー。2018年よりYouTubeをベースにカバー曲を公開し、活動をスタート。2020年4月に自身初のオリジナル楽曲としてリリースされた「春を告げる」は、SNSをきっかけに爆速的にリスナーの心をつかみ、ストリーミング再生で2億回を突破。現在の音楽シーンを象徴するアーティストの一人だ。
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写真=大村聡志
インタビュー&文=熊谷洋平
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