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【ファッション業界を目指す人必見】スタイリスト指名率100%、Sakas PR・長坂啓太郎の働き方

今、スタイリストに「こういう企画で洋服を借りてほしい」「タレントさんにこういう服を着てほしいけれど、いいところはある?」と聞くと、絶対に出てくる名前がある。

それが、Sakas PR(サカス ピーアール)だ。

2019年に立ち上がり、現在国内15ブランドのPRを担当するこの会社を取り仕切るのは、株式会社ソスウ、MIHARAYASUHIRO(ミハラヤスヒロ)から独立した長坂啓太郎さん。

コロナ禍の時代にも関わらず、彼はなぜ独立から3年足らずでここまで多くのスタイリスト、ブランドに信頼されるようになったのか。その経歴や仕事の仕方について、インタビューした。

【ファッション業界を目指す人必見】スタイリスト指名率100%、Sakas PR・長坂啓太郎の働き方

長坂啓太郎(ながさかけいたろう):1985年生まれ、静岡県出身。大学を卒業後、アパレル3社を経てSakas PRを設立。現在、APOCRYPHA.(アポクリファ)ATTACHMENT(アタッチメント)BED J.W. FORD(ベッドフォード)COGNOMEN(コグノーメン)DIET BUTCHER(ダイエットブッチャー)HIZUME(ヒズメ)kenichi.(ケンイチ)KIDILL(キディル)LAD MUSICIAN(ラッド ミュージシャン)Séfr(セファ)SEVEN BY SEVEN(セブン バイ セブン)VALAADO(バラード)VEIN(ヴェイン)YUKI HASHIMOTO(ユウキ ハシモト)9090(ナインティナインティ)の15ブランドのPRを担当している。

 

野球少年が、アパレル業界で頭角を現すまで

――まず、長坂さんのこれまでの経歴について教えてください。

四年制大学を卒業して、新卒でABAHOUSE(アバハウス)に入社しました。DESIGNWORKS(デザインワークス)という店舗で販売員を3年ほど経験し、その後転職しました。GalaabenD(ガラアーベント)というブランドでショップマネージャーをした後、MIHARAYASUHIRO(ミハラヤスヒロ)のあるソスウで主にPR業務に携わっていました。MIHARAYASUHIROにいた期間が一番長かったです。その後、2019年末にSakas PRを設立し、現在に至る、という感じですかね。

 

――MIHARAYASUHIROでは、PR以外には何を?

FIT MIHARAYASUHIRO(フィット ミハラヤスヒロ)というブランドの企画プロデュースも行っていました。生産部門、パタンナーに優秀な方たちがいたので、とても勉強になりました。

 

――PRとは、どのような仕事をするのですか?

僕のPRとしての働き方は、すべてMIHARAYASUHIROで教わったことなので、他に当てはまるかはわかりませんが……。僕の場合、現在は15ブランドのPRを取り扱う「アタッシュ・ド・プレス」という働き方をしています。
各ブランドによって違うのですが、まず国内海外ショーがあるブランドは、そのショーをブランドにあったプロモーションをできるか、ショーを行わないブランドでもルックブックなどのカタログや映像作品などのコンテンツで伝えていくか、ということを考えます。
そして店舗での内装や、ポップアップショップを行う場合は、どういった打ち出しをすることで、直接消費者にどう届くのか、ということもプロデュースすることもあります。
そして、smartのような雑誌やweb媒体などに商品をお貸し出しする際は、そのメディア、その企画に最適なものは何なのか、スタイリストや編集の方と密にコミュニケーションを取ることで考え、貸出をしています。

 

――大学時代から、PRを仕事にしたい、アパレル関係の仕事に就きたい、と考えていたのですか?

いや、実は僕、大学には野球推薦で入っているんです。なので服飾を専門に勉強はしていなかったですね。というか、大学時代はMD(マーチャンダイジング)とか、PRとか、存在すら知らなかったです。大学では福祉などを専門に学んでおり、静岡市役所に研修なども行っていたのですが、これが一生の仕事として自分に向いているのか、ということを真剣に考えだして。進路の相談を教授などにしているうちに、「他の業界のほうが向いているかもしれない」と考え、他に好きなものといえば、と考えたときに昔から洋服は大好きだったので、アパレル業界に入ることを決めました。

 

――PRという仕事の魅力とは?

ブランドのイメージというのは、もちろん根幹はデザイナーが作った衣服に集約されるのですが、それを周知するために雑誌やweb媒体、SNSなどで一気に周知したり、イメージを変えることができるのが醍醐味だと思っています。特に今の時代は、本当に一日で一気にそのブランドやアイテムのことが知れ渡るのも珍しくはないですからね。ブランドの持つ各セクションの中でも、そういったことができるのはPRだけかな、と。
現代、売れているブランドでPRをちゃんとやっていない、というブランドは、一部あるかもしれませんがほとんどないと思います。そういった大きな力になれることは、楽しいですし誇りに思っています。

 

【ファッション業界を目指す人必見】スタイリスト指名率100%、Sakas PR・長坂啓太郎の働き方

 

ブランドの一員となるために、そこで働く人々との共通認識を作ることが大事

――Sakas PRを立ち上げたきっかけなどはあったのでしょうか?

独立しようと思ったきっかけは、今でもMIHARAYASUHIROのデザイナー、三原康裕さんのことはとても尊敬しているのですが、既に海外でもコレクションを発表しているデザイナーズブランドの中に自分が「いさせてもらっている」という感覚になって。自分でセロからまだ始まったばかりのブランドや、まだ世に知られていないけれど、プロダクトを作っているブランドのPRをやってみたい、という思いが強くなったからです。

立ち上げの際はキディル、アポクリファ、アズマ、アダンス、カーリーという5ブランドで始めました。もちろん、始めたときは不安だらけでした。というか今でも不安なんです。各ブランドの方たちから信頼を勝ち取りながら、PRだけでなく、会社を立ち上げる上で今まで知らない運営や資金周りのことも責任持って見なければならないですからね。慣れないことが多かったです。

――新しくゼロからブランドのPRを行ううえで、信頼を勝ち取るために長坂さんが大事にしていたこととはなんですか?

ブランドのチームの一員として認識してもらうこと、だと思っています。そのブランドの社員ではないので、毎日一緒にいるわけではない。だからこそ、せめて「自分とのやり取りはストレスなくやってほしい」と思っています。そのためにもコミュニケーションを取りながら、プロモーションとして何をやるべきなのかという回答をすぐ用意できるように心がけていますね。
仕事法、というほどでもないのですが、「その日にできる仕事はその日のうちに」は意識してスタッフにも常に伝えています。

 

――一員になる、というのは決して簡単なことではないですよね。

はい、実際に一員になるということは物理的には難しいことですが、とにかくそのブランドのことをできるだけ深く理解することが大事だと思っています。ラフ・シモンズの言葉なのですが、彼がディオールのデザイナーを務めていたときに「僕の一番最初の仕事は、アトリエのスタッフとの共通認識を作ることだ」と仰っていて。それはPRでも全く同じだと思っています。だから、僕が独りよがりに「こういうPRがしたい!」とか「こういう見せ方が流行っている!」といっても意味はないです。
ぼくがやったことといえば、PRするブランドの直営店をすべて周り、スタッフがどのように働いているのかを見て、デザイナーたちが何をしたいのか聞いた、ということですかね。その中でみえてくる必要なこと、足りないことなどをブランドの人たちと話し合いながら、最適なPR方法を模索する、ということが大切だと思っています。

 

--他に心がけていることはありますか?

できるだけ、MIHARAYASUHIROで働いていたときのように、インハウス(一つのブランドの中で行うPR)と、今みたいにいくつかのブランドのPRを行うことをなるべく同じようにやりたいと心がけています。そのためには、各ブランドのことをより深く理解し、スタッフの方たちと密にコミュニケーションをとり、より中に入っていくことが大事かな、と思っています。これは三原さんから学んだことなのですが、ブランドを長く続けるためには、「デザイン・企画」と「販売・セールス」と「PR」という三本の矢が同じ方向を向いていることが大事、と仰っていて。僕がPRしているブランドの一本の矢として、他の二本と同じ方向を向いていたいです。

 

――冒頭でも書きましたが、スタイリストさんからの指名率が高いですよね。どういった理由で選ばれている、と思いますか?

本当にありがたいことに、借りてくださっている方は多くなってきました。メンズが基本のショールームなので、男性誌や男性タレントを担当されているスタイリストさんで、同世代や若い世代の方は特に多く来てくれています。

あくまでもブランドが主役の仕事ですが、ショールーム自体の力の底上げをすることも大事だと思うので、もっともっとSakas PR自体の認知をひろげなければ、と思っていますが。だから、こうやって取り上げてもらえることは嬉しいです(笑)。

【ファッション業界を目指す人必見】スタイリスト指名率100%、Sakas PR・長坂啓太郎の働き方

 

新しい表現方法などに柔軟に対応して、チャンスを逃さないようにしたい

 

――最初は5ブランドからスタートして、現在は15ブランドを担当。順調に取り扱うブランドが増えていますよね。PRするブランドの基準などはありますか?

一番は、今取り扱っているブランドのコンペティター(競合)にならないかどうか、ということです。今託してくれているブランドにとって不利益になってはいけないですから。服を見ないでお断りする、だったりデザイナーと合わないからお断りする、ということは全くないです。まずは一度会って、PRするためのプランシートを出して。PRを担当させていただくにあたり、ブランドの持つ多くの要素や可能性を自分なりに考えてみます。

特に、このブランドはSakasのイメージに合わない、ということは考えていません。毛色の違うブランドでも共存して、各メディアそれぞれに合うところに露出できるようにと思っています。スタイリストさんたちがいくら仲がいいといっても、お互いもちろん仕事なので彼らが携わっている企画や、着せたいアーティストさんに会ったものを常に提案できるようにしたいなと考えています。

 

――アーティストの方も多く借りてくれていますよね。

そうですね、横浜流星さんや成田凌さんなどの俳優さんや、ONE OK ROCKやALEXANDROSなどのアーティストも借りてくれています。まあでもそれは結果論で、その都度いいプロダクトをブランドが作ってくれているからですが。

 

――今後、Sakas PRをどうしていきたいと思っていますか?

そのブランドにあったPR方法って、どんどん増えているし目まぐるしく変わっていると思っています。ブランドのブランディングは守りながら、柔軟に発信の仕方は変えていきたいなと思っています。最近だと、TikTokを使ってコレクションを発信したりしました。枠組みにとらわれずに、その都度できることを逃さずにやっていきたいな、と。

また、将来的には日本国内のブランドを海外に向けてもPRしていきたいと思っています。取り扱うブランドなどは結果的に増えていくことはあるかもしれないですが、意識して増やしていきたいとは思っていません。

 

――ファッションの仕事に就きたい!と思っている人にメッセージを。

僕が20代のときと状況は全然違うと思うのですが、僕が今の仕事をできているのは前の3社があったからであることは間違いない、と思っています。学校で学べることだけではなく、仕事をしながら学ぶことはどんな業界でも絶対にありますよね。

昔と違い、今っていきなり何かを成し遂げられることがある時代ですが、僕がやってきたことの観点でいうと、アシスタントや下積みの経験は大事だと思います。デザイナーズブランドのPRをやりたいと思ったら、そういったブランドのチームに入ってその空気感を知る、ということはそこでしか得られない経験になると思うので、興味のある、好きだと思うジャンルの中で働くということをしてみてください!

そして、いまでもファッションが好きなのは変わりませんが、この業界に入るということは、ただ好きなだけでなく「仕事」として洋服と関わることになります。大変なことも多いですが、そのときに新しい「成果」への喜び、達成感を感じられると思います。それを、ぜひ感じてみてください。楽しいですよ!

【ファッション業界を目指す人必見】スタイリスト指名率100%、Sakas PR・長坂啓太郎の働き方

 

長坂さんからsmart公式サイト読者に、オススメアイテムをピックアップ!

 

最後に、長坂さんもオススメするアイテムの一部をピックアップしてもらった。この秋冬に着たくなる服が目白押しだ。

 

KIDILLのニットカーディガン

【ファッション業界を目指す人必見】スタイリスト指名率100%、Sakas PR・長坂啓太郎の働き方

 

毎シーズン好評のKIDILLのニットカーディガン。発色のよさとデザイン性が秀逸。ボディについたアップリケは、メルヘンな雰囲気が逆に洗練されたアクセントとなっている。

 

SEVEN BY SEVENのブルゾン

【ファッション業界を目指す人必見】スタイリスト指名率100%、Sakas PR・長坂啓太郎の働き方

 

古着のバーバリーのマフラー生地をふんだんに組み合わせ、再構築しブルゾンとして生まれ変わった逸品。すべての生地の表情が違い、唯一無二の個性を放つ。

 

ATTACHMENTのシャツ

【ファッション業界を目指す人必見】スタイリスト指名率100%、Sakas PR・長坂啓太郎の働き方

 

漆喰の壁のような、立体感ある表情がエレガントなシャツは、カジュアルでもドレスシーンでも活躍する一枚。パターンの美しさが華美なデザインにより、より際立っている。

 

Photo_SATOSHI OMURA
Interview&Text_KOHEI TSUBUKU[smart]

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