【深川麻衣×若葉竜也インタビュー】映画『嗤う蟲』 は理想の田舎移住が地獄に変わるヴィレッジスリラー
執筆者: ライター/石野志帆
鬼才・城定秀夫監督の最新作ヴィレッジ《狂宴》スリラー映画『嗤う蟲』が、1月24日(金)から全国で公開される。主演の深川麻衣さん、共演する若葉竜也さんが演じるのは、理想の田舎移住を夢見て東京から“麻宮村”に引っ越してきた夫婦。移住先に存在する決して抗えない“ムラの掟”のせいで、次第に逃げるに逃げられなくなってくる様子が限りなくリアルに描かれている。日本各地で起きた村八分事件をもとにして構成された本格派ヴィレッジスリラーに出演したお2人に、映画の面白さ、見どころを聞いた。
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#田舎移住 に浮かれた矢先 “村の掟”に囚われて……
——脚本を読んで、どんなところが面白いと感じましたか?
深川麻衣(以下、深川) ホラー映画は怖くてあまり観る機会がないんですが、人間ドラマが詰まったサスペンスやミステリーは好きで、よく観るんです。こうしたジャンルの中でもこのお話は「フィクションだけど、どこかにあるかもしれない」と感じられるあんばいが絶妙だと思いました。脚本も小説の感覚でスルスルと読むことができたくらい「面白い!」と思いましたね。「何かがおかしい……」とか「何を隠しているんだろう……」という怖さはあるんですが、いわゆるホラーなどの怖いジャンルが苦手な方でも楽しめるような絶妙なバランスになっているんじゃないかなって。
若葉竜也(以下、若葉) 僕は城定監督が撮る深川さんをすごく観てみたかったというのがありました。これまで城定監督の作品をたくさん観てきて、今はメジャー映画をたくさん撮っていらっしゃいますが、かつては小さい規模の映画を数多く手がけられていた方で。そうしたことから「アンダーグラウンドの匂いがある人」という印象を僕は勝手に持っていたんです。そんな城定監督が、メインストリームの深川麻衣さんをどう撮るのかっていうのにすごく関心がありましたし、面白そうだなと思いました。
――お2人が演じられたのは、田舎暮らしに憧れて東京から麻宮村に移住した、イラストレーターの長浜杏奈と、脱サラした上杉輝道の夫婦です。演じられた杏奈と輝道、それぞれどんなキャラクターですか?
深川 杏奈は、ちゃんと我(が)がある女性だと思います。田舎移住をしても、リモートで打ち合わせをしながら好きなイラストの仕事を頑張って続けようとしたり、夫の輝道と喧嘩をしたときも結構強い口調で言い返したりして、やりたいことがはっきりしていて芯があり、思っていることしっかり口にできるタイプの女性ですね。
――杏奈の負の感情をあらわにしたシーンでは、深川さんの目の演技がすごく印象的でした。
深川 自分でも完成した作品を観たときに「なんかすごい顔してるな……」と思ってびっくりしました(笑)。でも、杏奈の気持ちに寄り添っていったら、そのような顔になりました。
――実際に演じて難しかったことを教えてください。
深川 母親としての振る舞いは、実体験がないので難しかったです。赤ちゃんを他人に見てもらうことに対してどこまで神経質になるのか、その線引きやさじ加減についてすごく悩みました。周りで出産している友達に「第一子だと特に敏感になる」という話を聞いたり、城定監督と現場で話し合ったりしながら臨みました。
――若葉さん演じる杏奈の夫・輝道はどんな印象の人物ですか?
若葉 いろいろなことをごまかしながら生きてきた人なのではないか、という印象ですね。実は僕個人としては、輝道という人があまり好きじゃないんです。調べればわかることでも知らないし、簡単に「スローライフだ」と言って田舎暮らしを始めてしまう。そうした軽薄さや形骸的なところがある人だと感じました。
――輝道がじわじわと心理的に村に取り込まれていって、ヒヤヒヤさせられる展開がこの作品の面白さの一つです。演技をするのに工夫した点はありますか?
若葉 これといって入念に準備したというよりは「輝道のような人は結構ありふれている」という気持ちで臨みました。麻宮村の同調圧力みたいのもがあれば恐怖も感じるとは思いますが、実は輝道自身、人に興味がないのではないかと思うんです。(村人から)嫌われたくないから流されていくような部分はありますが、かといって別に好かれるための行動も積極的にはしない。そういう人って、実は結構いっぱいいそうな気がするんです。
――移住した村に恐ろしい“掟”が存在し……というストーリーですが、お2人が演じられた夫婦について城定監督からは「必ずしも善良ではない夫婦」を演じてほしいというリクエストがあったそうですね。
深川 杏奈はSNSで「#田舎移住」と田舎での生活を発信していたり、最初はちょっと浮かれている感じもあって、麻宮村の人たちに対しても、笑顔を浮かべてはいるけれど、どこかで警戒していたり不快感を持っていたりもしていて。そうした移住先との“相容れなさ”みたいなニュアンスを意識することを心がけました。
若葉 僕はこの夫婦にすごく“加害性”を感じました。あまり調べずに、自分たちの都合で、村でずっと生きてきた人たちの中に土足で入り込んできているという側面もあると思っています。どちらかというと村の人たちはちょっと被害者な気もする。
この記事を書いた人
TV局ディレクターや心理カウンセラーを経て、心を動かす発見を伝えるライター。趣味はリアリティーショー鑑賞や食べ歩き。海外在住経験から、はじめて食べる異国料理を口にすることが喜び。ソロ活好きが高じて、居合わせた人たちの雑談から社会のトレンドをキャッチしている。
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