「伝えたいのはダンス自体ではなく、それを通した何か」KADOKAWA DREAMS・颯希(SATSUKI)が語るD.LEAGUE今季の戦いとハードワーク
執筆者: 音楽家・記者/小池直也
日本発のプロダンスリーグ「D.LEAGUE」で昨年、初となるシーズンチャンピオン2連覇を果たしたKADOKAWA DREAMS(KD)。ストイックな練習に裏打ちされた強豪チームのひとつだが、そのなかで中心的存在のひとりが颯希(SATSUKI)だ。Dリーガーとして5年目となる今季、彼はどのような心境で試合に望んでいるのだろう。
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1日10時間の練習
――3連覇を目指している今シーズンはいかがですか?
颯希:正直なところ、去年と戦い方が完全に変わってきているので、まだ自分たちの中でも「これが勝てる作品だ」といえるものが何なのか試行錯誤してますね。
――今シーズンから導入された「エースパフォーマンス」と「シンクロパフォーマンス」はKDにとって有利に働くかとも思いましたが。
颯希:意外とそうではなかったです(笑)。「ここでシンクロさせよう」と考えたことがなくて。そこへ合わせるとなると、作品が芸術作品から競技作品に変わってしまう。
例えばテーマがゾンビだったら、ずっとエンタメで見せているなかでゾンビが揃い始めたら、急にダンス感が出る。たくさん模索して、新しい審査方法をも超越できるような存在になりたいと思っています。
――なるほど。
颯希:それを痛感したのが、SWEEP(完封)を狙ったROUND.2のショーケース「ちょっと小さな主人公」のドローという結果でした。このジャッジで得た項目がテクニックとコレオグラフィー、ステージング。つまり残りのシンクロとソロ、オーディエンスのどれかを取れれば勝てた。
だから昨年のように伝えたい想いだけでなく、ソロとシンクロも狙わないといけない。だから昨年までとはノウハウが変わってくるなと。ただ僕らが届けたいのはダンス自体よりも、それを通した何かですから。その両立については試行錯誤中です。
――冷静な分析だと感じましたが、チームで集まってミーティングすることも多いのでしょうか?
颯希:もちろんあります。練習前が多いですね。朝10時から夜20時頃まで1日約10時間も練習していると、だんだん何が正解かわからなくなってくるんですよ(笑)。1度持ち帰ってから次の日に振り返って全員で話し合う日もあります。
――KDはBチームや1.5軍のメンバーもいます。そのなかで競争もあると思うのですが、その辺はいかがでしょう。
颯希:やっぱり全員がライバルという意識です。メンバー選定は各ラウンドでやっていて、KDの33人の中から出られるのは毎回8人だけ。僕も例外ではありません。ROUND.3とかも出たかったんですけど落ちました(笑)。
またBチームや1.5軍の子たちは出られることが決まると、嬉しくて泣き崩れてしまったりするんです。そういうときは素直にみんなで「おめでとう!」と祝福の声をかけたり。
この記事を書いた人
音楽家/記者。1987年生まれのゆとり第1世代、山梨出身。明治大学文学部卒で日本近代文学を専攻していた。自らもサックスプレイヤーであることから、音楽を中心としたカルチャー全般の取材に携わる。最も得意とするのはジャズやヒップホップ、R&Bなどのブラックミュージック。00年代のファッション雑誌を愛読していたこともあり、そこに掲載されうる内容の取材はほぼ対応可能です。
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お問い合わせ:smartofficial@takarajimasha.co.jp
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