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「10年後のビジョンを明確に持つことが大事」Shigekixがパリ五輪を終えてD.LEAGUEへ電撃参戦、ブレイキンから得た確固たるビジョンとは

執筆者: 音楽家・記者/小池直也

10年後のビジョンを明確に持つことが大事

Shigekixインタビュー

――競技人口が既にサッカーや野球を追い抜く勢いだという話は聞いていましたが、日本のダンスシーンが世界的に豊穣だとは驚きです。

Shigekix:先代のダンサーから伝統を受け継いだ結果、幅広い世代の「踊る人/作る人/観る人」が増えてシーンが成り立っていることが理由として挙げられると思いますね。

年配の方から次世代の子たちまでが踊れるダンススタジオだったり、練習場所の環境も整っています。コンテストや大会を企画する人もいる。そしてダンスが学校の授業になったり、憧れの人の振り付けを真似る子たちも増えました。この土壌が日本の強み。

ブレイキンやダンスが生活の中で自然と触れる存在になって、プレイヤーたちも5~10年前では見れなかった景色や経験ができるようになっています。でも、これは上の世代の方たちが突破口を開いたから、もう1段階上の壁を乗り越えられたんですよ。

――なるほど。

Shigekix:だから車でいう、フルモデルチェンジとマイナーチェンジを常に続けることだと思うんです。これまで作り上げてきたものを全部無視して次世代が新しく作る。それは素晴らしいし、実現できたらすごい。でも先輩たちが作ったものへのマイナーチェンジを何度も繰り返して、10年単位でフルモデルチェンジするような、そういう後継の仕方が大切。

時代とともに変わるものは、そういう進化プロセスであるべきなのかなと。逆に自分たちが次世代の子たちに影響を与えられば、その下の世代も同じように伝統を守るだけじゃなく、前向きに進化させて広げてくれるはず。そうであってほしいと勝手に考えています。

――多くのカテゴリで世代間の分断が見られる昨今、「老害」などの言葉も飛び交いますが、ダンスではジェネレーションを超えた調和があるのですね。

Shigekix:ブレイキンを始めとした、ダンスというカルチャーはとにかくボーダーレス。人種や国境、性別、年代といった、世の中の境界線がありません。そのポイントこそが踊る技術よりも社会に必要とされ、大きなインパクトを与えうる。それを自分もプレイヤーとして肌で感じてきました。

――大きな舞台では相当なプレッシャーにさらされ、ときに結果が出ないときもあるかと思いますが、そんなときにどう自分を奮い立たせますか。

Shigekix:常に3年後、5年後、10年後のビジョンを明確に持つことですね。僕も5歳の時から8歳、10歳、20歳の時の自分をイメージしていました。どんなに目の前に大変な状況があったり、乗り越えられない壁が立ちはだかっても、追い求めるものがあれば「進むしかない」という気持ちが湧いてくる。

「来週は大会だからモチベーションを上げよう」ではないんです。試合や舞台があってもなくても「目標に向かう足を止めたくない」というマインド。僕の人生を振り返っても、これまで思い浮かべたことのほとんどが形になりました。

――ちなみにファッションのこだわりは?

Shigekix:自分のアイデンティティや個性を表すツールのひとつがファッション。音楽と同じくらいダンスと密接だと思います。何を着るかでテンションや気分が上がったり、服からエネルギーをもらうことも多いですし。ダンスは究極の自己表現なので、何を身に付けて、どんな踊りをするのかは意識しますね。「着させられてるんじゃなく、着てるんだ」という気持ちで楽しんでいます。

――最後に、いよいよ開幕した「D.LEAGUE 24-25」への意気込みをお願いします。

Shigekix:目指すはレギュラーシーズンとチャンピオンシップのW優勝。それを目標に輝いて頑張ります。僕らの姿と活動を通してブレイキン、そしてダンスそれ自体の可能性を日本中、世界中に我々から見せていけたら。

Shigekixインタビュー

Profile/Shigekix(シゲキックス)
7歳でブレイキンを始める。
11歳で海外の大会に挑戦を始め数多くの優勝を獲得。
14歳で「Team G-Shock」に加入。
2018年「ブエノスアイレスユースオリンピック」にて銅メダルを獲得。
2020年「Red Bull BC One World Final」にて世界最年少で優勝。
2020,2022,2023年と「JDSF全日本ブレイキン選手権」を3連覇。
2023年「アジア競技会」にて金メダルを獲得し、「パリオリンピック」出場を内定。
2024年「パリオリンピック」では4位入賞。
これまでに国際大会で47回もの優勝経験をもつ、世界トップレベルの実力を誇るBBOYの1人である。

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  • パリ五輪での新種目「ブレイキン」で4位入賞を果たしたShigekixが、ダンスプロリーグ「D.LEAGUE 24-25」にKOSÉ 8ROCKSの一員として参戦
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この記事を書いた人

音楽家/記者。1987年生まれのゆとり第1世代、山梨出身。明治大学文学部卒で日本近代文学を専攻していた。自らもサックスプレイヤーであることから、音楽を中心としたカルチャー全般の取材に携わる。最も得意とするのはジャズやヒップホップ、R&Bなどのブラックミュージック。00年代のファッション雑誌を愛読していたこともあり、そこに掲載されうる内容の取材はほぼ対応可能です。

X:@naoyakoike

Website:https://smartmag.jp/

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