「食べられないケーキ」で未来を考える?人気パティシエール・岩柳 麻子が作り、問う環境問題について富士通がPÂTISSERIE ASAKO IWAYANAGIとコラボレーションし、実現した「CARBON CAKES」プロジェクト
執筆者: ライター/黒川すい
パティシエール・岩柳 麻子、コラボへの思いを語る
ここからは、今回のコラボで6つの「CARBON CAKES」を製作したパティシエール・岩柳 麻子さんにお話を伺っていきます。
──コラボが決まった際の率直な感想や思いを教えてください。
岩柳 麻子さん(以下、岩柳):ここだけの話、食べられないケーキを作ることには最初やはり抵抗があって……。
──そうですよね、そのあたりどういう心境だったんだろう?と個人的にも気になっていました。
岩柳:今までどんな難題でも“食べられる”というコンセプトを貫いてきたので、食べられないっていうのは嫌だなぁって思っていたんです。でも、いま食べられるケーキとして作ったものでさえも、未来では食べられなくなる日が来るかもしれませんよね。サンプルなどを作れば作るほど、その恐怖を身に染みて感じました。だから今回、食べられないケーキを作ることが、未来を考えるきっかけになるんじゃないかと。結果的には、コラボしてよかったと感じています。
──作っていく過程で、気持ちがだんだん変化してきたという感じなんですね。
岩柳:たぶんコラボしてなかったら、当たり前のように明日も同じ(ケーキ作りにおける)素材があると思って、行動も変わらなかったんじゃないかな。“美味しいケーキを作り続けるためには、いま何かしないとヤバいぞ”と気づかされましたね。私にできることで、スタッフも含め、みなさんの行動が少しでも変わるお手伝いができたらいいなと思いながらケーキを作り上げました。
──今回のケーキを作るにあたり、インスピレーションはどこから湧いてきましたか?
岩柳:普段のケーキにも共通しているのですが、オーダーしてくださった方などとお話することがインスピレーションの源です。今回は、どういう思いでこのプロジェクトができたかという部分を特に大切にしました。身近な素材で作った美味しいケーキ、それを囲める未来が脅かされているということを、子どもから大人まで伝えられるように、いつも作っている自分のスペシャリテを中心に「CARBON CAKES」を構築しました。
──完成までの過程で苦労したことなどはありましたか?
岩柳:実は初めてサンプルを作ったときに少しやりすぎてしまって……(笑)。有害なケーキを考えたとき、ヘドロのような真っ黒でドロドロしたオバケのようなものを作ったんですよね。もはやケーキと言えないレベルだったかもしれません。そうではなくて、あくまでケーキに見えるものを作らないとな、と。普段食べるような身近なケーキに「あれ?少し違和感があるな、異変が起きているな」と気づいてもらえるようなものを作ることが、難しかったです。
あとは、スポンジ生地の色校正で6段階のグラデーションを決めたり、目の粗さ、ケーキのボコボコ感などパーツごとに都度 確認しながら完成まで持っていきました。パーツごとの方向性が決定するまでが大変でしたね。
──今回のコラボを経て、これからのスイーツ作りに生きそうなことはありますか?今後どのようなケーキを目指していきたいかなど教えてほしいです。
岩柳:やっぱりみんなに“美味しそう”とか“きれい”とかって振り向いてもらわないと、何を発信しても弱いと思っています。だから一番大切にしているのは、とにかく美味しくって美しい素材を使うこと。それが根底にあった上で、例えば「この素材はどのように育ったのか」といったケーキのバックグラウンドを、お客様が食べながら想像できるものを作っていきたいです。その素材をこれからも守るために、食べた人が次にどう行動するか。そういうところまでいけるのが理想です。
(了)
岩柳 麻子/Asako Iwayanagi プロフィール
株式会社 creA/PÂTISSERIE ASAKO IWAYANAGI
代表取締役・シェフパティシエール
東京都出身。
2000年に桑沢デザイン研究所を卒業し染織家として活動後、独学にて洋菓子を学ぶ。
2005年に「patisserie de bon coeur(パティスリィ ドゥ・ボン・クーフゥ)」を立ち上げ、10年間シェフパティシエールを務めた後独立。
2015年に自身の名を冠した「PATISSERIE ASAKO IWAYANAGI」をオープン。同一エリアに2018年に「ASAKO IWAYANAGI PLUS」、 2021年に「ASAKO IWAYANAGI SALON DE THÉ」をオープンし、2023年には都外初出店となる福岡に「ASAKO IWAYANAGI FUKUOKA」をオープン。
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この記事を書いた人
アパレル業界に勤めた後、フリーライターに。ファッションはもちろん、グルメ、エンタメ、お出かけ情報など幅広いジャンルの執筆経験あり。ウェブを中心に活動中。趣味はアートトイの収集や喫茶店巡り、読書。
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