狂言×よしもと。狂言師・野村太一郎が語る”伝統芸能”の可能性

2021/02/16

漫才、落語、狂言を楽しめるライブ「狂宴御芸(きょうえんおんげい) ~狂言お笑い共宴~」が1月30日(土)に東京・二十五世観世左近記念 観世能楽堂で開催された。漫才界からは中川家、ミルクボーイ、ミキ。落語界からは桂文珍。そして狂言界からは野村太一郎、高野和憲、岡聡史、内藤連、野村裕基が出演。このライブは、狂言師の若手のホープ・野村太一郎の今後の芸能活動を、吉本興業がサポートすることのお披露目会でもあった。

普段とはまったく違う本公演について、そして吉本興業のサポート体制による今後の可能性について、公演終わりの野村さんに心境を聞いた。

――まずは、公演お疲れ様でした。

今日はずっと、お客様に笑っていただけるか、楽しんでいただけるかが不安でした。漫才も落語も最初の掴みから笑えるものが多いですけど、狂言は最初から笑いが起きるわけではないので……。そういうところをいかに理解してもらえるかが不安で。

――やはり本公演は、普段の客層とは違いましたか?

そうですね。もちろんご年配の方だったり、よく観にきてくださっているお客様の顔もお見かけしたんですが、いつもより若い方が多かったので新鮮でした。「笑いに来ている方」が多い印象でしたね。狂言は笑いどころ、見どころまでに10分以上かかるので、そこにいかに早く行き着くかという部分で緊張しました。

例えば、小学生に向けてなど一つの括りがあれば演技方法に多少変化をつけることもあるのですが、今日の客層は、狂言を観にきている方と、漫才、落語を観にきている方の両方がいらっしゃったので、すべてのお客様に楽しんでいただける形で披露するのがなかなか難しくて。演じながら、「こういうところは理解が難しいのか」とか「こういうところで反応が起きるのか」とかも学べました。

――漫才は、客層を見てうまくセリフ回しを変えたりすることもありますが、狂言はなかなかそうはいきませんもんね。

そうですね。セリフが変えられない分、テンポ感を変えたりして調整しています。

――普段とは違う客層とのことでしたが、緊張の度合いは変わりましたか?

個人的にはあまり緊張しないタイプなので、緊張というよりも、笑ってくれるかな?という不安が大きかったです。どう攻めていこうか、どう受け止められにいくか……寄り添い過ぎず、離し過ぎずのバランス感が難しかったですね。

それに加えて、配信もあったのでカメラへの見え方だったり、今日は能楽堂の柱がなかったのでそこがいつもと違ったり、漫才のテンポ感に負けないように“掛け合い”を意識したり……。

――漫才と落語と融合したことによって、プラスになったと思う点を教えてください。

狂言を初めて観るお客様は「笑っていいのかな?」と思う方も多いのですが、今回は漫才や落語で場が温まっていたので、全員が「笑っていいんだ」と思って狂言も観てくれたなと感じました。

それと、狂言は“笑いどころ”が大方決まってしまっているんですけど、今日の新鮮なお客様の反応を感じて「こんなところが面白いと思っていただけるんだ」など、新たな発見もありました。

――本日出演された、中川家、ミルクボーイ、ミキ、桂文珍師匠のセレクトはどういった経緯で?

吉本さんにお任せしていました。“狂言と落語と漫才”というスタイルにあった人選をしていただいたんですが、誰が来るのかずっと楽しみにドキドキしてました。

――普段からお笑いはよく鑑賞されるんですか?

結構観ていますね。今日の公演は、漫才は一組4〜5分でお願いしていたんですが、普段テレビやネットでもっと長いものを拝見しているので、「もっと観たい!」と思っていました(笑)。

それと、人気の芸人さんが短時間なのに、僕らは30分とかやるので、その部分をお客様にどう思われるのかな……と。

――漫才を、狂言の参考にされることもあるのでしょうか?

「テンポ感」を勉強させてもらっています。現代のお笑いの流行って、テレビからYouTube・TikTokになっていたりと、“長いものに耐えられなくなってきている”と思うので、狂言も先生の教えを守りつつ、緩急やメリハリをしっかりと出していったりして。

お客様を楽しませるというところは、漫才も落語も狂言も同じなんですよね。漫才師の方は、現代の方がお笑いに何を求めているのかというところを敏感に感じ取っていると思うので、彼らが何を意識しているのかを学ばせてもらってます。でも、何も考えずにだらだらとバラエティを楽しませてもらってることももちろんあります(笑)。

――今のお客様に加えてもっと若い方にも観ていただきたい、というお気持ちもあるのでしょうか。

そうですね。吉本さんと一緒にやっていきたいと思ったきっかけの一つです。まだ狂言を観たことがない方って、観てみたいと思ったときに「どこで観られるんだ?」って戸惑うと思うんです。お笑いだったら吉本の劇場で毎公演している。でも、狂言の公演っていうのは一日一回、別の演者で毎回違う一期一会の形態をしているので、なかなか観に来るハードルが高いと思うんです。そこの打開策を(吉本の)岡本社長ともお話をして、今後、狂言を観たいな、と思ったときに「いつでもここで観れますよ」って場所ができればと思っています。

今はまだ若手ですが、自分がだんだんと歳をとるにつれ、その部分を自分がリードしていければいいなと思っています。今後狂言を広めていくという点では、そこを目指しつつ、一回一回の公演に取り組んでいければと思っています。

――例えば『ルミネtheよしもと』で狂言が観られたりしたら、もっと若い世代にも広がりそうですね。漫才やコントの後に新喜劇が行われているように、そこに狂言が入ってくる、という可能性もあるのでしょうか。

 

大いにあると思います。今回は僕らのホームグラウンドだったので狂言のお客様もいましたけど、逆に『ルミネtheよしもと』や『なんばグランド花月』などのお笑いのお客様しかいないところで公演して、果たして今のままの狂言で楽しんでもらえるのか。

曲目の選択も含め、楽しみではありますけどやっぱり怖いなと。でも、やらないよりはやりたいという前向きな気持ちがあるので、失敗を恐れずに覚悟を持って挑戦していきたいと思っております。

 

インタビュー・文/佐々木 笑

この記事のタグ

タグから探す

smart公式SNS紹介