【村上隆】主宰のギャラリーで好評だったナカザワショーコの個展。幼少期に魅せられた生き物たちの共存、調和を描く
執筆者: smart編集部
アーティストのナカザワショーコさんといえば、かわいい〈山さん椒しょう魚うお怪獣バイロン〉のソフビを見たことがある人も多いはず。幼少期にナカザワさんが魅せられた、生き物たちの世界とは――。
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サンショウウオたちの
住みよい環境作りを応援したい!
東京・麻布のカイカイキキギャラリーでナカザワショーコの個展「Harmony」(※現在は会期終了)が開催された。ナカザワは2021年、カイカイキキギャラリーで開催された村上隆のキュレーション展「 Healing × Healing」のため、初の油絵2点を制作・発表している。 さらに同年9月にHidari Zingaroでの展覧会で油絵11点を発表と、これ以降絵画制作にも力を入れている。そのため2022年からは絵画制作のためにアトリエを設立。同年9月にはHidari Zingaroで初のアート作品の個展「陰日向 ‒ カゲヒナタ」を開催するなど次々に新作を発表している。 そして国内のみならず、アートバーゼル香港や台北ダンダイ、そしてニューヨークで開催されたThe Armory Showなど、世界各地のアートフェアでも、そのカワイイキャラクターはアジアを中心に大きな注目を浴びている。
今回はカイカイキキギャラリーでの大型個展の開催だった。新作20点以上もの絵画作品を制作、ギャラリーの空間に合わせた高さ3m、幅6m、パネル6枚を組み上げた大作には驚かされた。もちろんナカザワを代表するオリジナルキャラの怪獣バイロンやシードラスなどもペインティングのモチーフとなっているのはいうまでもない。
ナカザワといえば、絵画だけでなくソフビのほうで先に名が知られたことは有名で、バイロン(サンショウウオをモチーフとしたその立体作品)は現在のアートソフビの先駆け的存在でもあり、ファンも多い。ではなぜサンショウウオなのだろうか。そこには「彼らの住み良い環境作りを応援したい!」というナカザワの原点の思想がある。
彼女は幼少期から昆虫やカエル、トカゲなどの身近な生物が好きでよく彼らを主人公にした物語や絵を描いていた。サンショウウオを捕まえることはなかったのだが、トカゲとカエルのハイブリッドのようで、もっちりとカワイイそのフォルムは幼い彼女を虜にした。そして同時に彼女はウルトラ怪獣も好きだった。彼女の幼少期はちょうど公害が社会問題化していて、当時の特撮作品は『帰ってきたウルトラマン』第1話にヘドロの怪獣ザザーンが登場するなど環境破壊がしばしばテーマとなっていた。数々の生物たちが棲む街や川が人間によって破壊されることに心を痛めたナカザワ。〈人間は自然や野生生物たちを苦しめる悪い存在〉という思いはこの頃から彼女の心の中に芽生え始めたのだった。まるで宮﨑駿のニヒルな思想から生まれたナウシカのようである。ナカザワはこう語っている。「山椒魚(怪獣バイロン)を通して感じる人間としての自分の生き方や心の在り方、自然との共存を願う心や人間至上主義への否定の気持ちは、幼少期から現代アートを始めた今現在でも、強いテーマとして一貫して心の中にあり続けています」。
清い水でしか生きられないサンショウウオは、美しい地球のアイコニックな生物だ。今日も彼女は地球上があらゆる生物たちの暮らしやすい環境であることを祈り制作に励んでいる。
Photography_KOZO TAKAYAMA
Text_HISANORI NUKADA
※この記事は2024年smart1月号に掲載した記事を再編集したもので、記載した情報もその時点のものです。
©Shoko Nakazawa
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