村上隆がサンフランシスコで“壮大な”個展を開催中!コロナ禍や自我がテーマ
執筆者: smart編集部
しかしそれだけではなかった。同時にパンデミックの自粛の最中、村上の子どもたちがオンラインゲームでスムーズなコミュニケーションを行っているのを見て、未来のリアルはデジタルワールドにあると開眼、その流れのひとつとしてNFTアート生成への道筋もつけ始めることになり、現在の村上の活動領域はまるで『マトリックス』のようにリアルとバーチャルな世界を行き来するものとなっている。
さて、タイトルにあるもうひとつのキーワード「モンスター」とは何か。モンスターは人の心の中にある恐怖や不安のメタファーだ。それは人間を描くアート作品とは切っても切れない関係にあり、古今東西しばしばモチーフとされてきた。村上自身も若いときに見たゴヤの「我が子を食らうサトゥルヌス」を見て大きなトラウマを受ける。また日本絵画も古くから、もののけ、妖怪を描いているのは説明するまでもない。そして村上の追い続けるテーマである、核爆弾による日本の被爆も、ゴジラというモンスターを生み出した。このような数々のモンスターに魅せられた村上もDOBの変形、五百羅漢図像、群仙図像、市川團十郎白猿襲名披露の祝幕など多くのモンスターをクリエイトした巨大作品を続けている。
そして「自我の拡大」だ。東日本大震災による原発メルトダウンは村上を恐怖という自我でモンスター化させたと考えられるが、それは村上だけでなく多くの日本人もそうだった。続いてパンデミックや戦争などカタストロフはいまやワールドワイドなものとなっている。本来であれば個々のマインドに収めておくはずの自我も、デジタルテクノロジーの進歩により、SNSというツールでグローバルに拡大されてしまう時代だ。村上は今後このような人類の自我とどのように対峙し、作品を通したメッセージを投げかけてくるのだろうか。
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Photography_Joshua White, Chiaki Kasahara(portrait)
Text_HISANORI NUKADA
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