「絶対面白くなる」恋愛リアリティ番組の常識を覆したNetflix『あいの里』プロデューサーに聞いた、“35歳以上”の恋愛番組に込めた想い
執筆者: ライター/石野志帆
――そうした住人の方々の苦々しい過去の経験は、自分からはなかなかオープンにしづらいものもあったと思います。
西山 それはディレクターが本当に毎日向き合っているからできたことだと思います。オーディションでもできるだけ根掘り葉掘り人生経験を聞くようにしているんですが、やっぱり1回や2回ではなかなか話してくれない。古民家での生活では1日が終わってから、1人1人にインタビューをするんですけど、それが長い人は1時間ぐらいになったりするんです。深夜1時2時までディレクターと面談が続くこともある。ただその時間っていうのが実は一番この番組で大切なところで、一対一で毎日毎日喋ることによって、人間関係がものすごく深くなるんですよね。
Netflixリアリティシリーズ「あいの里」独占配信中
――住人との人間関係が構築されていくことで、番組も深まっていくということでしょうか。
西山 向き合うことによって、なかなか喋れない話を喋ってくれるんですよ。例えば(女性住人の)おかよが子供のころ太っていたという話も、なかなか最初は聞き出せなかった。だけど人間関係がすごくできてきて「実は……」という話になったんです。そうした話を再現で出されたくないと思う人もいると思うんですが「全部使ってください」って言ってくれた。それは現場ディレクターの頑張りも大きかったと思います。
Netflixリアリティシリーズ「あいの里」独占配信中
――人生で辛く苦しい経験があったとしてもなお「『幸せになりたい』と思っていい」という、肯定的な感じが番組からは伝わってきました。
西山 やはり読後感のいい番組にしたいと思っているんです。テレビ的には悪い部分を多く出したほうが面白かったりするけども、僕は「できるだけ良いところ探しをしよう」って言っています。それに今回はNetflixで世界配信なので、日本人の良い部分も伝えたいと思いました。(野菜などの)無人販売所があるところなんて日本だけだし、落とした財布が戻ってくるのもお互い信じあおうとするのも、日本人の良さだと思うんです。観ていて気持ちのいい番組をつくりたいと、ずっと思っています。
Netflix『あいの里』プロデューサー 西山仁紫さん
――恋愛観察バラエティにずっと関わってきた西山さんにとって『あいのり』や『あいの里』はどんな番組ですか。
西山 人生の結構長い間関わってきましたので、人生の一部でもあるし第二の自分でもあります。出てくれた参加メンバーも本当にみんな子供みたいにかわいいです。人の恋愛なんて本当は興味なかったんすけどね(笑)。でもやっぱり“人間”がすごく出るから、それが愛おしくて面白いんです。自分自身も勉強になることがいっぱいありました。
――今後もまた新たな恋愛観察バラエティを期待したいです。
西山 多分やろうと思えば『あいの里』はシーズン10ぐらいまでいけますよ(笑)。それぐらい人間っていうものは多様だと思うんです。特に50代の恋愛はまだ全然描けてないし、更年期に入ると人って変わることがあるじゃないですか。もしかしたら子連れで参加する人が出てくるかもしれないし。いろんなバリエーションがあると思っているので、『あいのり』ではなかなかできなかった多様性のある人生の後半を観ていただきたいという気持ちはあります。
PROFILE/西山仁紫(にしやま・ひとし)
フジテレビバラエティ制作センター部長等を歴任し、現在は合同会社キャンドル代表。学生時代に海外を貧乏旅行した体験から「なりゆき」「あいのり」を企画。フジテレビ、Netflix『あいのり』、Netflix『あいの里』のプロデューサー兼演出。
写真=大村聡志
インタビュー&文=石野志帆
この記事の画像一覧
この記事を書いた人
TV局ディレクターや心理カウンセラーを経て、心を動かす発見を伝えるライター。趣味はリアリティーショー鑑賞や食べ歩き。海外在住経験から、はじめて食べる異国料理を口にすることが喜び。ソロ活好きが高じて、居合わせた人たちの雑談から社会のトレンドをキャッチしている。
Website:https://smartmag.jp/
お問い合わせ:smartofficial@takarajimasha.co.jp
この記事をシェアする
この記事のタグ