【ととのえ親方とサウナ師匠が惚れた“日本一の水風呂”】大分「寒の地獄温泉」&「暖の地獄サウナ」は暑い夏こそ行きたい!
執筆者: smart編集部/熊谷洋平
有本 あったかいお湯は出てないんですか?
ととのえ親方 出ないので、別のところに温泉を作って、一生懸命薪(まき)を入れて稼働してるんです。
編集部 サウナはなかったけど、もともと暖房室はあったんでしたっけ?
ととのえ親方 はい。だからその暖房室は継続してあります。これまでもあった暖房室はちょっと内気浴スペースっぽく活用して、それでもう1個サウナ室=暖の地獄サウナを作る。
編集部 暖房室内は火をくべられていて、それもすごい絵でした。
ととのえ親方 そうそうそう(笑)。ダルマストーブみたいなね。
サウナ師匠 あの暖房室にこれまではみんな入っていたんです。ストーブの前に張り付いて。スルメみたいに自分をギリギリまであぶって(笑)。
編集部 それも込みでの楽しみ方だったんですね(笑)。
サウナ師匠 そうだったんですけど、痛いじゃないですか?(笑)。ストーブの直火みたいなものなので。だから最高のサウナがあったら、もっとしっかり水風呂に入れるのにって、ずっと思いながらこれまでは行っていたんです。
編集部 具体的にサウナについてお伺いしたいんですけど、「暖の地獄サウナ」はどういうサウナになりそうですか?
ととのえ親方 水風呂の「寒の地獄」に対して、文字通り「暖の地獄」のイメージです。
サウナ師匠 基本的に薪ストーブで。
ととのえ親方 電気系統は全部壊れちゃうので。
サウナ師匠 本当はベースヒーターで、電気を入れておきながら薪を起こせたら一番いいんですけど、そこにお金をかけてもすぐにやられちゃうので。なので薪で考えていて、照明はちょっと暗めかもしれない。もしかしたら地獄のイメージで、サウナ室内ではお経が流れてるかもしれない(笑)。
ととのえ親方 火葬場みたいな雰囲気で(笑)。
サウナ師匠 サウナの中ではみんな下を向いてずっと耐えてるかもしれない(笑)。サウナは我慢比べじゃないって言っているのに、一番我慢比べが繰り広げられるサウナになったりしてね(笑)。そういった演出になるかもしれないです。
編集部 収容人数はどれぐらいになりそうですか?
ととのえ親方 収容人数はたぶん10人ぐらいじゃない?水着で男女入れるような形になります。これまでも夏の間の3カ月のみ開いていたという話を最初にしましたけど、元々水着着用で男女が入れる施設だったので、そこは踏襲(とうしゅう)しています。
有本 僕、大分のサウナは行ったことがなくて。九州でも長崎、佐賀、福岡、熊本のサウナは行ったことがあるんですけど。
サウナ師匠 今はでも、テントサウナだけど「ブルーノ」という鍾乳洞(しょうにゅうどう)が水風呂のサウナもあるし。大分は盛り上がりそうですね。大分が盛り上がると、九州だけでサウナを回るのにどれくらいかかるんだっていう(笑)。
ととのえ親方 昔はロウリュウできるサウナなんか、九州に5件ぐらいしかなかったからね。
有本 九州で昔からある老舗のサウナだとどこですか?
ととのえ親方 九州は熊本の「湯らっくす」でしょうね。サウナのムーブメントを変えたのは、やっぱり「湯らっくす」のあの深い水風呂。でもあれだって2018年とか19年ぐらいでしょう?
サウナ師匠 だから老舗っていう老舗はないですよね。温泉で栄えているところって、サウナを手薄にするんですよ。
ととのえ親方 フィンランドも温泉がないからサウナが栄えたんです。僕らが住む日本は温泉があるから、サウナが栄えなかったんですね。
サウナ師匠 だから絶景が見える場所に温泉を寄せて、入口にサウナを作る。要は、あくまで主役は温泉で、サウナはメインではなかった。メインディッシュはあくまで温泉だったんです。
編集部 そういう意味では土壌は整っていて、いい温泉があっていいサウナがあれば、ますます場所としての魅力は増しますよね。
ととのえ親方 今はもうやっぱりね、全国的にそうなってきていますよね。温泉旅よりはサウナ旅のほうが最近はトレンドですし。
サウナ師匠 でも、サウナにめちゃくちゃ入った後に温泉に入ると、これまた気持ちいいんだよね(笑)。温泉のよさもまた知ることができるっていう。若者の温泉離れという課題もあるけど、サウナを入口としてまた温泉に着目できるきっかけにもなる。
編集部 温泉宿の方々の中にもそういう課題はあるんですか?“若者の温泉離れ”のような課題が。
ととのえ親方 あるというか、やっぱり元々温泉が強いところは別に集客にもそんなに困ってないんです。いろんなホテルができたけど、結局は一番いいところ=一番館って言うんだけど、一番館に取られちゃうでしょ。その状況をどうにもできないで、何十年も過ごしてきたんですよね。それを今、サウナっていうもので相撲をとって、ひっくり返すって言い方はおかしいんだけど、そこの中のサウナ客を取っていくみたいなことが起きていたりしますね。あとは例えばこの前だと、登別っていうところで、僕らがプロデュースして、そのときそこの宿は元々――登別っていう地方に何十個もホテルがあるんだけど――、市内のシェアが10%あった。そこでサウナを作ったらすぐに15%ぐらいにシェアが上がって、サウナで5%上がるみたいなね。ホテルとしては、サウナをフックに、自分の地域の中でシェアを獲得していく。
サウナ師匠 温泉を掘るとなるとやっぱりね、何十億がかかっちゃったりとかするわけです。サウナは初期費用がそこまでかからない。今は非常にコスパがいいビジネスなんですよね。
ととのえ親方 宿とかの付帯設備として活用するということですね。温泉がなくて、小さいサウナだけをやるのはめちゃくちゃ利益率が低いし。
編集部 そういう意味では、まだ眠っている温泉宿も、眠っている水風呂もたくさんありそうですね。他にどこか目をつけてるところはあるんですか?
ととのえ親方 結構あるんだけど、知られざる“眠れる水風呂”でいうと、例えば湖とか川とか海とかになると、河川法とかがあるので水風呂として商業利用をできないんです。僕らって湖のほとりとかに、北海道の洞爺湖とかにサウナを持っていたりするんだけど、そこはもう営業はできないわけです。お客様を入れていくらかお金をもらってというのは、保健所とかいろいろなところの許可がいるからね。だからあくまで自分たちで楽しむサウナとしてやらないといけない。でも、水の資源って、実はそういうところ=自然にあるでしょ。すごく綺麗な海とか、すごく綺麗な湖とかね。だから冷泉みたいな湧き出る水、あの独特の水の性質を持っているものって、なかなかないのはないんだよね。しかもいい温度でさ。温泉を冷やすっていうことはできるわけですよ。出てきた温泉を冷やして、水風呂にするということはできるけど、もうそのまんま原泉が湧き出て、しかもかけ流しでっていう資源を探しても、そんなにないんですよ。だから僕らが躍起になるというか、「これを残したい!」、「もっとこの水風呂っていうもの、冷泉というものを楽しめるようにしたい!」ってなったらやっぱりさ、サウナも作りたい!ってなるよね。
編集部 サウナの本場・フィンランドとかだと、水風呂文化がなかったりします。そういう意味では海外のサウナ愛好家も、この水風呂をめがけて来日するっていうことも多くなるかもしれませんね。アクセス的には、福岡空港から車で2時間かかりますね。
ととのえ親方 もう車でしか行けない。
サウナ師匠 別府からは1時間くらいだよね?あの辺は鍾乳洞のサウナも1時間ぐらいかかって、それぞれの施設を車で1時間・1時間ぐらいで回れる感じですよね。
編集部 そういうサ旅プランも組めるわけですね。
サウナ師匠 一日で3サウナくらいは回れるんじゃないですか?朝から回って、2時間ぐらい滞在して、1時間かけて移動して、それで夕方6時ぐらいに回り終わる。温泉も間に面白いところがいっぱいあるし、炭酸泉がすごいところもあります。
編集部 大分はさすが“温泉県”ですね。
ととのえ親方 むしろすごいよね、温泉が出なかったのがかわいそうだよね。近隣の他のところはみんな温泉が出るわけですよ。「寒の地獄温泉」だけは水しか出ない。そういう意味で“地獄”という名前は、経営の視点から来ているかもしれないですね(笑)。だって、周りはみんな温泉が出てるわけですよ。いい温泉がね、近隣の施設は。
有本 冬は経営が大変だったんじゃないですか?
サウナ師匠 めちゃくちゃ大変ですよ。だって寒い時期に寒いところ=水風呂に行きたくないじゃないですか?サウナがないからあったまるものもない。だから一生懸命薪を起こして、毎日毎日お湯を温めても人が来ないみたいな状況ですよ。それで冬は閑古鳥(かんこどり)が鳴いていて。だから温泉にとってのハイシーズンであるはずの冬がそうなっちゃうから、サウナがあるだけで一年中ハイシーズンに転換できるんですよね。
ととのえ親方 だから僕たちの取り組みも救世主ではないけども、面白がってくれるというか。宿としてやつれちゃいないけど、この先どうなるんだろうみたいな思いもあっただろうし、この先どんどん街の人口も縮小している状況で、ここはこの先大丈夫なのか?みたいな不安があったのかもしれないけど。
サウナ師匠 そういう背景を聞くと、この時点からすでに頭の中で「寒の地獄温泉」に対しての物語が始まっちゃってません?もう行く前からちょっと洗脳され出してる(笑)。大分空港から1時間ぐらい車でかかるので、そうすると入ったときの感動がまた2倍、3倍になります。秘境って、なかなかたどり着かないっていう、そのよさがあるじゃないですか。すぐに手に入らないっていう。
編集部 そういう意味では発想の転換ですね。お湯が沸かなかった弱みを、強みに変えるという。
この記事を書いた人
スポーツ新聞社、編集プロダクションを経て宝島社に入社。2014年よりsmart編集部に所属し、2022年9月よりsmart Webの専任担当。タレント特集を中心に、ファッション、スニーカー、腕時計、美容などを幅広く担当。3度のメシより野球好きで、幼稚園年長の頃からの熱狂的な東京ヤクルトスワローズファン。最近はサウナにハマっており、smartサウナ部の広報担当も兼務。
Website:https://smartmag.jp/
お問い合わせ:smartofficial@takarajimasha.co.jp
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