村上隆率いるカイカイキキ所属ob(オビ)に注目。新世代アーティストが描く幻想的な少女とは?
執筆者: smart編集部
吸い込まれそうなまるい瞳の女の子と独特の色合いの作風が印象的なobさんの新作個展が、カイカイキキギャラリーで開催された。作家インタビューから見えた、個展に込めた想いとは。
「川崎の生田緑地で気分をリセットするのがおすすめな理由」軽めの登山ができて岡本太郎美術館もあって…
※
すべての“となりあうもの”への
メッセージ
村上隆率いるカイカイキキ所属アーティストob(オビ)が23年3月、カイカイキキギャラリーで3年ぶりの個展「となりあうもの」を開催した。obは1992年生まれの31歳。大学生のときにpixivで活動を開始し、SNS時代に生まれた新世代アーティストとして注目を集める。
ちなみにobという名前は、本名のアナグラムからきているそう。その後、「カオスラウンジ」というグループ展で村上隆と出会い、プロとして本格的に制作を開始するようになった。そこからの活躍は、国内やアジアで数々の展覧会、2013年にはshu uemuraとのコラボなどめざましい。2020年に開かれたカイカイキキギャラリーでの前回の個展「螺旋と春」は、蜷川実花のNetflexドラマ『FOLLOWERS』での女性画家の作品を担当した内容だった。この時期から新型コロナウイルスの感染拡大が世界を襲うのだが、obはパンデミック以降もニューヨークや韓国での個展、世界のアートフェアに出展したりなど、そのモチベーションはキープされ続けている。
obの絵の特徴は見れば一目でわかる大きな瞳の少女をモチーフとした幻想的で繊細な表現だ。霞がかかったような、ぼんやりとはしているが、しかしブルーに澄み切ったその世界は、obの精神世界を反映して奥深い。今回の個展「となりあうもの」ではそこに少し変化が生まれている。それまでのobが描く少女の瞳には瞳孔が黒く塗られていたが、新作では黒の部分が白くなっているものが多い。このことをobに聞いてみると「目についてはハイライトの表現にチャレンジしてみました。女の子の目って、世界にある普遍性のカタチ、月とか水面とか太陽の光とかのいろんな姿に見えてくるんです。ちょうど月に太陽の光が当たってどんどんカタチが変わっていくように、目も瞳孔がないカタチになっていったりと変化しています。それと初期の頃は、女の子自身の気持ちが重要だったけれど、今は世界を反射しているというか、そこを意識しています」。
世界の反射、これは今回の個展でとても重要なキーワードになっている。obはこう語っている。「個展タイトルの『となりあうもの』というのは、自分のとなりにいるものを意識することです。それは決してネガティブな意味ではなく、となりにいる存在に対して自分が影響することを考えたいという意味です。
また国際情勢を考えたときに、日本でいえば台湾とか、隣の地域に対する意識ですね。さらに今回、動物や植物を描いていますが、犬や猫を描いているときに考えていたのは、コロナ禍でペットセラピーとして動物を飼う人が増えたけれど、ちゃんと育てられなかったケースもあったと聞いて、人だけでなくすべてのとなりにいるものを尊重して生きていけたらいいなと」。
コロナ禍で広がったアーティストの意識、その覚醒がobを新しい表現のステージに導いたことが見えた今回の個展だった。
©2023 ob/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.
Photography_SATOSHI OMURA
Text_HISANORI NUKADA
この記事の画像一覧
この記事を書いた人
ファッション、カルチャー、ライフスタイルなど、今旬なモノ、コトを厳選してピックアップ。モノ・コトに加えて、“時代の顔”ともいうべき人物をファッションモデルに起用するのはもちろん、インタビューでその人となりに迫るなど、smartを読めば“今”がわかります!
Instagram:@smart_tkj
Website:https://smartmag.jp/
お問い合わせ:smartofficial@takarajimasha.co.jp
この記事をシェアする
この記事のタグ