時代遅れの「男らしさ」はもういらない。 40代テレビマンがロールモデルと推す小説家・燃え殻が体現する“しなやかな大人の余裕”とは?
執筆者: ライター・コラムニスト/ミクニシオリ
本音を口にしないのも「大人の余裕」

「まさに令和的な大人の余裕を学べる本」、とテレビマン。たしかに、くだらない日々をあるがままに語る燃え殻さんの文体には、何かを批評してやろうという力みも感じられない。「あの日行ったラブホの、毛玉だらけの赤い絨毯」とか、他人からすればなんでもないような情景が、上げるでも下げるでもなく書かれている。
「その、上げるでも下げるでもないというのが、普通に生きていると案外難しい。みんな、誰かに話したくなるような出来事には“オチ”をつけたくなるじゃないですか。オチを際立たせるために、誰かを必要以上に下げたり、批判したりしてしまうもの。『これはいつかのあなたとわたし』を読んでいると、自分もフラットな視点に戻れる気がするんです。
話しているときは楽しいんだけど、誰かや何かの肩を持ったり、妙に敵対したりするのって、結果的には疲れることだと思うんですよね。分かっているのに、ネットを見てたり、酒飲んでたりするとくだを巻いて批評したくなっちゃうんですよ。そう考えると、燃え殻さんの文体は超低燃費。この本を読んでつまらなかったと思う人がいたとしても、誰も燃え殻さんを嫌いになったりはしないと思うんですよね」
「嫌われる勇気を持とう」なんて本が平成の後期に流行したが、本書から垣間見える燃え殻さんの生き方はもっとナチュラルで「言わぬが仏」を本気で体現しているような感じだ。
「本人視点のエッセイだから、思ったことを思ったままには伝えていないのが、文章を通して分かる。それが燃え殻さんの処世術なのかなって感じます。僕なんてバカだから、よく思ったことをそのまま言って、彼女とも友達とも、大ゲンカになるんです。僕のこの性分は治らないかもしれないけど、燃え殻さんのエッセイから学べる謙虚さを参考にしたいとは思うんです。
エッセイのエピソードを読んでみると、燃え殻さんはきちんと、仕事の中で男のコミュニケーションをこなしていると思うんですよ。周囲にバカな人がいれば、朝まで飲み会に付き合ったりもするし、頼まれごともちゃんと請け負う。だけど本音は言わないし、スマート風を装っているのに、本の中ではクローズドに、愚痴っているんですよ。ある意味しなやかだし、したたかでもありますよね。そこがいいなって思うんです」
この記事を書いた人
ファッション誌や週刊誌、WEBメディアなどで幅広く活動。女性向けのインタビュー取材や、等身大なコラム執筆を積極的に行う。いくつになってもキュンとしたい、恋愛ドラマと恋バナ大好き人間。
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