『あんぱん』ヒロインの同期役・鳴海唯が語る、“アンパンマンになりたい”と願った日
執筆者: ライター/石野志帆
女優に「向いてないかも」と思った過去も “準備が自信になる”という気づきで前を向く現在
――前回出演された2019年の朝ドラ『なつぞら』では、ヒロインの妹である明美役としてテレビドラマ初出演でした。前回と比べて、この6年で女優としてご自身にどんな変化があったと思いますか?
鳴海 当時は初めての出演作だったこともあって、憧れの先輩方と共演させていただける喜びや緊張感というすごくフレッシュな感情が渦巻いていたのかなと思います。そこから6年で出会ってきた作品で得た経験を、今回の作品で活かすことができたらいいなと思って臨みました。そういった意味では、前回の朝ドラ出演時と比べて、だいぶ視野を広げて作品全体のことを考えながらできるようになったのかなとは思いますね。
――――子供のころから女優になりたいという夢を抱き、2017年に映画『ちはやふる』のエキストラに参加されたことをきっかけに上京された鳴海さん。夢に向かって踏み出した数年後、初めて朝ドラという現場に立たれたとき、どんな思いが込み上げてきましたか?
鳴海 朝ドラというのは、観てくださる方や楽しみに待ってくださる方が本当にたくさんいるので、役者であれば誰もが憧れる舞台です。現場に入る前は本当に緊張していたのを覚えています。でも現場に入ると、その緊張感とともに、「やるしかない」「やってやるぞ」という気持ちは持ち合わせていた気がします。
――今回2作目の朝ドラに出演するにあたって、当時の上京したてのご自分にかけてあげたい言葉はありますか?
鳴海 実は当時は「(女優に)向いてないんだろうな」と思っていた時期だったんです。なので、「少なくともその後6年は続けられるから、ありのままで頑張って!」と言いたいですね(笑)。
――どんなときに「向いていない」と思ったのでしょうか?
鳴海 憧れだった先輩方と共演させていただけるプロフェッショナルな現場に入るなかで、「どれだけできないことが多いのか」「どれだけ無知なのか」というのを、改めて感じさせられたんです。自分が“無知”の状態のときはパワーがみなぎっているんですけど、いざプロの方とご一緒すると、どれほどの差があるのかを、明確に突きつけられる感覚がありました。その全貌が見えてくると、余計自信をなくしてしまったりすることがあって。そういった意味で当時は不安で、「向いていないかもしれない」「乗り越えられないかもしれない」と感じることがありました。
――その後、大河ドラマ『どうする家康』をはじめ、ギャラクシー賞を受賞したNHK土曜ドラマ『地震のあとで』など、話題の映像作品に数々出演されてきました。そうした経験は大きな自信につながったのではないでしょうか?
鳴海 自信は正直、今もないです(苦笑)。でも最近は、「自信は人を輝かせてくれるものだ」と思うようになってきたので、表に立っているときは“張りぼて”でもいいから自信がある自分でいたいなとは思っています。一方で、「自信の差は、準備の差でもある」と最近気づきました。自信というのは、最初から備わっているものではなく、時間をかけて準備することで、ようやく“自信があるように見える”状態が作られるんだと思うんです。なので、そのための準備を怠らないということを心がけたいなと思うようになってきました。
この記事を書いた人
TV局ディレクターや心理カウンセラーを経て、心を動かす発見を伝えるライター。趣味はリアリティーショー鑑賞や食べ歩き。海外在住経験から、はじめて食べる異国料理を口にすることが喜び。ソロ活好きが高じて、居合わせた人たちの雑談から社会のトレンドをキャッチしている。
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