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連載山谷花純の映画連載「All is True」

「20代、30代未婚女子のリアルを描く」女子は自分の悪い顔を見ている感覚になり、男子はスカッとできる作品【ドラマ『結婚詐欺師と堕ちる女』山谷花純×田島亮対談】

執筆者: ライター・エディター/佐藤玲美

ドキュメンタリーから実際に起こった事件を題材にした作品まで

ショートドラマアプリBUMP(バンプ)で配信されるドラマ『結婚詐欺師と堕ちる女』で共演を果たした山谷花純と田島亮

山谷「そして2作目の田島さんのおすすめが『コレクティブ 国家の嘘』。これね、まだ私、ちゃんと観れていなくて……」

田島「ドラマの『アバランチ』で記者役をいただいたときに、それこそリファレンスを探していて。実際の週刊雑誌の記者にインタビューしたりしている中で見つけた作品。ドキュメンタリー作品なんだけど、観ている最中に、これってドラマなの?って途中で感覚がおかしくなってくるんだよね。それはカットバック(複数のシーンを交互に映し出す編集技法)という手法を使っていて、電話しながらメールの寄りのカットが入ったり、俯瞰(ふかん)している画面が写ったりして。会話にも受け手があって、これって2回撮影しないとできないんじゃないっていうシーンがあったり。たぶん、その主人公の記者とそれを撮っているチームがタッグを組んで国を変えようとしてたんじゃないかって、この作品が作られた裏側まで気持ちが持っていかれて。ルーマニアの作品なんだけど、民主主義はなんぞや、今の政治はよくないよねっていうのを訴える作品で、完全にそのテーマありきで、シーンを考えながらドキュメンタリーを作っていってる」

山谷「まだ、全部観終わってないのに何を語ってんだよって話なんだけど、(ドキュメンタリーとして)リアルタイムでカメラを回しているのとは違うってことだよね。基本(ドキュメンタリーは)1つのカメラでずっとついていくもので、この作品にも手ブレも含めてその臨場感は伝わってくるんだけど、冷静な視点が入っているからすごく不思議な感覚になる」

田島「その作品の中で起きていることはすべて現実なんだけど、フィクション(物語)の撮り方をしているから役者としてはすごく(観ると)ためになる作品。人ってこういうときにこういう風に睨むんだとか、究極のリアリティだからある種一番いい状態の演技が観られる」

山谷「題材になっているのは知っておくべき現実だもんね」

田島「この作品との出会いで、記者役は(『アバランチ』で演じたあとも)一生一番やりたい役。記者大好き(笑)。主人公のジャーナリズムがめっちゃかっこよくて」

山谷「私も最後まで観たら記者役がやりたくなるかな。そして、もう一つのおすすめの作品が『ホテル・ムンバイ』」

田島「2008年にムンバイでIS(アイ・エス)が起こした同時多発テロの際に標的となった五つ星のホテルが物語の舞台。閉じ込められて人質になった宿泊客と、プロとして彼らを救おうとしたホテルマンを描いた物語なんだよね。これは現実に起こった話を映画化しているんだけど、演技のレベルが高すぎて本当に大好きな作品」

山谷「田島さんって、本当にお芝居好きだよね。全部吸収しようっていう」

田島「演技マニアみたいなところもあって、ちょっとそういう楽しみをsmart読者のみなさんに提供できたらいいかなっていう思惑もあって作品を選んだ。で、本題に戻ると『ホテル・ムンバイ』は今クールのドラマ『御上先生』の脚本を書いている詩森ろばさんと舞台を作っているときに、一緒に観に行ったんだよ。あの人、『新聞記者』っていう映画で日本アカデミー賞の優秀脚本賞に選ばれている人なのに、物語に没入しちゃって、映画を観ながら『バカッ!』とか叫んでて。ろばさんのようなスペシャリストを世界に巻き込んじゃう力があるくらい、全てが演技に見えないんだよね」

山谷「それってすごいね」

田島「本当にすごいんだけど、その作品の製作総指揮に名を連ねているのが、僕と同い年くらいの役者さんで『スラムドッグ・ミリオネア』ではスラム街出身の、無学の青年を演じたデブ・パテル。役者としては主役ではなく5番手ぐらいを演じているんだよね。それもかっこいい。テロを起こす側にも彼らなりの理由があるんだろうっていう視点まで描かれているんだけど、その語り口とかがね、本当にすごいんだよね」

山谷「読者のために、そのテロ組織IS(アイ・エス)というのは?」

田島「テロ組織のイスラム国(Islamic State)の略、なんだけどぜひ、中田(敦彦)あっちゃんの『ISとはなにか?』っていうYouTubeをチェックしてから、作品を観るとわかりやすいと思う。ビン・ラディンという人が何をしたのかっていうところから遡ってsmart読者にも知ってほしい」

山谷「実際に世界で起こっていることを、問題提起できるのも芝居だったりするよね。どうやって観る作品を選んでいるの?」

田島「蜷川(幸雄)さんと初めてお会いしたときに、年間100本観るという約束をしてからは、もう手当たり次第っていう感じで観ていて。それから、だんだん自分の好みがわかるようになって。なので、好みとヒットするものをセレクトしたり、あとは人からオススメされるものからも出会いがあったりして。他にもアカデミー賞を獲った作品はチェックしたり。いろいろな方向から、幅広く作品を観るようにしているかもしれない。でも花純ちゃんもいろんな作品を観ているよね」

山谷「最近は観られてないかも。ほとんどアニメ作品しか観てない」

田島「花純ちゃんの最近のオススメも聴きたいな」

山谷「役者をやっているとちょっと(作り手の思いを読み解くのが)難しい作品を言っておいたほうが、わかってるなって思われるんじゃないかって、そういう作品ばかり選んでいた時期もあって。それこそ邦画よりも洋画のほうがいいかなとかね。でも、本当はファンタジー映画が大好き。自分が役者になるまでは、空想の世界に没入するのが好きだったの。そんなこんなで大人になった今、やっぱり中島哲也監督の作品が大好きで。大人になったら忘れてしまうような大切なことを、色彩豊かでポップな世界観で奇抜な物語にして届けている作風って素敵だなって。中でも代表的なのが『パコと魔法の絵本』。大人たちが『ゲロゲ〜ロ』とかセリフを言ったり、へんてこな格好をしながら一生懸命に全力で役を生きている姿が輝いて見えて。絵本のページをめくるような感覚で作品を観ていたのが、映画を好きになるきっかけ。今不思議なことに自分が演じる立場に居るんだけどね。

娯楽としても楽しい作品だし、芝居の根本的な大切さも改めて感じられる作品だなって思う。この連載では大人になってから好きになったデヴィッド・フィンチャー監督の作品とか紹介してきたけど、自分の根本的な部分では、ファンタジーとかホロッて泣けちゃうような作品なんだ。田島さんが『さかなのこ』が好きって言ってくれたのもあって、そういう子供時代から好きな作品を、smart読者のみなさんに紹介したいなって改めて思った」

この記事を書いた人

東京在住のライター・エディター。『smart』『sweet』『steady.』『InRed』など、ウィメンズ、メンズを問わず様々なファッション誌やファッション関連のwebでライター&編集者として活動中。写真集やスタイルブック、料理本、恋愛心理、インテリア関連、メンタル&ヘルスケアなどの本の編集にも携わる。独身。ネコ好き。得意ジャンルはファッション、ビューティー、インテリア、サブカル、音楽、ペット、料理、お酒、カフェ、旅、暮らし、雑貨など。

Instagram:@remisatoh

Website:https://smartmag.jp/

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