「GDCの復活は、自分自身の総括」トップスタイリスト熊谷隆志が伝説のブランドを再始動させる理由
執筆者: smart編集部
365日働いて、365日遊んでいた“あの頃”
――1998年にスタートしたGDCは、ストリートブームを牽引するブランドだったと思います。雑誌の影響力もすごかった時代で、Kj(Dragon Ashの降谷建志)表紙のsmartは即完だったとか。当時のことは覚えていらっしゃいますか?
熊谷:細部は覚えてないんですけど、すごく楽しかったという記憶はあります。当時のムックとか、今振り返るとすごく豪華。長澤まさみさんとか浅野忠信くんとかKjくんとか。今だったらこんなにみんなで出てくれないよね。
――実際、smart編集部のみなさんはどう感じていらしたんですか?
smart編集部:当時は本当にすごいムーブメントでした。モデルさんもタレントさんも熊谷さんにスタイリングしてもらえると、着こなしも変わるし、それだけで格が上がるから、みんなむしろ出たい出たいってリクエストが絶えない、みたいな。あとはやっぱり熊谷さん自身の人気もすごくて。スタイリストが雑誌の中でスタイルを打ち出す、みたいなことも熊谷さんからスタートしたと思います。
熊谷:確かに。Tシャツ特集っていうのを業界でたぶん最初に仕掛けたかもね。それこそ、街の人にも声かけて100枚ばーっと載せるとか。他にも面白い企画をたくさんやらせてもらったね。
smart編集部:今だったら実現不可能な企画もあったかもしれないですね(笑)。発想がとにかくユニークで、熊谷さんのページは大人気でした。当時、熊谷さんの連載を担当してたんですけど、ページの小さい枠に熊谷さんのアシスタント募集って出すと、応募履歴書が異常なほどすごくきてましたね。もう編集部の机が埋まるくらい。
――ご自身のブランドもやりつつ、スタイリストとしてひっぱりダコの時期だったんですね。スケジュールが大変なことになってそう。
熊谷:スケジュールはすごかったですよ。全部同時進行。アシスタント何人かでリースや返却に行ってる間にブランドの打ち合わせをして、そのあと編集部と打ち合わせして深夜までコーディネイトを組んで、早朝から撮影して。365日働いて、365日遊んでました。
23歳から33歳まではとにかく、GDCをやってたりsmartをやったり、クラブに行ったり、とにかく突っ走ってましたね。でも、33歳で全部疲れちゃって、一旦リセットしたくなった。それもあって葉山でサーフィンをやったり、米軍ハウスを借りたりして少しのんびりし始めましたけど。
――まさに熱狂の渦とともにあったブランドなんですね。今回のGDCに関しては、どのような構想を練っているんですか?
熊谷:そうですね。当時はなかったSNSとかもありますから。それをどうやって取り入れようとか。ものづくりにどうAIを使っていこうかとか、そういう新しい面白そうなことは全部企(たくら)んでいます。一方で、コロナ禍で世の中がオンラインに偏ったけど、オフラインに戻ってきている感覚もあって。だからお店もちゃんと作って、最初っからもうよーいドンで多方面に展開していこうかな、と。
――全方位でスタートするんですね! オフラインに戻ってきているというのは、またストリートムーブメントが新しく始まるっていう感覚もあったりしますか?
熊谷:どうなんだろう。今の若い人を見ていると、ファッションは細分化しているし、個人的なスタイルになっている感じがあるから。ムーブメントというより深い方向に進んでいる気がしますね。でも、少し前は海外のヒップホップセレブが格好いいみたいな感じでしたけど、今の若い人たちって、日本のファッションが格好いいんじゃない?みたいな感じで、日本やヨーロッパに目を向けている人が多い気がしますね。その感覚って、僕の若い頃の時代と一緒だからね。不思議だけど面白いなって感じますよ。
あとはオンラインが強いと地方のお店とかに目が向かなくなっちゃうんだけど、逆に今って地方が独自に都市化していて、ムーブメントが分散されているからこそ面白かったりしているのかなと。だから地方でフランチャイズ展開するとか、そういうことも考えていきたいと思ってるんですよね。あとは海外。今までは香港と中国と台湾が主流だったと思うんですけど、タイやマレーシア、インドネシアもめちゃくちゃ元気なので。どんどん展開を広げていけば面白いことができそうだなと思っています。
――従来のファンの方に向けたメモリアルなブランドというよりは、新しいターゲットに向けたGDCになっていく?
熊谷:もちろん、GDCを着てくれていた同世代や古いファンも大事にしつつ、アップデートしていくイメージですね。今回GDCを知ってくれた子が「GDCって、もしかして親父のクローゼットにあったアレか!」みたいな感じで入ってもらえたらいいなって思います。
――コレクション初期のリバイバルアイテムも登場する予定ですか?
熊谷:はい。復活させるアイテムもありますね。昔めちゃめちゃ流行った「Kinski」シリーズとか。ただ、昔は何も考えないで作っちゃってたんですけど、今回はボディをオリジナルで作ったり、コピー対策や攻め方はもう少し考えてるかな。単なるリバイバルというより、さらに面白くなると思います。新しいアイテムもかなりこだわって作っているので、早くみなさんに見てもらいたいですね。
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