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「簡単に何者かになれるなんて、そんなの嘘」“バンドマン経由でイラストレーターへ”朝際イコが明かす自己表現の見つけ方ジェニーハイ「超最悪」のアートワークも担当

執筆者: 音楽家・記者/小池直也

無駄足はいくら踏んでもいい

「令和のネオ大正浪漫」を掲げるイラストレーター朝際イコ インタビュー

――自分のスタイルを見つけられずに悩んでいる人に助言をするとしたら?

朝際:私は好きなものを結構わかりやすく「好き」と言っちゃうタイプなんですよ。だから普通の生活で「これが好き」と言えるし、SNSにガンガン好きなものを書いちゃいます。でもそれって意外と難しいみたいですね。

「そんなものが好きなの?」と言われるのが恥ずかしいのかもしれないけど、結局「これが好き」という気持ちこそが個性。個性は作るものではなく、好きなものをかき集めてミックスされたものだから、それを自分に自覚させてあげるためにも口に出して「好き」と言うのが大切な気がするんです。

それはアーティストさんにとっても単純に喜びなんですよ。「このイラストレーターさんが好き」とか「このバンドが好き」と発信するだけでも、SNSでエゴサーチしている人はたくさんいますから。「好き」と表明することに悪いことは少ないはず。

――「それがなぜ好きなのか?」という理由も大切になってくる気がします。

朝際:確かに。「最低限、好きな理由をひとつは言語化する」と意識すると自分のスタイルを作るときにヒントになるかもしれません。だから好きな理由を考えてみることもオススメします。

――ところで、今日着ている着物は?

朝際:これは国立のアンティーク・ジョンの着物からお借りしました。近くの高校に通っていたので、登下校中に見て「可愛い着物があるな。でも高いんだろうな」と憧れていたんですよ。ちょっとお金がちょっと手に入る大人になってから買い始めて。

ヴィンテージ系の店だと高いけど、アンティーク・ジョンは価格感もいい感じで銘仙などの大正時代の着物が手に入りやすいと思います。

――本日の撮影場所である代々木上原・富士東洋理髪店もお気に入りの理容院だとか。

朝際:店主の阿部高大さんとは仲良くさせていただいてます。いつも「やりたいようにやってください」とオーダーして切ってもらっています。やっぱり着物でお店に来て、おかっぱにして帰ると「いい休日を過ごしたな」という気持ちになれるんですよ。

朝際イコ

――2025年はどのような活動をされる予定ですか?

朝際:漫画をめっちゃ頑張ると思います。やっぱり楽しいし、一番求められていると思うので。それにイラストより漫画のほうが向いてる気がしているんですよ。画力が必要なイラストに比べて、漫画は絵以外の要素でも読者を楽しませることができる、好きな要素を存分に入れられる世界。ここで来年は頑張りたいと思っています。

あと年明けから新しい音楽プロジェクト「常世ノ国」を始めます。せっかく音楽もアニメも漫画も曲も自分で作ることができるので「セルフメディアミックス」をしてみようと。2025年になった瞬間に新曲発表をするのですが、実は既に2本のアニメMVを公開しているのでぜひ見てみてください。

――それは楽しみです。どんなメンバーで制作されているんですか。

朝際:メンバーは20代をともにしたROLLICKSOME SCHEMEのメンバーです。高校時代から17年も連れ添った仲なので安心感、信頼感がありますね。絵に集中しながらいろいろなことを吸収して、また音楽に帰ってきました。こういう遠回りも嫌いじゃないです。

タイパとかコスパとかの価値観と程遠いのが私なのかもしれない(笑)。簡単に何者かになれるなんて、そんなの嘘ですから。ちゃんと時間をかけるべきですよ。そのための無駄足はいくらでも踏んでいいんじゃないかな。

朝際イコ

Profile/朝際イコ(あさぎわ・いこ)

2021年より本格的にイラストレーターとして活動を開始。

「大正80年生まれ」の「ネオ大正浪漫」を自称。女給、メイド、日本刀、伝統玩具など戦前戦後問わず日本的なモチーフをビビッドな色合いで表現する。表現はイラストに限らず音楽、アニメ、漫画、着物を中心としたファッションなど多岐に渡る。

自身の描く世界を現実世界に再現する活動もしている。

Instagram:icoasagiwa815
X;@IcoAsagiwa

朝際イコ

取材協力/富士東洋理髪店
住所:東京都渋谷区大山町1-22 BlueLeaf大山町 1階
Instagram:@fujioriental_barbershop

衣装協力/アンティーク・ジョン
住所:東京都国立市東2-16-13
Instagram:@antique.john

撮影=西村満
インタビュー&文=小池直也

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  • 行きつけだという富士東洋理髪店での朝際イコ
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この記事を書いた人

音楽家/記者。1987年生まれのゆとり第1世代、山梨出身。明治大学文学部卒で日本近代文学を専攻していた。自らもサックスプレイヤーであることから、音楽を中心としたカルチャー全般の取材に携わる。最も得意とするのはジャズやヒップホップ、R&Bなどのブラックミュージック。00年代のファッション雑誌を愛読していたこともあり、そこに掲載されうる内容の取材はほぼ対応可能です。

X:@naoyakoike

Website:https://smartmag.jp/

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