【海のはじまり】“夏美先生”山谷花純が作品に込めた思い「子どもたちの眼差しから伝わる感情をこぼさずに受け止めたい」
執筆者: ライター・エディター/佐藤玲美
山谷花純の快進撃が止まらない。今クールでは、月9ドラマ『海のはじまり』にレギュラー出演中。その前も『アンメット ある脳外科医の日記』、『いちばんすきな花』(いずれもフジテレビ系)など、様々な話題作に出演し、注目を集めている。smart Webでは、『All is true』と題した、映画レビュー連載も大好評の山谷花純に、現在出演中のドラマ『海のはじまり』にかける思いを語ってもらった。後半戦へと物語が続いていく『海のはじまり』を観るのがさらに面白くなるトリビアもお届けしちゃいます。
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今クールで話題沸騰中のドラマ『海のはじまり』で先生役を熱演中!
今クールの月9ドラマ『海のはじまり』(フジテレビ系)は、様々な形の“親と子”のつながりを通して描く愛の物語。
あらすじ
東京の印刷会社に勤務する月岡夏(目黒蓮)には、化粧品メーカーで働く百瀬弥生(有村架純)という恋人がいる。ある日、夏は大学時代に付き合っていた南雲水季(古川琴音)が死んだことを友人の連絡で知る。水季の葬式で、夏は南雲海(泉谷星奈)という女の子と出会う。海は自分と水季の子どもであった。そのことを夏は水季の母・南雲朱音(大竹しのぶ)から聞かされたことから、物語は動き出していく。
この作品で山谷は、主人公の娘である海の担任の先生・乃木夏美を演じている。
――山谷さんが演じている夏美先生はどんな人ですか?
山谷花純(以下、山谷)「クランクインの前にプロデューサーの村瀬(健)さんと風間(太樹)監督から、夏美先生は一見ドライに見えるけど、心の中では生徒一人ひとりに愛情を持って向き合っている先生という説明を受けました。その説明を受けて、子どもたちと接する演技では、変に子供扱いをせずに一人の人間として向き合うような見え方になるようにお芝居をしています」
――子役のみなさんとはどのようにコミュニケーションを取っているのでしょうか?
山谷「先生と生徒という役柄の関係性のまま過ごしています。なので、現場で騒いでいる子どもがいたら『みんな、静かにしよう』みたいに、先生という立場を利用して注意したり(笑)。この役に入ってから、他の現場でもヘアメイクさんをはじめ、スタッフさんに『学園モノのドラマに入ったことがありますか?』とお伺いするようになったんです。そうやって話を聞いていくと、やはり先生役の方が、役を利用して子どもたちをまとめているという話を聞いたので、私自身も実践してみています。そうやって話を聞いていく中で、小学校や中学校、高校など、生徒たちの年齢によっても先生役と生徒役の関係性は変わってくる、というお話をお伺いしたりして、すごく面白いなと思いました」
――山谷さんは、役に入る前に役作りを大切にしているというお話を以前されていましたが、今回、夏美先生を演じるためにしたことはありますか?
山谷「今回は、変に作り込んで演じるというより、その場の子どもたちの眼差しから伝わってくる感情をこぼさずにキャッチしながら演じていこうと思ったんです。現場で子どもたちと向き合い、大切にお芝居をしていたら、おのずと役が見えてくるんじゃないかなと思ったんですね。なので、現場に入ってから撮影中までいつも以上にアンテナを張り巡らせながら役と向き合っています」
――先生として、子どもたちと向き合ってみて感じたことはありましたか?
山谷「クラスには30人の子どもたちがいるのですが、一人ひとりの個性がちゃんと見えてくるんです。引っ込み思案の子もいれば、目立ちたがり屋さんもいるし、仕事だということを理解している子もいて。先生役を演じてみて、教壇から見える景色ってすごく興味深いということも新たな発見でしたね」
――その他の共演者の方とのやりとりで印象に残っていることはありますか?
山谷「主人公の夏役の目黒(連)さんは、同い年ということもあってお話できたらいいなと思っていたんです。ご一緒させていただいたときは、とても静かな雰囲気でお話の聞き役をされている印象だったのですが、唯一ほっぺと口角をキュッと上げてやさしいお顔でお話されていたのが、海ちゃん役の(泉谷)星奈ちゃんのことで。それを見て、気持ちはもうお父さんなんだなって感じました。お芝居もすごく集中して取り組まれる方だと聞いていたので、目黒さんと星奈ちゃんがすごく近い距離で一緒にいるんだなと感じて。二人ならではの距離感や信頼関係ができあがっているんだなっていうのを、担任の夏美先生目線で感じましたね」
――作品は神奈川県の小田原市が舞台になっていますが、山谷さんも小田原で撮影されているんですか?
山谷「学校のシーンは別の場所で撮影しています。実際の小学校で撮影しているので、セットとは違う生っぽさがあるんですね。私も小学校に行くのは久しぶりだったのですが、大人になって行ってみるとテーマパークみたいで楽しいです。小田原で撮影するチームはみんなこんがり焼けています(笑)」
『海のはじまり』は人間の根本的な部分にスポットを当てた作品
――『海のはじまり』は、大学時代に付き合っていた水季が主人公・夏の子どもを生んでいたことを7年後、水季のお葬式で知るところから物語がはじまります。山谷さんがこのストーリーを読んだときに感じたことは?
山谷「家族を題材にしている作品ではあるのですが、一人ひとりの生き方を丁寧に描いていて、綺麗事だけじゃ済まされないし、なんでも思う通りには進んでいかないということをすごく真正面から捉えて伝えている作品だと思います。台本を読ませていただいたときに、第一話で『夏くん、パパはいつ始まるの?』という海ちゃんのセリフがあったんですけど、それを読んだときに『大人のはじまりってどこからだったんだろう?』って思ったんです。私も年齢的には大人だけど、自分の中で大人がはじまったのって、どこだったんだろうなって。今回は家族や血の繋がりという、普段の生活であまり表に出てこない部分にスポットを当てつつ、もっと根本的な『人間とは』という部分に対して問いかけて、それぞれが考えるきっかけになる作品なんだろうなと思いました」
――誰も悪くないけど、何気ない一言に誰かが傷ついていたり、そういった心の揺らぎも丁寧に描かれていると感じました。
山谷「登場する人物はみんな正直なんですよね。普段、みなさんが日々誰かと出会って話している中で見落とされがちな部分にスポットを当てているから、自分の人生や自分の考え方と似ているなと思える登場人物がそれぞれ見つけられるんじゃないかなと思います」
――山谷さんは、夏美先生以外で、気持ちを投影できる登場人物はいらっしゃいますか?
山谷「水季のようなジャンルに分類されることが多いと思うけど、人としてあんなにかっこよくは生きられないと思います。そう思うからこそ、ああいう女性になりたいなって憧れる部分がありますね」
――有村架純さん演じる弥生の柔らかでしなやかな強さとの対比も描かれていますね。
山谷「そうですね、そういう意味では水季と弥生を足して2で割ったら、今の私に近いのかなと感じます。上手に伝えられず、抱えてきたものもありますからね。水季のように思ったことを素直に言える場所もあるけど、そうじゃない部分もあって。たぶん、人間っていろんな部分を持っているんじゃないかなと思います」
――8月5日放送の第6話では、水季が海を産んだ理由に弥生が関わっていたという真相も明かされました。
山谷「今のところ、10話まで台本が仕上がっていて、10話まででもいろんな展開があって割と早く物語が進んでいくので、この物語がどこで着地を迎えるのかが私自身も楽しみなんです」
――ドラマが放送されるたびに、SNSでも感想や今後の伏線回収の考察など様々な意見が盛り上がっているのもそういったところが理由なんでしょうね。
山谷「脚本家の生方(美久)さんの選ぶ言葉がすごいなと思っていて。言葉のラリーは多いけど、短い一言でみんなが口に出せなかったことを汲み取らせて伝えていくような脚本を作られているなと思います。セリフもよりナチュラルで、語尾とかも柔らかく紡いでくださっているからこそ、役者も読みやすいし演じやすいし、感情移入しやすいんですよね。だからこそ、ドラマを見ている方の心にもすんなり言葉が入っていくのかなと思います」
ヒット作『silent』『いちばんすきな花』との共通点とそこに描かれる透明感のある世界
――ここ最近の話題作『silent』『いちばんすきな花』(ともにフジテレビ系)も演出・風間さん(※『silent』のみ)、高野(舞)さん、プロデュースは村瀬さん、脚本は生方さんというチームで作られています。山谷さんはすべての作品に出演されているんですよね。このメンバーならではの作品作りをどう感じていますか?
山谷「いろんな現場と比べても、若いスタッフが多いなと感じます。この現場に共通するのは、みんなの意見をきちんと受け入れようとしていることなんじゃないかなと思うんですよね。一方的に要望を伝えるだけじゃなく、いろんな人たちの価値観をすり合わせてよりよいものにしていこうという考え方を持つ方々が集まっているんじゃないかなと思います。ワンシーンを撮影するにしても、毎回みんなで話してから撮影に挑んでいるので、同じ気持ちで作品に入っていけるんです」
――それは、スタッフさんだけでなく俳優さんも含めてですか?
山谷「はい。台本を読んでどう感じたかを話したりとか。それは、大人だけじゃなくて海ちゃん役の星奈ちゃんに対しても同じように接していて。『ここのシーンは、こういうことが起こるから悲しいよね、星奈ちゃんはどう思う?』みたいに一人の女優さんとしてお話をして向き合っていらっしゃるんです。それを見ていると私ももっと台本を読み込もうって思うし、次の撮影までにもっと掘り下げておこうという気持ちになるんですね。そういう相乗効果がこの作品をよりよいものにしているのかなという思いはあります」
――そして、この3作品は、扱っているテーマは違うし、人間の美しさだけを描いているわけではないけれど、ドラマから感じる透明度の高い空気感は共通しているように感じます。
山谷「心からあふれてくる感情を大切に切り取っている作品だからだと思います。ドラマというフィクションではあるけど、その現場で湧き上がった役者同士の感情のキャッチボールを繊細に汲み取って作っているからこそ、みなさんの心にすっと染み込んでいくようなものができるんじゃないかなと」
――山谷さんは『いちばんすきな花』で、出版社の社員を演じていましたが、実は『乃木夏美』という役名なんですよね?
山谷「実は、その前に出演した『silent』の役も『乃木夏美』なんです。あまり明かされていないんですけど、社員証に『乃木夏美』の名前が入っていたんですね。ただ、『silent』と『いちばんすきな花』は、主人公の同僚としてリンクしているのですが、今回の夏美先生は名前だけバトンリレーして、まったく別の人物になっているんです。同じ名前の役で違う人物を演じるっていうちょっと不思議なことになっているんです(笑)」
――まさにパラレルワールド(笑)。
山谷「どれくらいの人が気づいているのかなとか、ちょっと面白い部分ではあります(笑)。これは村瀬さんと生方さんの遊び心で、弥生と同じ会社の後輩・三谷彩子役で出演している杏花(きょうか)も『いちばんすきな花』に同じ名前の役で出演しているんです。特に、今回は主人公の名前が『夏』なので、それと名前がかぶる『夏美』という役名は通常、ドラマでは使わないはずなんですよ。ちなみに有村(架純)さんとは役名ではなく『かすみ』という名前で被っているんですけどね(笑)。海ちゃんが物語の中で夏くんに『先生の名前は夏美っていうんだよ』って言うシーンなど、そういう描写も入れていただいています。そういう意味では生方作品の中で、一緒に歩んでいく存在として扱ってくださっているのかなと嬉しい思いがありますね」
――他にも、この3作品で共通するトリビア的なものがあったら教えていただきたいです!
山谷「ロケ地なんかもリンクしていたりするんです。『いちばんすきな花』の美容師さんが、『海のはじまり』ではヘアサロンに髪を切りに来ていたりとか。なので、これまで生方さんが携わった作品の中で出会った場所や人物などが散りばめられているんです。なので、注意深く見ていただけたら気がつけるとおもいます」
――水季が大好きだったという神奈川県が誇る銘菓『鳩サブレ』も大ヒットしているとのことですが、食べ物つながりで撮影現場では様々な差し入れがあるとお伺いしました。山谷さんが今までで印象に残っている差し入れはなんですか?
山谷「今回の作品ではないのですが『アンメット』の現場で杉咲花さんが差し入れてくださった『九州じゃんがらラーメン』は感動しました。ケータリングとして会議室で作ってくれて、できたてのラーメンをいただきました。他にも若葉竜也さんが吉野家のキッチンカーを差し入れてくださったり、プロデューサーの米田(孝)さんが自然食をテーマにしたケータリングを用意してくださったりして。それをみんなで輪になって食べたりしていたのが思い出に残っています。話題のスイーツの差し入れとかも嬉しいんですけど、現場で温かいものが食べられるのは、心がホッとする瞬間。同じ釜のめしを食べるということも素敵な経験になったなと思っています」
この記事を書いた人
東京在住のライター・エディター。『smart』『sweet』『steady.』『InRed』など、ウィメンズ、メンズを問わず様々なファッション誌やファッション関連のwebでライター&編集者として活動中。写真集やスタイルブック、料理本、恋愛心理、インテリア関連、メンタル&ヘルスケアなどの本の編集にも携わる。独身。ネコ好き。得意ジャンルはファッション、ビューティー、インテリア、サブカル、音楽、ペット、料理、お酒、カフェ、旅、暮らし、雑貨など。
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