【対談連載】あっこゴリラがあなたの心をむいちゃうゾ♥ ゴリラにおまかせ 第35回:根本宗子(劇作家・演出家・俳優)
先頃届いた、女王・あっこゴリラ初の舞台出演の報せ。おいおい、マジかよとジャングル(もとい編集部)がザワついたこのタイミングで、そんなオファーに踏み切った若き劇作家、根本宗子はやってきた。所作や出で立ちこそスマートだが、聞けばなるほど、彼女もなかなか辛酸を舐めてきた人物のようだ。舞台稽古に先駆けて、邂逅を果たした作家と演者。もちろん、ここの対談には今回も、筋書きなんてもんは何ひとつないぜ!
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ジャングルの掟:心優しき暴君、あっこゴリラが治める未開のジャングル。ここでは彼女が法であり、足を踏み入れる者はどんな理不尽も受け入れなければならない。なんだかんだ面倒見がいい女神を頼るべく、今日もまたひとり、悩める動物(人間)が彼女の元へと訪れる。
今月のお悩み:
「気づいたら先輩いねぇ!」ってなってます(根本宗子)
「つまんない演劇が多いから
私が何とかする!」とかって
叫んでる23歳でした。(根本宗子)
編集部:お二人はもともと面識があったんですか?
あっこゴリラ:いや、この間が初めましてですよね。
根本宗子:ですね。私が舞台出演のオファーをさせていただいて、そのご挨拶で。今回もよろしくお願いします。
あっこゴリラ:お願いします! でもこの〝先輩いない問題〟、私も超わかります。
根本宗子:男の人はいっぱいいるんですけど、女性でまったく同じ職種ってなると、一番歳が近い人が69歳になっちゃうんです。
あっこゴリラ:え、ヤバ!
根本宗子:女性劇作家って30歳くらいで〝この人がブーム!〟みたいなタームがあるんですけど、結婚とか、いろんな理由でみんな辞めちゃって。
あっこゴリラ:それは寂しい。下(の世代に)はいるんですよね?
根本宗子:いるんですけど、辞めてほしくないからちょっとでも続けやすい道を残しときたいんです(笑)。
あっこゴリラ:でもなんでそんなにその世代が少ないんですか?
根本宗子:昔はもっと演劇がテレビとかメディアと近かったんですよ。でも、それがどんどん離れて、ニッチなものになってしまって。
あっこゴリラ:テレビかぁ。
根本宗子:私はテレビ出ることにはさほど興味がないっていうのが本音なんですが、それをやる人がいよいよ誰もいなくなっちゃうなと思って、最近は呼ばれてイヤじゃなければ出ようみたいな気持ちにはなってます。
あっこゴリラ:出たら出たでイヤな思いしがちですよね。女性で作家! とかばっかり言われたり。今の私だったら「多様性について話してください!」とか。しかも、漂白された流行りの多様性みたいな。
編集部: 声を上げる女性像だけが欲しいんでしょうね。
根本宗子:そうですよね。3年ぐらい前にある番組から「●●先生と戦う女として出てほしい」っていう依頼があったんですけど、絶対イヤだと思いました(笑)。
あっこゴリラ:そんなん絶対ヤダ!(笑)
根本宗子:「●●先生に物申す若い女がいないから、根本さんいけませんか?」みたいな。いけないし、いきたくない(笑)。
あっこゴリラ:(笑)。そのときに理解者がいないのがつらいですね。それで私は自分が〝こういう先輩欲しかった〟みたいな大人になりたいと思うようになった。だからサボらないで頑張ろうって。
根本宗子: 後輩っていう意味では女優さんの相談を受けることも昔から多いんです。本当にプライベートのクソどうでもいいこととか。でも1カ月間一緒にいて、ものを作ってるんで、例えば彼氏にフラれて落ち込んでいるなら、何とかやる気を出させないと本番まで持っていけないので話を聞いてたんですけど、本当に助けたい相談って、100個あったら2個ぐらいなんですよ。
あっこゴリラ:(笑)。でも、世代で一緒くたにしちゃうのはアレだけど、その分同世代の繋がりが強くなった気はする。
根本宗子:自分自身、20代は今よりトガってたと思うし、敵味方みたいな意識が強かったんですけど、30歳頃になるとやっぱり味方はいないとな、と思うようになりました。守ってほしいとかじゃなくて、一緒の志を共有しながらものを作っていける人を大事にしようって。
編集部:その感覚ってキャスティングにも反映されてるんですか?
根本宗子:本当にそうですね。日本はミュージカル激弱国で、レプリカって言って海外の輸入作品をまんま、日本人が金髪のかつらをかぶってやるっていうのが主流なんですけど、それが昔から気持ち悪くて。もっと日本人ならではのものにしたくて、音楽の人と一緒にやる機会が増えてます。それもミュージカル界では風当たりが強いんですけどね。「邪道だ!」って。
本当の戦い方が何かわかるようになる。
中指の立て方を学ぶよね。(あっこゴリラ)
あっこゴリラ:居心地悪そうだなぁ。
根本宗子:でも、最近は自分の人格が一個になってきた気がして、だいぶ生きやすくはなりました。若い頃は〝みんなが思うねもしゅー〟みたいなのを察して、カーテンコールで叫んだりしてたんですよ。「つまんない演劇が多いから私が何とかする!」とかって。そんな23歳でした。もちろん今もそう思ってるんですけど、わざわざ敵を作る必要もないなって。
あっこゴリラ:うん、本当の戦い方が何かわかるようになる。中指の立て方を学ぶよね。誰彼構わずいってやんぞ! みたいな感じだったのが、それじゃ何も変えられないっていうのがわかってくると。
編集部:そういえば、今回あっこさんが舞台出演のオファーを受ける際にいくつか条件を出したと小耳に挟んだんですが。
あっこゴリラ:ハイ。どこの大御所だっていう感じで本当に申し訳ないんですけど。「もし自分のセリフで言いたくないものがあったら変えてもいいですか?」って聞いたら、「全然いいですよ」って。
根本宗子:あとは衣装とかメイクもですよね。「イヤなものはイヤだ」って。
あっこゴリラ:そうなんです。「私の主観で可愛くないと無理です」って。
根本宗子:でもそういうのを事前に言ってくださったことに誠実さを感じました。
編集部:オファーに対してそういう条件の提示っていうのはよくあるんですか?
根本宗子:事務所の方から言われることはありますよ。番手が一番メンドくさいですね。この人が一番目立つように書け!とか。役って受けと発信側があるんですけど、発信側のほうが演ってる感が見えるんですよ、客席から。だけど実はそれを受けてる人のほうが重要でとても技術がいるんですけど、目立たないんです。
あっこゴリラ:そんなことあるんですね!
根本宗子:でも、そもそも自分がやりたい人にしか役が書けないので、プロデューサーが用意した座組みで芝居を組んだことは一度もないんです。私は役者を駒だと思ってる演出家が好きじゃないし、「これだと自分らしくない」っていうことは言ってもらったほうが結果的に面白くなることもあると思ってるので。
あっこゴリラ: 私も、だったらやろう! みたいな。同世代で戦ってる人だから共感できることばっかりだったし。やっぱり周りに先輩がいなくても、同志がいなくても自分で見つけていかなきゃだめだね。
根本宗子:どこかにはいますからね。ずっとあっこさんのラジオを聴いてて、一緒にやってみたいなと思ってたんです。
あっこゴリラ:ラジオで人の話を聞くことを学んだんです(笑)。受けなら任せてください。
根本宗子:いや、あっこさんに受けの役を用意するつもりは、1ミリもないですよ(笑)。
結論:
同志がいなきゃ、自分で見つけに行こう!(あっこゴリラ)
PROFILE/あっこゴリラ
ドラマーとしてメジャーデビューを果たし、バンド解散後、ラッパーとしてゼロから下積みを重ねる。2017年には、日本初のフィメール(女性)のみのMCバトル『CINDERELLA MCBATTLE』で優勝。2018年12月に1stフルアルバム『GRRRLISM』をリリースし、世の中の〝普通〟を揺るがす楽曲を発表。性別・国籍・年齢・業界の壁を超えた表現活動をしている。ちなみにゴリラの由来はノリ。
あっこゴリラ/INFORMATION
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ミックステープ『人間合格』を発売し、リリース記念のワンマンライブを成功させたのも束の間、エレクトロデュオの80キッズとノブアキタナカとの共作『DARADARA』を発表と、今夏も精力的に活動中。現在はいよいよ新たなフルアルバムの制作に注力中とのことで、そちらも続報に期待! 悪ふざけとグッドセンスが同居するオリジナルグッズや名品・珍品を扱う自身のウェブストア、「EVERGREEN(エバーグリーン)」も要チェック。
PROFILE/根本宗子
ねもと・しゅうこ●1989年生まれ、東京都出身。19歳で劇団、月刊「根本宗子」を旗揚げ。以降劇団公演全ての作・演出を手がける他に、様々なプロデュース公演の作・演出も担当。近年では清竜人、チャラン・ポ・ランタン、GANG PARADEなど様々なアーティストとタッグを組み、完全オリジナルの音楽劇を積極的に生み出している。常に演劇での新しい仕掛けを考える予測不能な劇作家。本項でも触れている自身が作・演出を務め、あっこゴリラが出演する舞台『Cape jasmine』が10月6日、7日の2日間、日本青年館ホールでの公演を控えている。
根本宗子公式インスタグラム
Photography_SATOSHI OMURA Hair & Make-up_KONATSU(根本宗子) Text_RUI KONNO
※この記事は2021年smart10月号に掲載した記事を再編集したもので、記載した情報もその時点のものです。
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