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人気プロレスラー川田利明がラーメン屋を始めてみたらプロレス以上に過酷すぎた話川田利明『プロレスラー、ラーメン屋経営で地獄を見る(宝島SUGOI文庫)』

執筆者: smart編集部

絶対に真似をしてはいけない“俺流”物件選びで優先したものは?

 俺の店「麺ジャラスK」は世田谷区喜多見(きたみ)の世田谷通り沿いにある。

 電車だと小田急線の成城学園前駅が最寄り駅になるが、そこから歩いてくるには、ちょっと距離がある。目の前の道路にはバスも走っているけど、公共交通機関を利用した場合、かなり足を運びにくい場所、ということになる。タクシーはつかまるけど、このご時世にタクシーを使う人がいない。

 わかりやすく言えば、よっぽど近くに住んでいる人以外、雨が降っていたら、ちょっと足が遠のいてしまうという立地だ。雨が降っていなくても、朝の天気予報で「今日は傘の出番がありそうです」と言われたら、それだけで客足に影響が出てしまう。

 この場所を選んだのは俺だ。

 いろんな人から「なんで、そんなところにしたの?」と言われた。「川田さん、その家賃だったら、ちょっと狭くはなるけど、駅前の好立地にお店を借りることができるし、そっちのほうがビジネスを展開しやすいよ」とも。たしかに最寄りの駅から徒歩10~12分では、どう考えても好立地とはいえないだろう。

 正直、家賃だけは高い上に駐車場も4台分借りている。

 場所はよくないけれど、店が広いから、どうしても高くなってしまう。わざわざ高い金を払って、アクセスが悪いところを借りるなんて、普通に考えたら「本当に儲ける気があるの?」と疑われても仕方がない。

 事実、この周辺は商売に向いていないことは俺がいちばんよくわかっている。

 なぜならば、もともと全日本プロレスの合宿所がこの近くにあったし、その後も俺はこの街に住み続けてきたから。なんだかんだでもう
40年ぐらい住んでいるのかな?

それこそ誰もが知っている有名な外食チェーン店が進出してきては、あっさりと撤退していく様子も何度となく目撃しているし、セブンイレブンや「すき家」、そして「バイク王」まで潰れてしまう立地。とにかく飲食店の経営には向かないことは間違いない。

 もっと言えば、俺が借りた物件も、もう数え切れないほど店が入れ替わっている。何度か食事をしに来たこともあるけれど「あれっ、また違う店が入ったんだ」「今度、行ってみよう」なんて思っていたら、あっという間に潰れてしまった……というケースもしょっちゅうあった。ちゃんと調べたわけではないけど、おそらくここで2年以上、続いた店はないんじゃないかな?

 覚えているだけでも、フランチャイズのラーメン店が入ったと思ったら、その本体が違う店を出したり、もつ鍋とラーメンという業態になったり、うどん屋が入ったと思ったら、1カ月も経たずに潰れてしまったり。もうね、確実に商売には向いていない立地だというのは、誰の目にも明らかだった。

 俺もここには何度か食事には来たことがある。といっても、積極的に足を運んだわけではない。近所のお店が深夜0時で閉まってしまうけど、ここは深夜2時まで開いていた。それだけの理由だ。みんなでわいわいやっていて、二軒目に行こう、となった時に、夜中だと、もうここしか選択肢がなかった。

 ぶっちゃけた話、俺もここで10年も続けていくことになるとは思ってもいなかった。詳しいことはあとで書くけれども、最初の1、2年はここで勉強をさせてもらって、「利益が出たら、いずれは違う場所に移転しよう」というのが起業する時、俺の頭の中にあった青写真だった。

 それが大前提としてまずあって、自分で店を持つ以上は仕込みから片付けまで、すべて自分でやりたい、という希望があった。だから自宅から通いやすい、この場所をオープンの地として選んだわけだ。

 正直、別の候補物件もあった。

 そこはアクセスもいいし、商売することだけを考えたら、絶対にそっちを選ぶべきだったんだろうけど、通うにはちょっと距離があった。

 すべて自分でやるとなった時、家から離れたところに毎日、通うのはあまり現実的ではないな、と思ったし、慣れてきたらもっといい場所に移転すればいいんだから、という理由で入った店が続々と潰れていく「不毛の地」を俺は選んだ。まさに誤った立地探しは「してはいけない」ことの典型例だね。

 ちなみに、「麺ジャラスK」のひとつ前に入っていた店がラーメン屋だった。俺も食べに来たことがあったし、ラーメン屋を居抜きで借りることができるんだったら、俺もラーメン屋をやろう、ということになった。すべての読みが甘すぎたことなんて、その時点ではまったく自覚していなかったことをのちに痛感することになる。

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