「私の人生、朝ドラ向きだと思いません?」松本梨香の“面白がる”波乱万丈の人生に迫る自身の半生を語るエッセイ『ラフ&ピース』を上梓
執筆者: 編集者・ライター/志田英邦
松本梨香流オーディション術
――『ラフ&ピース』では松本さんが初めて声優のお仕事に挑まれたときのことが語られています。松本さんはアニメに初めて参加した『おそ松くん』(1988年版)も、アニメ『ポケットモンスター』も、オーディションで役を得ているんですね。しかも、オーディションでも松本さんはかなり自由に挑まれている……。
松本 そうですね。これは『ラフ&ピース』に入れそびれちゃったエピソードなんですけど、私が初めてアニメのオーディションを受けたときね、マイクの裏側に立って演じちゃったんですよ。
――どういうことですか?
松本 アフレコのスタジオには映像が映るモニターがあって、それを観ながらマイクに声を吹き込んでいくんです。監督とか、音響のスタッフは声優さんの背中側にある音響ブースにいて、そこから指示を出すんです。でも、私はそんなこと知らなかったから、舞台でお客さんに向かって演じるように、監督や音響のスタッフに向かってお芝居をしたわけ。だって、お客さんにお尻を向けてお芝居をしたらダメじゃないですか。そうやってオーディションを進めていたら、みんなが「逆、逆!」って教えてくれて。それが面白かったと言われて……『おそ松くん』のオーディションで受かったんです。
――もちろんお芝居の確かさもあるんでしょうけど、面白さも含めて、審査をされた方々の印象に残ったんでしょうね。
松本 オーディションってね、役者さんが何十人と受けるわけです。そうするとね、審査をしている人たちもめちゃめちゃ疲れているんですよ。そういう人たちをどれだけ元気にできるか、どれだけ笑わせられるかっていうのも大事だと思うんです。
――審査員が元気になるオーディション!? まさにオーディションは松本さん劇場といった感じですね。
松本 いやいや、演技はちゃんとやりますよ、まず「どうもー」と挨拶したときから、明るく元気にギャグをはさみつつ演じるという感じなんですよ。
――アニメ『ポケットモンスター』のオーディションのときはダジャレをおっしゃったとか……。
松本 そうですね、たしかに『ポケットモンスター』のオーディションのときは、そんなこともやりました。でも、もちろんそうやったから合格するというわけでもなくて、オーディション会場を盛り上げに盛り上げたけど結局、受からなかったじゃん! ということもありますよ。面白いことをやれば大成功かと言われれば、そんなこともないです。ただ、インパクトは残るんですよ。そのオーディションをやった役で落ちたとしても、別の役で呼ばれることがあるんです。審査をやったプロデューサーさんが、ゲストの役者を決めるときに「そういえば、この役は梨香に頼もうか」と思ってくれれば、それで現場に参加することができるんです。そういうところが良かったんだと思います。
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ゲームを作ったり、小説を書いたり、本を作るお手伝いなどいろいろ。日々さまざまな制作現場にお邪魔して面白いことを探しております。美味しいカレーと極上のうどんを探し求めつつ。
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